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教育実習生のSuicaの話

4年前の教育実習の時、担当したクラスの中学3年生にはクラスの朝礼の後、5分ほど何か生徒たちと話す時間がありました。

あまり生徒と深く関わるタイプの人間ではなかったので、毎日みんなの前で何か話をするというのは難しいもんだなぁとか、当時思ってました。

昨日なにしてた?とか、あのテレビ見た?とかの話でももちろんいいのですが、やはり美術を担当してて、デザインを学んでいたことから、日常にあるデザインのことを話したことを覚えてます。

僕が尊敬するデザイナー、山中俊治さんのSuicaの改札機について話したことがありました。

当時はまだ改札機のなかに切符を入れる、または駅長さんに渡して切符を切ってもらうのが主流だったんだよ、と。

読み取る機械に手を添えて「ピッ」と当てる「間」や、そこにカードをかざす、ということ自体がまだ浸透していない時代だったから、様々な実験をして、改札機のデザインをしたんだよ、ということを生徒たちに話しました。

うまく話せたかもわからずチャイムが鳴って生徒たちはセコセコと授業の用意をして、ちゃんと伝わったかなとか思いながらいましたが、その話をした終礼に日直さんが僕に学級日誌を渡してくれました。

その日の日直さんは、朝の話が面白かったです、改札機の角度は13.5度!、と書いてくれていて、なんかそれが今でもとても嬉しかったことを覚えています。

日々みんなが使っている全ての道具には必ずデザインしてる人がいる!使いやすいってなんだろう!とか、そんな熱い話する空気でもないし、まあ生徒たちも帰る頃には忘れてるだろうと思っていたのですが、ちゃんと話を聞いてくれていて、日誌のコメントまでちゃんのしてくれてたのは、なんか感慨深いものがあったことを覚えています。

生徒たちが暮らしの中にある道具を新しい視点で見つめて、そういやあんなこと言ってた教育実習生がいたなとか思いながら、ピッと改札機を通ってくれてたらうれしいなとか、今でも思います。

今日はそんな思い出したうれしかった話。


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