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川上の事業はなぜ難しいのか。陶器産業の衰退の順番から見る日本の製造業の問題点


川上は金額が少ない

1000円で売られているものがあるとしましょう。
①お客様から支払があれば売上1000円です
あなたの仕入価格は700円
②卸業者の仕入価格は490円
③梱包業者は仕入価格は343円
④窯元の仕入価格は240円
一番川上の
⑤陶器の素地メーカーは240円の売り上げです
粗利30%で見ると5階層で売上の24%まで販売価格が下がります。
実際のビジネスでは粗利率はもっと低いですが
逆に階層が7-10階層あります
つまり1社ずつは少ない粗利で動いているのが現状です
陶器ビジネスの難しさが分かると思います。

日本の陶器素地メーカーが激減中

陶器メーカーは構造的な問題を抱えていて
激減しています
直近コストプッシュもありますが
一番の問題は川上の素地メーカーが
利益を取れていない事です
私の半径1km以内で今年は3件廃業しています
地場産業である四日市萬古焼の組合メンバーは
たった52社しかないにも関わらずです

なぜ小さいメーカーが継続できないのか

弊社は過去にM&Aで急須メーカーの事業を引き継いでいます
その時の話が印象的なので話します
その方は80歳で月収30万円ありました
+年金と考えるとまあまあ良い収入だと思います
しかし、廃業をするので引き継ぐ事になりました
なんでやめるのかと聞くと
私は月収30万円だが
孫が入ったら
孫と私はは15万円ずつだ
と言われました
後継者というのは適切な人材どうこうの前に
構造的に後継者が入れる余剰を整えないといけないいい例です
弊社が引き継げた理由は
土鍋という別事業が主力で副収入の事業に位置付けたからです

後継者問題を解決する必須条件

スケールです
これは必須です
ある程度、売上のパイが大きくないと
そもそも引き継ぐ事が不可能になります。
こうなると冒頭の川上事業が難しい理由が分かってきます
売上のパイが構造的に小さいので
川上事業が廃業し易いのです
陶器の事業全体を見ると
いまは素地メーカーが緩やかに廃業をしていっています
次は私の関わる窯元に連鎖するでしょう
そして産地問屋
卸問屋
小売り
と日本製陶器が消えていきます

解決策

悲しい話ばっかりでは
鬱になるので
私が取り組んでいる活動をご紹介します
ずばり内製化です
個別の事業を集約していくのです
実際、内山製陶所では
土鍋
急須
カメ
耐熱プレート
などなど
商品点数がここ5年で急増しています
粘土の調合から納品まで自社完結するシステムを整えました
この時に重要なのは職人を個人事業主に見立てる事です
人件費から個人事業主として成り立つかどうか考えます
大体、出だしは成り立っていないので
このタイミングで設備投資をいれます
内製化の最大のメリットは
共通する工程を効率化できる事です
弊社で特に効率化できるのは窯です
土鍋も急須も全ての商品を全て一緒の窯で焼きます
すると作業時間やガス代のコストカットに寄与します
簡単に言っていますが
ここはかなりノウハウが入っています
冒頭の階層の話でいうと
弊社は②-⑤の部分まで対応しています
すると240円の売り上げが
700円に化けて
売上の金額自体を引き上げられます。
これでスケールを実現しています

製造業の構造改革は急務の取り組み

痛みは伴いますが
構造的な問題に居座ると
どんどん削られていきます
私も常にこの切迫感を感じます
この業界をよく斜陽産業と揶揄する人を見かけますが
それは偏見です
過去の陶器業界を牽引した人達は
戦時中であっても
日本を支えるほどの大きい産業として
発展させて今があります
陶器業界は粗利が取りやすく
構造的に分かりやすい産業です
問題点へのアプローチを急げば
再興できると思っています


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