見出し画像

「ポエトリー・ナイトフライト」第2回

 「ハ、ハ、ヒ、ヒ…フロム京都、トゥ・エブリウェア、ポエトリー・ナイトフライト、ようこそ、ごきげんよう、調子どう?」(ILL BOSSTINO調で詠んでみませう)といういつもの、いえ、自分で勝手にいつものにしたがっているだけですが理性は感情に従っているわけでそんな第2回。今回もオープンマイクの感想を書きます。

 そのまえに、今回のスラムは1位:素潜り旬、2位:満島せしん(フロム岡山!)、3位:谷竜一、4位:鈴木陽一レモン(フロム名古屋!)、5位:しき、でした。


【オープンマイク】

1.鈴木陽一レモン→まさかまさかの5分間推しアイドルトーク。「地上アイドルと地下アイドル」までは普通だけどそこから「地底アイドル」という概念が出てくるとはおもわなんだ。ぼくの基準では詩ではないけどめちゃくちゃキレッキレの話芸だったのでなんにもいうことない。でも、ゲストクラスのひとがふらっとエントリーしてくれて「よっしゃあえての口開け!」と1番手にしたのにアイドルトークをされたおれの純情を返せ……。それがレモンくんなんだけどね。I LOVE YOUどすえ~。

2.素潜り旬→ダダイストでアナキストでジョン・トラボルタ(しかも「パルプ・フィクション」の)という謎の設定、厳密にはマクラと詩の本文の相乗効果が最高にキレていた。なんなんだろう、彼を知って4、5年になるけど、普通によくなりつづけている。これってすこしふしぎなことで、たとえば野球選手ならトレーニングすれば仮に試合で結果が出ずとも筋肉やもろもろの数値は上がるけど、詩人にそういうのはあんまなくって。天才か、最初から自分の上限にタッチしちゃったか、自分の分際をそれなりに見積もって低く生きているか、の3パターンがおおよそ9割以上だとおもう。素潜りには天井もないが底が知れない。まだ27歳。もう一発、誰もが口ずさめる代表作ができれば、本物だ。

3.FJひねくれもん→前回もおもったけどやっぱりオケがいい。これは「オケがいいから」という意味ではなく、いいオケをチョイスできるセンスを持ってるってこと。ラップスタイルに関しては27歳にしてはややオールドスクールなお手本通りのケツでちゃんと4文字(以上)踏むかんじだけど、どこかで頭韻とか奇数韻連打で崩してあげると拡がりが生まれるとおもう。あと、たぶん癖なんだろうけどイーブンを意識しすぎててリズム感がちょっと固くなりすぎてる気もしたので、今度はたとえば三拍子や6/8、あるいは変則ビートで聴いてみたいな。

4.はったみさと→実は関西イントネーションさえなければ、そのまま2000年台前半の東京のポエトリー・リーディング・シーンのいい意味でのオーセンティックなんだよなあ。こういう、こつこつ積み上げていくタイプの詩は(特に朗読では)爆発力に欠けるぶん直接の評価に結びつきづらくてしんどい面もあるとおもうけど、個人的にはひとつの道標としてぜひつづけていただきたい。あと、純粋にテキストがいいです。練度はこれからにしても、パーソナルな強度がある。それはとてもすてきなこと。すばらしいこと。

5.子規まきし→「ファッキューオープンマイク!」「今後、お金を払って承認欲求を満たすような場には出ません。なので今後はライブハウスに出ます」(大意)。後追いでTwitterを見たら「事件起こす」って言ってたけどそれかあ。……事件か?質問タイムがあったので「ライブハウスもノルマを払って出るでしょ?それはちがうの?」と訊いたら「それはブッキングの人が選んでるから違う」(大意)ということで、ブッキングマネージャーを8年やっていた詩人はうーむ…とおもった。ただ、彼、すごくあぶなっかしいけどにやにやできるキャラクタなんですよ。だからまたしれっと前言撤回して来てほしい。「フォローされたらフォローし返すことが恐ろしく重要なんだよ。フォロワーは単なる支持者だが、相互フォロワーは仲間なんだから。少なくとも、おれたちにとってはそうなんだよ」とあったので、フォロー返しました。Hey,dudeよろしくね。

6.文坂ノエ→十数年ぶりに着たというリクルートスーツで登場。それをまじえた物語があっていいステージだった。彼女には「華」ではないけどそれに近い雰囲気がある。すごく短絡的に言ってしまうと関西では田村飛鳥直系。天然素材じゃなくって、きっと10代から自分と血まみれの格闘しながらつくりあげてきた「自分」というものがちゃんと機能してる。でも、だからこそ、それを読み取られるならもう一段階高い場所で、ともおもう(抽象的な表現で申し訳ない)。

7.満島せしん→短歌朗読。わりと自由律短歌というか、いわゆる現代短歌っぽいので詠み方はいろいろ考えようがあるかな、と。つまり切ったり畳みかけたりとかが容易なぶん、歌(31文字!)本来のうまみの落としどころをどこにつくるのか。5分だと数十編詠むことになるので、そこに自分なりの脈絡をつくれるとしゅっとよくなるだろうなとおもいました。でもスラムは2位やったし、たしかに響いてるものはあるんだろう。

8.線描→倍音とか発声が志人くんっぽくて、それでリリックも志人くんぽい。ほんとは、こういう「~ぽい」って、どちらかというと上げてるわけじゃないよね……という人間ですが、非常にポジティブな意味で「うわあそういうことするんだ!」っておもった。かっこよかった。一編しか聴いていないので軽々に評価するわけにはいかないけど、おもしろい素材を見つけた気持ち。あとは滑舌。噛んだときのリカバー、誤魔化し方、そういうのも大事だけど、基本、もうちょっと訓練してくると元来持っているちからが出せるのではないかしら。


 以上、オープンマイクひとこと…ひとことではない感想でした。いろいろ書いたけど、ぼくは殴りにいけるアイドルなので反論反駁SAY YESだ(これは先月も書いた)。

 まだ2回だけれど、確実に「ポエトリー・ナイトフライト」の意義というものがすでに見いだせている。それはよくもわるくも「chori」という看板もふくめてのもので、だから、ぼくは「はーいみんなてきとうにきてねー!のもうねー!たのしもうねー!」っていうイベントにはしない。素人のど自慢じゃねえんだ。でも、誠実なきもちがあれば、初ステージだって、どんな拙い詩だって、どんな噛み噛みの朗読だって、ちゃんと届くよ。それは確言できる。だって、ここは、choriのイベントだ。たぶん日本でも有数の「にがくて甘い」的な?ゆるくて厳しい場だから、ぼくが生きてるかぎり、絶対に継続する覚悟を決めた。

 何十年後かのわたしたちへ。このブログ読んでくすって笑っておくれな。それでは、ごきげんよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?