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ステップ・バイ・ステップで取り組む ロボットを活用した「在庫管理」DX化

DX化の恩恵を受けやすい「在庫管理」

物流・流通で避けて通れないのが「在庫管理」である。どの商品がどのくらい売れて現状どのくらい残っているかというのは利益に直結する問題だ。

一方で、このような分野はDX(デジタルトランスフォーメーション)で効率化がしやすいケースが多く、かつ効果が見えやすい分野でもある。今回は在庫管理のDX化(棚卸しなどを含む)について考えていきたい。

多くの人にイメージを掴みやすくしてもらいたいので、一般消費者を対象にしたある程度の規模の店舗での「在庫管理」を想定してみる。

その前に、一体どのくらいの種類の商品が店頭に並べられているのかを見てみたい。

イオングループのまいばすけっと株式会社が運営している都市型小型食品スーパーマーケット「まいばすけっと」を例に挙げると、80坪規模の店舗では3300~3400SKU(SKU:Stock keeping Unit 一般的には商品の種類と考えて問題ない)とインタビューで話している。(出展:ダイヤモンド・チェーンストアオンライン コンビニより強い!首都圏で増殖続ける、まいばすけっとの全貌

小型食品スーパーマーケットでも、3,300を超えるSKUとなっている点を考えると、一般的にスーパーマーケットでは、桁違いになるのはわかるであろう。

ここまでではないにせよ、ある程度の規模の商店になると人が在庫を管理するというは不可能であり、当然「在庫管理システム」などを導入し、POSシステムなどと連動することで、入荷量と実際に販売(レジを通した)際の出荷量を把握し、現状の在庫数を掴むということが重要となっている。

在庫管理システム
NECソリューションイノベーターWebサイトより抜粋


適切にデータをカウントし、データとして信頼性を上げる

しかし、どうしてもシステム上の在庫と店頭及び倉庫にある実在庫との差が出てしまうのは(特に不特定多数の一般消費者が出入りする商店ならば)仕方のないことだ。これを適切に把握し、対応することが収益を上げる鉄則である。

具体的な在庫の確認方法についてだが、一昔前ではプリントアウトした商品リストをベースにカウントし在庫数量を記入、それを改めてシステムで活用するために手入力するという様なケースがあったと聞く。しかし、これでは人為的ミスが発生する要因(カウント間違のみならず、入力する際の入力ミスなど)も大きく、当然ながら相当時間も必要となる。

現在は在庫をカウントする際、多くの場合商品のバーコードをハンディターミナルなどで読み取らせてカウントしていく形が主流となっている。

ハンディターミナルの例
デンソーウェーブ Webサイトより抜粋

商品のバーコードを読み取り、数を入力すれば完了するためITCなどの専門的なのスキルは必要なく、それほど規模の大きくない店舗ならば店舗スタッフが対応することも可能だ。

ハンディターミナルに入力したものは瞬時にデータとなるため、フレッシュな情報として使用することが出来、通信機能があればその場でインターネットを通じて自動的に本部のサーバにデータを転送・登録が出来てしまう。

しかし、この方法であっても商品をスキャンしカウントを行い入力を行うという従来の手間はそれほど削減されていない。

そこで昨今注目されているのがRFIDタグである。

RFIDの活用と現状の問題点

RFIDとは(Radio Frequency Identification)の略でバーコードとは異なり、電波を用いて非接触でタグの情報を読み取りするシステムのこと。これにより一気にタグのデータを読み込みことが出来るため効率化が図れるというのが最大のメリットだ。

RFIDとは
デンソーウェーブ Webサイトより抜粋

昨今はRFIDを活用した場面を見かけることも増えてきており、UNIQLOやGUなどにおいてはこのRFIDを活用したセルフレジを展開していおり、これをお読みの方も実際に利用したり、利用はしないまでも見たことはあるのではないだろうか。

レジへの商品登録操作も至って簡単で、購入したい商品をレジの決められたスペースに置くだけで瞬時に商品情報と数を読み取り精算を行う。

バラ色の様なRFIDだが、実は普及を妨げる大きな問題がある、それはRFIDタグのコストだ。

現在RFIDタグの1枚あたりの金額は(当然ロット数などにもよるが)5円〜10円という金額になっている。以前と比較すると劇的に安価にはなったが、紙のタグと比較すると相当高価であることには間違いない。また、一般的に広く流通している商品には付けられておらず、その場合は店舗などが独自に付ける必要があるため、ここをどうクリアにしていくかがRFIDが一般に広く普及する今後の課題となるだろう。

ロボットを活用した「在庫管理」は一筋縄ではいかなかった

在庫管理・棚卸しを完全自動化を目指して、ロボットを使った商業施設での在庫管理の実証実験はいくつも行われてきた。

2015年12月にはチェックポイントシステムズ社(現:チェックポイントジャパン社)が千葉市のイオンモール幕張新都心で棚卸し業務を行うロボットを試験導入したが、試験導入を中止したと日経Roboticsが報じた。

チェックポイント社のプレスリリース
https://www.atpress.ne.jp/news/85987
日経Robotics 2016年5月10日 掲載記事
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/mag/15/00141/00124

他にもパルコが2017年10月に池袋PARCOで、2018年5月には名古屋PARCOで地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター、日本ユニシス株式会社、08ワークス株式会社と共同で自走ロボットを使った店舗案内と、店内商品の在庫数の集計・棚卸しを行う実証実験を行ったが、その後正式導入に至ったという話は聞こえてこない。

株式会社PARCO プレスリリースより抜粋 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000757.000003639.html

上記以外にも2017年3月にヤマダ電機において日本ユニシスがFellow RobotsのロボットNAViiを利用した店舗の在庫・売価チェックと来店客への商品提案の実証実験を行ったが、こちらも正式導入至ったという発表はされていない。

フロアを自律移動が出来るロボットにRFIDリーダーが付け、在庫管理を行うというアプローチ自体は決して間違っているとは思っていない。最終的に目指す先はロボットが自身が移動し、判断をし、情報を収集するというところだが、当時のロボットではそれには荷が重すぎたのではないだろうか。

本来はステップ・バイ・ステップで最終的に完全自動化を目指すべきであったにも関わらず、一足飛びに最終地点を目指してしまい、結果的にコストなどを含めて満足な結果が得られなかったと思われる。

現状ロボット活用して在庫管理などを行う場合は

・人が遠隔操作を行う

・情報の取得の状況も確認を行う(もしくは確認が出来る状況を作る)

・取得できなかった情報に関しては、人が赴いてデータを補う

ということを考慮してソリューションを構築する必要がある。そして、上記を実現するでも相当な効率化が行えることは間違いない。

但し、「在庫管理のみ」のためにロボットを活用するといならば、少しもったいないかもしれない。

ランニングコストに焦点を当ててみた場合、ロボットを1ヶ月間利用する料金があれば同じ金額で、融通が効き、コミュニケーションが適切に取れ、在庫管理以外の業務も対応出来る人間のパートやアルバイトを雇用する方が(雇用できるかどうかの問題は別にあるとして)間違いなく現状ではコスト的なメリットはある。

逆に「在庫管理」以外にも有効に利用することができるのならば、人間と異なり時間的成約もなく、事前に決められたことを間違いなく遂行するロボットを活用したほうが、アルバイトやパートを新たに雇用する以上のコストパフォーマンスを出すことが出来る。その点を考慮して、ロボットを適切に導入するべきであろう。

遠隔操縦を行うロボットの一つの形『ugo(ユーゴー)』

現状として、ビジネスで利用するべく遠隔操作を行が行えるロボットの選択肢は多くはない。その中でも抜群の拡張性とコストパフォーマンスを誇るのがugo株式会社のロボット『ugo(ユーゴー)』だ。

ugoシリーズ

ugoは優れた拡張性を持ち合わせているロボットだ。大きなポイントはハンド部分に物を保持させることが可能なため、従前から人が利用しているハンディターミナルをugo本体に固定する持たせることも可能となっている。

移動にも優れ、衝突検知センサー・障害物センサーにより障害物を自動で回避・衝突を避けるて移動が可能となっている。自律走行で設定した場所に移動することも可能な一方で、に人間による遠隔操作によるも対応。情報取得漏れなどによる対応なども行える。

また機能拡張も用意されているため、各種センサーを搭載することも当然可能となっている。

例えば、店舗営業中は建物内の巡回を行いつつ、来店客及び店舗・倉庫感でも荷物の移動を行う。営業終了後は店舗内の在庫管理を行いつつ、並行して建物巡回・建物内の汚れ確認と通常と異なる配置を行っている物のアラートや汚れ情報の確認マッピングなど複数の作業を行うことも可能となり、総合的なコスト削減に貢献することが出来る。

クラウドプラットフォームの「ugo Platform」を利用することで、取得したデータの受け渡しであったり、複数のugoを利用したデータ取得など応用が可能となっている。

ugo Platform

また、前述した汚れ情報などを「ugo Platform」を介することで、「ugo Platform」に接続している掃除ロボットへ直接情報を受け渡し、清掃ロボットがその情報を元に清掃をするという「ロボット同士の協働作業」が現実のものとなる。

前述の様に、ロボットを活用して一足飛びに「完全自動化」し、DXの恩恵に預かるには時期尚早では有るが、まずはロボットで出来ることを考え、出来ないことに関しては人間が行うという役割分担を明確にすることで、効率化を求めていくというのが、現時点では現実的な解答ではないだろうか。