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2020年鑑賞録

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試写会、劇場、Netflix・Amazonなどの配信、有料チャンネルなどで観た映画・海外ドラマの備忘録 in 2020
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2020年の私的ベスト10+α

年内に間に合わなかった上、久しぶりの投稿… ちょっと思うところあってnoteから離れており、遡ってみたらまさに『はちどり』について書いて以来という… 大変な1年でしたが、 新作映画は配信作品、オンライン試写も含めて114本鑑賞となりました。 ☆映画(劇場公開)☆ 『ジョジョ・ラビット』 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』 Netflix映画『ハーフ・オブ・イット』 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』 『はちどり』

『はちどり』この韓国映画もまた「女はいつも、女に優しい」と教えてくれる 公開中

原題「벌새」 英題:HOUSE OF HUMMINGBIRD ★★★★★ 『82年生まれ、キム・ジヨン』とはよく似ているようで、やや異なる鑑賞後感。 でも、確実なのは、キム・ジヨンの少女時代と重なる思春期映画であり、これもまた女性の連帯を描いたシスターフッドの映画でもあるということ。 「女はいつも、女に優しい」これをやってくれているということ。 じんわりときますが、タオルが必要です。 韓国の新鋭女性監督キム・ボラが、自身の少女時代をベースに脚本から手がけ、ベルリン国

『ペイン・アンド・グローリー』アントニオ・バンデラスって、こんなにも可愛らしかったんだ 公開中

原題:Dolor y gloria 英題:Pain and Glory ★★★★☆4.5 『ドクター・ドリトル』では敵役として登場しているアントニオ・バンデラスですが、カンヌでの男優賞に続いてオスカーにもノミネートされた今作は、もう、何というか、若い頃からいろいろ見てきたけれども ペドロ・アルモドバルのアバターとして、最高だったと思います。 最愛の母を亡くした喪失感と悲嘆、年を重ねたことによる腰の激痛に悩まされ、映画にしたい題材すらもない…。 そんなスランプともい

魂が毒される戦争と人種差別主義…スパイク・リー最新作『ザ・ファイブ・ブラッズ』 Netflix配信中

原題:DA 5 BLOODS ★★★★★ 「Black Lives Matter」(黒人の命を軽んじるな)のさなか、アフリカ系の4人のベトナム帰還兵たちが当時密かに隠した金塊と戦死した隊長の遺骨を探し、トラウマの地を再び訪れる物語を、スパイク・リーがNetflixと組んで放ちます。立ち上がる反戦映画でもあります。 カリスマ性と知性、実行力を持って彼ら“ブラッズ”を引っ張る、戦死した隊長“ストーミン”・ノーマンには『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマン(ぴった

『ハリエット』シンシア・エリヴォ、モーゼと呼ばれた奴隷解放者へのハマりっぷり 6/5(金)〜公開

原題:HARRIET  ★★★★☆4.5 皆さんはジョン・ボイエガくんのエモーショナルで、力強い抗議のメッセージご覧になりましたか? 心揺さぶられましたよね。ぜひジョーダン・ピール監督らといい仕事してほしいです。 そして、彼女です。彼女もまた、エモーショナルで力強いのです。生き抜く厳しさを誰よりも知る、カリスマ性と勇気を持つハリエット・タブマン。新20ドル札の顔となるはずだった実在の女性奴隷活動運動家を、トニー賞受賞のディーバ、シンシア・エリヴォが演じます。 彼女が

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』祝・6/12(金)公開決定!

(公開日がついに決定したので、2か月ぶりに書きます) 原題:Little women ★★★★★+ 『レディ・バード』グレタ・ガーウィグによる素晴らしい現代的アップデート。 よく知られたルイーザ・メイ・オルコットによる原作「若草物語」からの取捨選択というのか、押すところと引くところが絶妙に的を得た、ナイスな脚色。 グレタ監督が前作でも組んだシアーシャ・ローナンも去ることながら、もう誰も止められないフローレンス・ピューことピュー子(と呼んでいきたい)の輝きたるや!スクリ

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』ゴッサムという鳥籠からの脱出、最高 3/20(金・祝)〜公開

原題:Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn改め、Harley Quinn: Birds of Prey ★★★★★ たぶん、決して万人受けはしないんだろうけれど、PG 12指定ですし。 でも、もし、我が子が女の子で、 12歳になったばかりだったら是が非でも連れていく1本。(注記:やっぱり過激描写もありますので15歳にしときます) 声なき者の声として、思いを届ける。とても大

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』いかにもなドラン節に込めた重大なメッセージ 3/13(金)〜公開

原題:The Death and Life of John F. Donovan ★★★★☆4.5 アデルの「Rolling in the Deep」と空撮という、ダイナミズムを持ったサスペンス調で幕を開け、 どこに深く落ちていくかといえば、人気スターが抱える心の闇。 彼と11歳の少年が文通していた2006年と、10年後その過去を回想する青年と記者とのやりとりが交互に描かれ、 ドランらしいエモーショナルな着地へ。 ドランファン、主演キット・ハリントンおよび「ゲー

『ジュディ 虹の彼方に』ジリ貧でも圧巻、これぞ伝説のステージ 3/6(金)〜公開

原題:JUDY  ★★★★★ これはレネー・ゼルウィガーが圧巻。もともと彼女はいわゆる“憑依系”だとは思っていましたが、撮影時ジュディ・ガーランドと同い年で挑んだステージに運命的なものを感じつつ、 映画序盤で訪れる、ステージでのワンカットの歌唱シーンでググッと心を掴まれたら、もう夢中。オスカーもひれ伏すしかありません。 急逝の半年前、再起をかけたツアーが行われた1968年冬のロンドンと、薬とアルコールで朦朧とした中で回顧する『オズの魔法使』やミッキー・ルーニーとの共

『スウィング・キッズ』青春ダンスムービーと見せかけた戦争人間ドラマの傑作 公開中

英題:Swing Kids ★★★★☆4.8 『神と共に』二部作で涙を誘ったド・ギョンスこと「EXO」のD.O.(ディオ)をはじめ、『エクストリーム・ジョブ』のオ・ジョンセや、新星パク・ヘスらがタップ・ダンスで魅了! しかし、そこは朝鮮戦争下、最大の捕虜施設・巨済島捕虜収容所。 D.O.が演じるのは捕虜になった北側の兵士であり、収容所には戦後に北に送還されたくない者(反共)がおり、そんな彼らやアメリカ側を敵対視する(親共)に中国の共産軍なども入り乱れ、まさに一触即発状

『ミッドサマー』結局は、女性賛歌とは言い過ぎでしょうか 2/21(金)~公開中

原題:MIDSOMMAR ★★★★☆ 本来苦手なジャンルではあるものの、アリ・アスター監督が来日時に「失恋映画」であり、「ホラー映画ではない」と繰り返し、「ダークコメディであり、民間伝承モノ」と語ったことから気が変わりました。 しかも主演は2020年、飛ぶ鳥を落とす勢いのフローレンス・ピュー(以下、ピュー子)ですから。 確かに失恋映画です。かなり悪趣味な。 気持ちの悪い色彩美とプロダクションで、気持ちの悪い撮り方しちゃって(褒めてます)。 そして、ピュー子最強説は

Netflix『好きだった君へ:P.S.まだ大好きです』 配信中

原題:To All the Boys: P.S. I Still Love You ★★★☆☆3.5 前作の『好きだった君へのラブレター』が好きだったので。 好きな子にこっそりラブレターを書きつつ、“実際には送らず”にいたララ・ジーン。しかし、あるとき出すつもりのなかったラブレターが5人の男子に届けられ、その中には学校一の人気者ピーターも。 今の彼女にやきもちを焼かせたいピーターの提案でふたりは偽カップルになるも、いつの間にかお互いに、本当に好きになっていて…という物語

『チャーリーズ・エンジェル』新生エンジェルは『ピッチ・パーフェクト』風味!? 続編はいかに… 2/21(金)~公開

原題:Charlie's Angels  ★★★★☆ 新作に向けて『チャーリーズ・エンジェル』(2000)と『チェーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003)、さらに70年代のTVシリーズも見直したら、それぞれに面白いこと! 特にキャメロン・ディアスとドリュー・バリモア、ルーシー・リューのキャラが生き生きとした映画2作には、いま観ても救われるくらいの突き抜けた痛快さとポジティブなエネルギーを感じます。『フルスロットル』には『ハスラーズ』もびっくりのシーンもあり、

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』映画から生まれた特別なきずなが映画を超えた 公開中

原題:The Peanut Butter Falcon  ★★★★☆4.5 アカデミー賞授賞式にプレゼンターとして登場したシャイア・ラブーフとザック・ゴッツァーゲンの2人。その微笑ましいコンビネーションのきっかとなった本作。映画を超えて続いている関係性が、すばらしいなと。 もともとはダウン症のザックの「映画スターになりたい」という夢を叶えるべくスタートした企画。 高齢者のための福祉施設で暮らしていた(身寄りがなく行政に押し込められていた)主人公ザックが、プロレスラー