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退職金問題を考える

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退職金、いわゆる企業年金、退職一時金の問題点は何か?という点を取り上げていきます。
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平均賃金・退職金・企業年金から大企業と中小企業の格差を考えてみる:格差は広がっている?

1. はじめにこちらの記事、多くの方に読んでいただき、ありがたい限りです。

ですが、私の専門はやっぱり退職給付と会計です(確認)。

ということなので、こちらのことも考えていきたいと思います。またほかの日々の動きを追っているのは、一つは授業の題材を取り上げるという意味はありますが、もう一つは、自分の専門性を高めるため、です。

会計は現実と向き合う学問です。ですから、現実、今起きていることについ

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増加する非正規雇用、その内訳を分析する。

増加する非正規雇用、その内訳を分析する。

日本の雇用人数の半分近くにまで非正規雇用が達していていることを知っているでしょうか?

元データはこちらから。

ただ、この増加の要因としては、65歳以上の非正規雇用の人数が増えたから、ということはあります。

この図は、「非正規の職員・従業員」/「正規の職員・従業員」

の割合になります。

65歳以上が67.1%(2009年)⇒77.3%(2019年)

となっていますね。

今後ますます増え

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性別・年齢別でみる老後の生活資金に関する意識

性別・年齢別でみる老後の生活資金に関する意識

生命保険文化センターの生活保障システム関する調査は、

1987年(昭和62年)から時系列で行っている調査です。生活設計に対する意識や現状、生活保障に対する意識、および生命保険の加入状況をはじめとする保障準備の現状等をまとめられています。

かなり長期にわたって行われいる調査なので、非常に貴重なデータになってます。

PDF 第Ⅰ章 生活設計と生活保障意識 (PDF:584KB)
PDF 第Ⅱ章 

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税制適格退職年金の廃止がもたらした影響

税制適格退職年金の廃止がもたらした影響

日本においては、比較的設立年が最近でなければ、退職金を原資に企業年金に移行するケースがほとんどです。

ベンチャー企業においてはそもそも退職金がない!ということが多いと思います。

ベンチャー企業はどちらかといえば、ストックオプションで動機づけるケースがほとんどかもしれませんね。

すでに企業年金制度を廃止する企業が多くなってるということを取り上げました。

なぜここまで減少したのか?

その理由

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国の思惑と逆行:社会保障・職場保障に頼る人の割合が増加

国の思惑と逆行:社会保障・職場保障に頼る人の割合が増加

前回のnoteで紹介したのは、

社会保障政策として、自助を中心、つまり老後の資金は自分で確保してね!という政策が取られるようになってきたということです。

最近やたら聞きませんか?

地域包括ケアとか?

支えあいとか?

つまり、国の資金では到底足りないので、本当に困っている人だけが社会保障に頼ってね。

それ以外の人は自助で頑張ってね。

という姿勢ですね。

こちらの2019年度の調査結果

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自助、公助、共助V.S 生活保障の三層構造

自助、公助、共助V.S 生活保障の三層構造

さて、新型コロナ渦において、公的な支援の重要性が再認識されています。

その中で、私たちの生活保障システムを意識していく必要性がますます高まってきています。

このマガジンの中では、退職金の視点で考察を進めていきますが、生活保障をめぐる考え方、捉え方について整理していきたいと思います。

「自助、公助、共助」と「生活保障の三本柱」という考え方の違いです。

というのもこの二つの考え方、やや異なるコ

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雇用維持政策について考える

雇用維持政策について考える

コロナ渦において、経済はますます厳しい状況になってきました。

1.日本の雇用維持政策まず心配されるのは雇用ですね。日本の雇用維持政策を見てみましょう。

こちらで最大のポイントは、

解雇等を行わない場合は9/10(中小)、3/4(大企業)と定義されていることでしょう。

なお中小企業の定義は、以下のようになっていまして、これに当てはまらない場合は、全て大企業になります。

製造業・その他の業種

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雇用制度の違いを知る

雇用制度の違いを知る

コロナ渦において心配されている雇用の問題。

アメリカではすでにレイオフのことが話題になっています。

レイオフとは何でしょうか?

レイオフ(layoff)とは、一時解雇の事を指します。雇用調整の施策の一つであり、業績が悪化した際に人件費の抑制を目的とし、業績が回復するまでの期間中、労働者を一時的に解雇する事です。

レイオフ(一時解雇)は、あくまでも一時解雇であり、再雇用が前提です。業績が悪化

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雇用と退職金を考えてみる(2)内定取り消しは雇用の開始?

雇用と退職金を考えてみる(2)内定取り消しは雇用の開始?

諸事情ありまして、少し間が空きました(汗)

まずこのことを考える上で、雇用っていつから始まっているの?

という事から、考えていきます。

というのも、そもそも雇用が開始されないと、退職金は発生しませんよね?

退職金は、賃金後払、功労報酬、生活保障、色々な説があるということは申し上げてきました。

共通しているのは、「勤務」の事由(理由)として給付されるものである。

ことはいかなる説を採用し

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雇用と退職金を考えてみる(1)

雇用と退職金を考えてみる(1)

今日は時間の関係上、少し簡単に。

これまでの退職金に関する話で分かってきたのは、雇用の在り方と連携して考えていく必要があるという事です。

例えば、定年延長と退職金についてですね。

こちらでも触れられていますが、

定年延長が行われる場合に退職金がどのように再設計されるのか?

この点は従業員にとっても関心事でしょう。もちろん企業経営者にとっても

長い間雇用してもらえる、ということになれば、

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退職金はどうあるべきか?:振り返り(1)

退職金はどうあるべきか?:振り返り(1)

退職金の問題点に関して取り上げてきた記事。

この辺りで振り返りたいと思います。

繰り返して申し上げてきたことは、

退職金の原資が多くの企業で保全されていない。

労使関係で退職金の制度は変わるということ。

経営者は退職金を功労報酬と捉えているのに対して、従業員は賃金後払い、生活保障と捉えており、ギャップが存在していること。

の3つにあります。

私が懸念しているのは、倒産に伴い退職金が支

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退職金の給付減額リスクを考えてみる

退職金の給付減額リスクを考えてみる

こちら、凄くよくまとまっている記事があります。

今日は少しトーンは抑えめに退職金の給付減額のリスクについて考えてみましょう。

1. 退職金の種類今一度確認ですが、退職金には、外部拠出されている企業年金制度とそうでない退職金(退職一時金)制度があります。これらを包括して退職給付、退職給付制度と専門的には呼ばれます。

貰える給付形態によって確定給付と確定拠出があります(*私よりもこちらの方やより

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高齢者の働かない権利は確保されるのか?~軽視される退職金問題~

高齢者の働かない権利は確保されるのか?~軽視される退職金問題~

前回までのnoteで

経営者にとって退職金は功労報酬である一方、従業員にとって退職金は賃金後払、生活保障の原資であるというお話をしました。

不幸にもこの認識のギャップが、経営者に資金を保全するという動機づけを低くすることに繋がっています。

とはいえ、あまり退職金問題あまり盛り上がっている気がしません。

それはなぜでしょうか?なぜ、保全されていない企業が多いにも関わらずそれが問題視されないん

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経営者は退職金をどのように設定すべきか?

経営者は退職金をどのように設定すべきか?

経営者は退職金をどのように活用すればよいのでしょうか?

日本における退職金制度は、労使関係で決まるところが大きいです。となると、退職金についてどのように設定するかは、従業員ならびに将来の従業員にダイレクトなメッセージになります。

と考えれば、退職金をどう考える?という点について経営者は真剣に考えてみるのもよいのではないでしょうか?

1. 働き方改革と退職金経営者にとって退職金は何でしょうか?

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