「はがすとさむい」

サランラップのすきまから
かたちになれなかった、ものたちが
ぽつりぽつり水滴めいてこぼれてゆく春

あたまはからからにかわいて
はだかだとか、あなただとか、忘れてしまうよ
この世界は薄皮いちまいで 有意も無為も はがすとさむい

冷蔵庫のなかカタカタ鳴るカタカナはひとりでひえてゆく
いまならひらがなになれたかな 当たり前のきょうがいとしい

イトを引いた希望も絶望もぜんぶ
裏返しただけの恋や愛だと、その間の、ことばになれないよろこびをうたおうぜ

話半分の口裏あわせ
あしたには、あしたの顔がある
とくにどうということもないいまを抱きしめる
抱きしめるだけの、ちからがほしい



  

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