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日本郵政グループの決算分析(前編)郵政改革により誕生した巨大グループ

日本郵政グループの決算分析を行いたいと思います。

そういえば・・・

今日(28日)は日産が大赤字というのがニュースになってましたね。こちらも分析を進める予定ですが、今日(28日)は日本郵政の話をしたいと思います。決算分析はおおよそ終えています。まずはどういった状況なのか?

ですが、

日本郵政が15日発表した2020年3月期通期の連結決算は、純利益が前の期比1%増の4837億円だった。小型郵便の取り扱い増や、金融事業での経費圧縮が寄与した。一般事業会社の売上高にあたる経常収益は6%減の11兆9501億円だった。傘下の日本郵便でポストに入るサイズの小型郵便「ゆうパケット」の取扱数量が増えたが、かんぽ生命保険で商品の手数料収入が減少。新型コロナウイルスの感染拡大で、オーストラリアの物流事業の取扱量も減った。

あまりニュースにならなかったようですが(インパクトなかった?)、このように今期は純利益1%増、とかんぽ生命の不祥事があった中でも健闘した決算でした。

このニュースだけをみても実態がまだ分かりませんので、決算データを深掘りしていきたいと思います。

と、はじめて見たものの、グループのことを調べているだけで文字数が嵩んでしまったので、ここでは前編、中編、後編に分けて整理していきます。

まず、前編では、日本郵政グループはその成り立ちを丁寧に整理していきたいと思います。

1. 日本郵政グループとは?

日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3つの主要企業で成り立つ企業グループです。

日本郵政は知らないという人はいるかもしれませんが、郵便局は知ってますよね?

簡単にいえば、郵便局ネットワークを利用したサービス提供を行っている会社です。提供されるサービスは、郵便・貯金(ゆうちょ)・保険(かんぽ)の三事業が柱になっています。

郵便の父、といえば、前島密ですね!

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       (日本郵政グループのホームページより)

前島密(1835年から1919年)
越後国(現在の新潟県)に生まれ。享年84歳。「縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」という信条どおり、近代化が進む日本でまさしく陰ながらより便利でより快適な暮らしの方法を提案し続けた。

明治のはじめ、日本に郵便の仕組みを築いた前島密(まえじまひそか)。「日本近代郵便の父」と呼ばれ、現在でも1円切手の肖像として有名です。前島密は郵便の創業者としてその名を不動のものとしていますが、郵便関連のほか、江戸遷都、国字の改良、海運、新聞、電信・電話、鉄道、教育、保険など、その功績は多岐にわたります。

日本郵政事業の大きな転換点。

それは小泉さんによる郵政民営化、です。

日本における郵政の民営化とは、日本政府が1990年代末から2000年代にかけておこなった郵政三事業(郵便・簡易保険・郵便貯金)を民営化することを目的とした政策である

小泉さん・・・というと、もう小泉進次郎さんというひともいるかもしれせんので、念のため。

小泉純一郎さんは、

衆議院議員(12期)、厚生大臣(第69・70・81代)、郵政大臣(第55代)、内閣総理大臣(第87・88・89代)、自由民主党総裁(第20代)、農林水産大臣(第38代)などを歴任した。

そして首相としては、

「構造改革なくして景気回復なし」をスローガンに、道路関係四公団・石油公団・住宅金融公庫・交通営団など特殊法人の民営化など小さな政府を目指す改革(「官から民へ」)と、国と地方の三位一体の改革(「中央から地方へ」)を含む「聖域なき構造改革」を打ち出し、とりわけ持論である郵政三事業の民営化を「改革の本丸」に位置付けた。

要するに小泉改革の本丸としてこれまで国営だった郵政事業が民営化されたわけです。

2001年(平成13年) 郵政事業庁発足
2003年(平成15年) 日本郵政公社発足
2007年(平成19年) 日本郵政グループ発足。日本郵政(株)、郵便事業(株)、郵便局(株)、(株)ゆうちょ銀行、(株)かんぽ生命保険の5社体制
2012年(平成24年) 郵便事業(株)と郵便局(株)が統合し日本郵便(株)が発足。
日本郵政(株)、日本郵便(株)、(株)ゆうちょ銀行、(株)かんぽ生命保険の4社体制
2015年(平成27年) 日本郵政(株)が東京証券取引所市場第一部に株式を上場
(株)ゆうちょ銀行が東京証券取引所市場第一部に株式を上場
(株)かんぽ生命保険が東京証券取引所市場第一部に株式を上場

と日本郵政の民営化が始まった2001年以降からの流れです(日本郵政グループから会社沿革より)。

日本郵政、ゆうちょ、かんぽは共に2015年に上場しました。

2.日本郵政グループと郵政民営化法

これで民営化が完全に完了しているのか?

といえばそうではないです。

いや、民営化はしているのですが、

国(名義は財務大臣)が63.29%保有しています。つまり大株主は国!です。

国が株主として存在感のある企業は他にもあります。

例えば、JT(日本たばこ産業)は33.35%を国が保有しています。

元、国営であったり何らかの政策的な目的で国が保有しているケースがある、ということです。


政府は22年度までに東日本大震災の復興財源4兆円を確保するため、保有義務のある「3分の1超」を超える日本郵政株の売却を目指しており、過去2回の売却で2.8兆円を確保。5月に第3次売却に向けた主幹事も選定し、早ければ昨年9月の売り出しを検討していた。しかし、不正販売問題を起こしたかんぽ生命と日本郵便を傘下に持つ日本郵政グループに対する行政処分や、一連の問題を受けて株価は低迷、復興財源の残り1.2兆円を確保するための目安となる1132円を下回る水準で推移。事実上、売却は難しい状況が続いていた。東京メトロ株売却収入も復興財源に位置付けられていたが、売却に向けた動きは進展していない。

こちらの株式は段階的に売却することが決まっているわけですが、今回のかんぽ生命の不祥事に起因して、売却が遅れることになりました。

かんぽ生命による不祥事に起因したこともあるのですが、今回の新型コロナウィルス感染症による影響で株式市場が動揺していることもあります。つまり、株式市場がある程度活況していないと。つまり盛り上がっていないと株は売却することは難しい、というわけです。

合わせて分かったのは東京メトロですね。こちらは非上場ですが、上場を通じて売却が計画されています。東京都と政府が株を持っています。

政府(53.4%)、東京都(46.6%)という構成ですね。

有価証券報告書も作成してますね。こちらもまたチェックしたいと思います。東京メトロは株式会社化はしていますので、実は配当をして、貴重な財源になってます。58,222百万円で配当性向25.9%とちゃんと配当もしています。こちらが政府と東京都に分配されているわけですね。

おそらく東京オリンピック⇒東京メトロIPO(新規株式公開)という流れで行きたかったのでしょうか・・・。

今回の新型コロナウィルス感染症はこうした流れも止めてしまったようです。

日本郵政グループの話に戻ります。

3. 株式売却と規制との関係

郵政民営化法においては業務に規制がかかっていて、自由な経営に関する意思決定が行えないようになっています。

え!それで上場していいの・・・と単純に疑問に感じる方も多いと思います。

郵政民営化法第8条の影響を受けています。

郵政民営化法第8条: 日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の業務については、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するために必要な制限を加える

業務制限が掛かっているのは、主にゆうちょ、かんぽです。

郵政民営化法第110条、第138条: ゆうちょ銀行・かんぽ生命が新規業務を行うためには、郵政民営化法に基づく内閣総理大臣(金融庁長官)及び
総務大臣の認可を受けなければならない。認可申請があった場合、両大臣は郵政民営化委員会の意見を聴かなければならない。

ゆうちょにおいては法人融資を行うことが出来ません。

住宅ローンもできません。代理業者として他銀行を紹介することは出来ますが・・・。

ゆうちょ銀行は、ソニー銀行および新生銀行を所属銀行とする銀行代理業者です。ゆうちょ銀行では、ソニー銀行の住宅ローンのお申し込みの媒介および新生銀行の住宅ローンのお申し込み・契約の媒介をしています。

2019年5月30日付記事です。実は、投資用不動産向け融資を巡る不正行為で金融庁から行政処分を受けたスルガ銀行とも業務提携を行っていました。

資金の貸し付けが出来ない・・・ということで。

実はこんなベンチャーファンドも2017年11月1日付で設立しています。

最近もこんな資本提携を行っていますね。

かんぽは、次に触れる加入限度額のほかに自由に商品設計が出来ないということもあります。

こちらにも書いていますね。

上乗せ規制
 かんぽ生命は、郵政民営化法により、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件の確保の観点から、他の日本の生命保険会社にはない業務制限規制が課されており、これを「上乗せ規制」と呼んでいます。
 具体的には、被保険者さま一人あたりの加入可能な保険金額に対し上限があること、保険会社等の子会社化が禁止されていること、新商品の開発にあたって内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要であること、新たな資産運用手段を実施するにあたって内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要であること等があります。

「新商品の開発にあたって内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要」

ということです。「新たな資産運用手段」についても同様ですね。

この上乗せ規制の説明はかんぽ生命から、ですが、ゆうちょにもほぼ当てはまりますね。

かんぽとゆうちょは、預入限度額と生命保険の加入限度額については段階的に緩められていく方針ではあります。


ゆうちょ銀行への預入限度額引き上げを巡り政府の郵政民営化委員会(委員長・増田寛也元総務相)がまとめた報告書案が22日分かった。来年4月に現行の1000万円から300万円引き上げる。かんぽ生命保険の加入限度額も1300万円から2千万円に上げる方向だ。


こちらには加入限度額の変更について書いています。

では、こうした業務の制限はどのような条件を満たせば、緩めて行くのでしょうか?

それはこちらの郵政民営化法で定められています。


○ 日本郵政がゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式を1/2以上処分した場合、認可制が届出制となり(郵政民営化法第110条の2、第138条の2)、全株を処分した場合、上乗せ規制は適用されない(郵政民営化法第104条、第134条)。

ゆうちょ、かんぽともに、日本郵政は89%(2019年3月期の有価証券報告書)を保有しているので、先行きは長いですね・・・。

中編では、ユニバーサルサービスについて整理していきます。

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