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閉じた世界から広がる視野:見えざる物語の再発見


※このnoteは、Podcast番組「漫画とうごめき」で語っている言論部分を文章化したものです。漫画とうごめき本編は、最下段のリンクからどうぞ。

最近、ある特別な種類の芸術表現に引きつけられている。
それは「閉じた表現」とボクが呼んでいるもので、独特な世界観が鮮明に反映されている表現のことだ。
それは一見すると理解しにくいかもしれない、あるいは少し異質に見えるかもしれない。
例えば、暗闇に浮かぶ、独自の色彩と形状を持つ洞窟の壁画を思い浮かべてみてほしい。それは作者だけが理解する、彼自身の世界を映し出している。

ボク自身、他者とは違う存在でありつつ、その違いを受け入れ、他者と共に生きることを望んでいる。
その違いが美しさと一緒に存在していれば、それは最高の状態だと思う。
ボクがどのように世界を理解し、それをどのように表現するか、それこそがこの「閉じた表現」の魅力だと思う。

閉じた表現を観るとき、その中には異質さと美しさが混在している。
それは観る者にとって、自分の内面を客観的に見る機会を提供する。つまり、自分が何を感じ、何を思うのかを理解する機会を与えてくれる。そして、それは自分がこの社会でどのように生きるべきかを見つける手掛かりになる。

この閉じた表現の魅力を最近強く感じたのは、ある芸術家の作品だ。彼は、自然環境に存在する様々な要素、音や空気、虹や微生物などを芸術に見立てる。彼の作品は、日常的な活動を通じて自然と深く関わることで、それを独自の芸術表現に変換している。

その芸術家が作品を制作したのは、非常に特殊な地域だ。彼は現地の人々の日常生活から出た物や、その地域の自然から得た素材を使って、芸術作品を生み出した。
その結果、作品はその地域の一部となり、見る者それにより、その作品はその地域の一部となり、見る者はその地域とその人々の生活、さらにはその地域の自然を感じることができる。
その土地の特性が集約された一種の記憶媒体とも言えるだろう。見る者にとって、それはその地域の生活を保存した、まさに「生きた」アート作品となる。

彼の芸術作品は、その地域の自然と人々の生活の一部を切り取り、それを鑑賞者に提示することで新たな視点を提供する。その作品を通じて、その地域が持つ独自の物語や情景を感じることができる。それこそが、この種の閉じた表現の持つ魅力の一部だと言える。

この芸術家の活動は、一見すると単なる廃棄物の処理や自然との共存のように見えるかもしれない。
しかし、その行為自体が持つ豊かな意味や可能性を引き出すことで、彼はそれを芸術に昇華させている。その過程で、彼は新たな意味を付与し、異なる視点からその土地を見直すきっかけを作り出す。

彼の作品は、その地域の物語を語る新たな言語を提供する。
その言語は、それまで無視されてきたかもしれない、あるいは忘れられてしまったかもしれない地域の価値を浮き彫りにする。
それにより、その地域の新たな物語が繋ぎ直され、新たな意義が生まれる。

この閉じた表現の魅力を感じることで、私たちは自身の内面と向き合い、自己理解を深めることができる。それはまるで、星空を見上げ、無数の星々を眺めながら、自分自身の存在を再確認するような感覚だ。それこそが、閉じた表現が持つ深い魅力であり、その魅力が私たちを引きつける理由なのだろう。

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