夢は主張する

 10年以上前、仕事もプライベートもうまくいかない時期があった。
不安や悲しみという暗い感情で、気持ちがいっぱいで、それでも日常を保たなくてはならず、しんどいながらも、どうにかこなしていた。
不眠症はどんどんひどくなっていた。
眠いのに眠れず、明け方にやっと少しだけ眠れるような。本来、わたしは長い睡眠時間が必要なタイプなので、とてもつらかった。

 そんな時、「思い出した!」という感覚と共に、映像が脳の中で見える現象が起き出した。
はじめは何が起きたのかわからなかった。
目でみえているのではなく、心の中で見える…というか、脳内にスクリーンがあって、そこに映像が映し出され、わたしはそれを見せられている。こう言ったほうが、しっくりくる。

見せられている、と書いた理由は、その映像はわたしの状況などお構いなく、勝手に映し出されるからだ。

映像がはじまると、とても大変だった。

目から見える情報も処理しながら、脳内の映像も見なくてはいけないから、ひとりで忙しい思いをしていた。


なぜ、そんなものが急に見え出したのか、と考えもした。

ストレスと睡眠不足で、限界がそろそろ来ているのかなぁとか。

不眠が続くと、脳が休むヒマがなくなる。

しかたなく、機能を維持するために、部分的に脳を眠らせているような現象が起きているのか。

その眠った部分の脳が夢を見ているのだろうか。

だから、こんなことになってしまったのかなぁと。


ついに心療内科にも行って相談をしたら、医師は、

「その映像はPTSD の方と非常によく似た見え方をしていると思う。だから見えているものは、過去にあった現実の出来事だと思う。でもそうではないと言うなら、少し様子を見てみてはどうでしょう。

あなたはとりあえず眠れていないから、まずはよく眠ることから始めてみましょう。眠れるようになれば、何か変わっていくかもしれません。」

そう言われて、軽い睡眠薬をいただいた。

眠れるようになって、肉体的に楽になった。

でも、映像は止まらなかった。

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