どうする雷電
雷電は敗退する。
まだ16戦残しているのに、なんてことを言うんだと、皆お怒りじゃろう。しかしさすがに予想、9割の確率で、セミファイナルに進めず雷電は敗退する。
これは縁日の金魚すくいで持ち帰った金魚が、1ヶ月以内に死ぬ確率とほぼ一緒である。さすがにここでマイナス1000ptの新記録達成は、めっちゃ絵的には面白いが、レースとしてはキツイ。キツすぎる。
この冬の雷電の展開はキツかった。
ドラゴンクエストのはぐれメタルと戦っているのかと思うくらい、目の前の手を倒せない、アガれない。
経験値のド高い、レアモンスターとのエンカウントに、子供たちが喜ぶように。雷電ファンも、選手にド高いチャンス手が入るたび、湧きに湧きまくった。大事に手を育て、十分なテンパイに持っていく雷電の選手たち。
しかし山に眠るアガリ牌が、サッサッと横に避けていく。そして誰かの安いアガリ、しかも地味なカンチャンや単騎にスッポリ当たって蹴られ、少しも山をめくらないうちにチャンスが逃げ去っていく。はぐれメタルの逃げ足の速さよ。
「なんで雷電ばっかり!」と悔しく思ったかもしれないが。
「ばっかり」が続いたから、このマイナス1000オーバーなのだ。
逆方向にばっかりが続いたら、どくばりが当たりまくったら。
序盤のアリアハンの城を出る前に、勇者がレベル99になっていただろう。時にそんなゲームバランスが崩れそうな珍事が起きるのが、特に赤3枚という派手な打点が飛び交うMリーグの麻雀なのである。
(マイナス1000負けるチームが出たら面白いだろうな、嘘だろ、本当に出やがった、すげえな雷電!)が、4年目のMリーグで起きた珍事である。
・ 残り16戦の戦い方
高柳ことナギー監督が声明を出したように、まずは毎回トップを狙うことである。
正直、雷電ファンはもう覚悟はできている。
みんなが試合を観戦しつつ、いつも思ってることは(黒沢さんヘコんでないかなあ…)(瀬戸熊さん自宅に帰れるのかなあ…)(本田のフォロワー数伸びねえなあ…)(ハギー来年チームにいるのかなあ…)という選手のメンタルや将来への心配である。
ファンは毎晩、そんなモヤモヤを胸に抱いたまま、お布団に入りたくない。
やはりムードーメーカーの黒沢プロは、そんなファンの気持ちをよくわかっており。気持ちのヘコむまま、強く反省してる姿を見せるよりも。ファンのためにも元気な姿を見せるよう、メンタルしんどい中でも、できるだけツイッターでは明るく振る舞ってくれていた。あの人は自分のことより、ファンなのである。
そういうところは「ラスったらしばらくツイッターを更新しない、どこぞの若い女流」とは違う。その選手がツイッター更新するまで(あれ、大丈夫かな?)のモヤモヤを、ファンにも一緒に継続させてしまう。
更新ストップが3日間なら、ファンも同じく3日間だ。ヘコんでるのはわかるが、プロなのである。それが許されるのは、思春期の女子中学生までだ。
うちのムスメも、お母ちゃんと喧嘩してブータレるたび。なぜか、無関係なわしのことまでついでに無視しやがる。それが女子中学生。
「えー、お父ちゃん、何かしたあ?」とか聞くとなおさらブータれるので逆効果、ご法度である。たまにスキをついて、トムとジェリーの真似をすると吹き出すが、その笑った瞬間を見られた恥ずかしさでなおブータレが強くなる。ご機嫌が戻るのを待つしかない。たいがい3時間でご機嫌なおり、さっきまでのブータレを忘れたように、オススメのyoutube動画とかを見せてくる。
ムスメ好きとしては、その3時間でもしんどい!
麻雀プロの仕事は、ファンに麻雀で「良い時間をプレゼント」することだ。
選手が負けるたび、どうしてもファンは味わってしまう「寂しい時間」「モヤモヤした時間」はなるべく1分でも短く、そして軽い方がいい。
競技麻雀プロの大勢に足りないのは、その感覚であろう。
何で飯を食べていて、誰がいてくれるからこそ、プロを名乗れるのか。
それに関しては、黒沢プロは負けていても、100点のファン対応だったと思う。
雷電はこれからどうするべきか。
もうここに答えが出ている。
笑うのじゃ。
明るい元気なムードを、頑張って最後まで作り続けるのじゃ。
チームが大きく負けてくると、明るいファン対応や、笑顔を見せることも、気分的に難しくなる。そりゃそうだ、にんげんだもの。
さらに、ここぞと狙ってアンチ雷電勢力が
「こんな時によく笑えるな!」
みたいな意地悪な煽りを飛ばしてくるのも、簡単に予想はつく。
でもそんなの関係なく、笑顔を堂々と作れる場所がある。
トップインタビューだ。
勝利して立つ、まつかよの前に立つ。
あそこは誰もが笑顔になれる場所だ。
まつかよの前に立てば、たいがいの人間がなぜか笑ってしまう。
ここで大事なのは。2点。
・ラスった時は、できるだけインタビュー拒否!
ラスインタビューで得られるものなんて、ファンには何もない。楽しめるのは(負けたやつの表情見たいなあ、ヘッヘッヘ!)…という、一部の金を落とさないMリーガーアンチだけである。そいつらだけ喜ばせてどうする。
マイナス1000ポイントから先は、悔しさが漂わせる敗者の美しさとかはない。番組側も、ここから先はそこを狙うな。
「他のチームはラスった時でもインタビュー受けるのに、雷電だけずるいぞ!」と、不満を感じる選手や、他チームファンも出るかもしれないが。
うるせえ馬鹿野郎!
おまえらにポイントいっぱいあげたじゃろ!
許せ!こちとらマイナス1000ポイントだ!
来年、君たちの応援チームが大きく負けた時、肩を抱いてよりそってあげられる友人は、雷電ファンだからな。覚えとけ!
そして…
・2着インタビューの時は笑顔!
トップじゃないとキツイ状況はみんな知ってる。
しかしそこで「2着じゃダメなんですけど…」と、負けた人のような、申し訳ないような表情は「一瞬だけ見せてもいいけど、なるべく短く、あとは笑顔」で頼みたい。
なにせポイントが増えたのである。
どこかのチームをかわりに、ラスや3着に下げたのである。
やるだけやってプチ前進したのじゃ。笑っていい。
そしてハギーばりに「次こそ絶対トップ獲ります!」
と元気にカメラを指をさす。
向こう側にはファンがいる。
もちろん、この時の正しいファンの反応は「一緒に笑う」である。
ただ、ここで注意がある。
「雷電なめんなよっ!!」
は、やめたほうがいい。
誰もなめてない。
すでに全員が哀れんでいる。
とにかく「残されたシーズン、明るい楽しい時間をファンにどれだけ与えられるか。そのためにまず勝とう。勝ったほうがその空気をより作りやすい!」という目標を元に、雷電選手は頑張って欲しいし、ファンはその手助けをできる空気づくりを頑張って、今期を楽しく乗り切っていこう。
おそらく他のチームのファンはできないが、雷電ファンだけは、できる。
パイレーツファンなんて同じくらい負けたら、石橋を叩いて結局渡らない。文句をぶつけるだけだ。
しかし、たぶん雷電ファンは大人として優秀だ。
みんな良いお父ちゃんお母ちゃんになれると思ってる。
そしてこれだけは言いたい。
9割敗退するだろう…の、絶望的な状況で。
少ないまさかの1割を引いてこれる、不思議な期待を持てるチームは
雷電とコナミだけである。
・ 来年どうしよう?
さあ、このまま9割を引いて、雷電が大惨敗した時。
さすがに雷電ファンの間にも
「どうする? このままじゃ来年もきっと勝てそうもないぞ?」
という不安が出てきてしまう。
ここで真っ先に思いつくのが「選手を入れ替える」
もとい
「ハギーをクビにする」である。
しかしそれはできないのである。
なぜなら雷電のテーマは
「萩原、瀬戸熊、黒沢」
という、この3人。
現在の「大きな夢より、目の前の手堅い損得を追う」という現代っ子らしい主流スタイルから外れてもなお、何かの結果を残し続けて、今日まで最前線にいるモンスター3匹。
その3人がどこまで戦えるか?…というのが物語の柱であるからだ。
そこに「現代っ子だけど、昭和が香る田舎者」を追加したのが、今の雷電である。
メンバー変更は許されない。
その考えは忘れろ。
もしそうしたいなら、他のチームのファンになったほうが楽しい。
や、マジで。
さて、こういう話をすると
「Mリーグってのは最高峰のプロがぶつかり合う大会じゃねえのかよ! 負けた選手は消えるべきだろ!」という声も出てくる。
ただこのセリフを吐くやつは、ほぼ96%、Mリーグファンじゃない。
たいがい過去ログを見ると、Mリーグの悪口ばかりである。
「オリンピック目指すんじゃねえのかよ!」「クリーン化はどうした!」「そんなんじゃメジャー化できねえぞ!」などとMリーグの理想を語りながら、今まで一切応援しておらず、文句をつけるためにわざわざそういう言葉をピックアップしてるだけである。
無視していい。
いいか。
Mリーグは、武道で言えば。
「最強の剣士たちがぶつかりあう大会」である。
しかしここで勘違いされがちなのは。
みんなが同じ武器を使って。
例えば「みんなが竹刀を使って戦って、技量を競い合う剣道」
…では、ないのである。
宮本武蔵の時代の、使用武器はなんでもアリ。
命と人生とプライドをかけた真剣勝負
異種剣技戦である。
たとえば
アベマズの使っている武器は「日本刀」
一番オーソドックスだけど、バランスが取れている王道の武器。
癖がない分、さすがに攻守が安定していて、とても強い。
受けも鋼のように固くて強く、その一撃の殺傷力も深くて高い。
サクラナイツの使っている武器は「洋刀」
フェンシングのレイピアだ。内川プロのように美しいフォーム、堀プロのように急所を狙って刺し、岡田プロのように力強い直線的な軌道を見せるかと思えば、沢崎さんのような変則的な軌道も。
コナミの使っている武器は「ハンマー」
破壊力抜群。余計なことをせず、まっすぐ頭上に重い一撃を振り下ろす。相手の鎧や武器まで一緒にぶち壊してしまう。一度スキを見せて先に振り下ろされてしまうと、もうガードしても無事ではすまない。ヒサトさんはシティーハンターの香が使う大きさのハンマーを軽々と使いこなす。
パイレーツの使っている武器は「槍」
そのリーチの長さと、最短で届く直線的な軌道。スピードの麻雀。
敵が近寄る前に倒す。集まった槍の名手たちは、自身の身体にフィットした槍を選んで上手に使っている。瑞原さんは重く、コバゴーは長く、アサピンは家宝の槍を大事に、バッシーは槍先を無駄に改造している。
ドリブンズの使っている武器は「弓」
遠くからでも攻撃可能、しかし鍛え抜いた高度な技術がないと使いこなせない。名の轟く弓の名手たちが集まり、つねに自分に有利な間合いで戦い、そして相手の急所をその鋭い目で射抜く。殺傷力も高く、最強の武器の一つ。たまにズルいと言われるが、ここは戦国。
セガサミーが使っている武器は「薙刀」
槍のように直線的に見えて、その軌道は自由。攻撃方法も、日本刀のように斬り込んだり、槍のように刺したり、柄で払ったり。自分の間合いと自分のセンスで、自由自在な戦い方ができる、特に天才肌の女性剣士にもってこいの麻雀である。
風林火山の使っている武器は「鎖鎌」
使いこなすのが難しい武器だが、一度極めれば、魅力的かつ最強の剣豪が生まれてしまう。勝又プロのように攻守スキのないフォームを作って相手を眺め、亜樹プロのように鎖をまわし間合いを計り、瑠美プロのような他に見ない軌道で襲い、間合いの入った時の鎌の殺傷力は松ヶ瀬プロのように強い。
みんな、そんな別々のスタイルの武器を、これが自分に一番あった武器だと信じて、時間をかけて鍛えまくった。
そんなそれぞれが、異種格闘技戦のように集まっているのがMリーグなのである。
天鳳民は「理屈で考えたら槍が最強だろ!戦国時代も結局は、槍か弓が強かったじゃん!」と大声で叫ぶが。
「武器の強さを競ってるわけじゃない」
槍が一番だろと、無難に選んで学んだだけの未熟な天鳳民では。得意な武器を、戦場で長い年月、鍛え続けた麻雀プロにはかなわないのである。
即、殺される。
じゃあ誰が武器の使い方が上手くて強いのか?…がわからないから、成り立っている大会であり。面白いわけであり。
そしてファンの好みも、それぞれのチームへと別れていくのである。
そこで、雷電が使っている武器は何かといえば?
そう。
これだ。
もう、見ておわかりだろう。
漫画「ベルセルク」でいうところの
それは 剣と言うには あまりにも大きすぎた
大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
それは 正に 鉄塊だった
そうなのじゃ。
雷電の使ってる武器は「鉄塊」なのである。
これは普通、使えない。
誰も選ばない。
なのに、なぜか使いこなせて、今まで多くのビッグタイトルを獲り
最強戦で優勝してしまう瀬戸熊さんや
鳳凰位決定戦に進んでしまう黒沢さん
これを使いこなすぞ!と、30年以上まだあきらめないハギー
という、わしら凡人では意味のわからない剣士3人が集まったのが、雷電なのである。
面白すぎる…!!
もう、おまえら。
あきらめろ。
惚れてしもうたんや。
この3人に。
一生ついていけ。
ただハギーだけは、ちょっと武器を改良する必要があるかもしれない。
「今度はこんな改良を武器にしてみたぜ! そのためにこんな修行をした!」を、これでもかとオフシーズンに強く発信していく必要は、かなりあると思ってる。
わしらはハギーを来年も見たい。
しかし見たいのは、同じでっかい剣を、同じように重そうに引きずってくるハギーではない。
いつでも新しい夢を見させてくれるハギーだ。
黒沢プロはたぶん、そのままでいい。
今期は、育児がより大変になってくる時期なのはもちろん、鳳凰位決定戦などのビッグイベントが続き、さすがの黒沢プロも大剣を自在に振るにはカロリーを使いすぎたところはあったかもしれない。そういうタイミングの年もある。今年たまたま、そうだったというだけだ。
瀬戸熊プロは50歳の大台に入った。
男は40で激しく老化が始まるので、50となればもっとなのだが、それでもまだ若々しい。でもさすがにご本人もいろいろ考えるところがあるのか、若い選手の麻雀もよく観戦してるのだという。まだまだ老後まで、長く最前線で戦えるためにも模索の時期なのだと思う。
かつて「浜野太陽の麻雀へのアドバイスは?」という質問に「麻雀が小さい」と即答し、アドバイスを始めた瀬戸熊プロ。
(まず浜野太陽って誰だ?)…という疑問がわしらには湧いてくるが。瀬戸熊プロは、無名の若手をよく知っているどころか。その麻雀の欠点を即答できるくらい、いっぱい見ているような人だ。連盟でかなり偉いポジションだと思うが、全然そこにあぐらをかいて楽をしていない。
きっと何かを見つけて、来年も挑んで来てくれるんだと思うと、来年も楽しみである。
すごく強くなってるか、すごく弱くなってるか、どっちかだと思う。
それでも進んでる。
わしらは、こういう先輩を見ていきたい。
そして本田プロ。
一番気をつけていただきたいのが
「一番クビにされる可能性があるのは、キミだ」
ということだ。
まだ残念ながら、3人の先輩のような、長い歴史も、背負った物語も、根強いファンもいない。新人だからだ。
でもおそらく来期は契約、全然心配なく、大丈夫だろう。
そして幸運なことに今「1000ポイント負けた雷電」という、とんでもないドラマチックな物語の柱ができあがった。何もストーリーも持っていない新人に、こんな美味しいフラグを立ててくれた。
ありがたくこのフラグ、回収しよう。
ここを救ってみせたり、来年に鬱憤を晴らすような大勝利を見せた時は。
本田 is 5年目のヒーロー
間違いない。
活躍しなかった時は、ほぼクビ。富山に帰ることになる。
でっかくて、清々しいほど大勝負である。
人生にこんな大勝負ができる麻雀打ちが、何人いるだろうか。
勝てば、フォロワー6万人は固いと思ってる。
さあいこう、あと16戦。
そして来年も!
わしらは来年も、しつこく雷電ユニバースじゃ!
しかしよければ、仲田加南を入れてくれ。
ご機嫌がよろしい時、気分で小銭を投げていただくと嬉しいです。ただあまり気はつかわず、気楽に読んでくださいませませ。読まれるだけで感謝です。