佐藤佑樹

某県在中。小説を書いたり、音楽を作ったり。ただいま詐欺師に騙されて係争準備中。

佐藤佑樹

某県在中。小説を書いたり、音楽を作ったり。ただいま詐欺師に騙されて係争準備中。

マガジン

  • 『その場所に彼はいた』

    オススメの音楽とお酒を、小説の体裁をとりながら紹介していきます。  夜の散歩は私たちを魅了する。深夜徘徊中の主人公は、変な場所で一人酒盛りをする怪しい男と出会う。その男のすすめる酒も音楽も、なんだか心に染み渡る。  人を殺したとうそぶくこの男は、一体何者なのか。男の物語を眺めながら、主人公は成長していく。  純文学畑が綴る連作ショートショート。全30話。  スマホでもご覧になり易いような表記にしております。ぜひに。

最近の記事

その場所に彼はいた 第二夜

 やはり、彼はいた。  今日のような雨のじめじめと踊る夜なんかには、あの得体の知れぬ高等遊民が繰り出しているだろうとふと思った。サッシを開け放しでもしようものなら、蛙だとか夜烏だとかが、ゲロゲロバッバッと、まるでボーナスの入ったサラリーマンかのごとくに乱舞しているさまが、聞こえてくるのだ。  良い夜に趣のある肴ですねえとでも呟きながら、またあの場所で飲んでいることだろう。  美味しそうなつまみが手に入ったことだし顔を出してみる価値もある。  彼は僕の姿を見とめると、良い夜

    • その場所に彼はいた 第一夜

       そろそろ日付も変わろうかという時刻、僕は寝つけなくって散歩に出た。ド田舎。レンタルショップすらない。明日も予定はなし。寝るには惜しい。  バイパスの側道を行く。綺麗に整備されてはいるが、悲しいかなここは地方のさらに片隅。ただでさえ往来もないのに、いまは真夜中。誰の姿も見えない。  しばらくのらりくらりと歩いていると、微かに、音楽が聞こえてきた。  こんな夜中に?  こんな場所で?  けれど気のせいではない。たしかに聞こえる。  音の出どころはすぐにわかった。自身の歩い

    その場所に彼はいた 第二夜

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    • 『その場所に彼はいた』
      2本