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FRENCH TOUCHをものにする!

フランスで、デザインの仕事をしていると良く耳にする言葉、FRENCH TOUCH。フランス語で話していても、「フレンチ・タッチ」と英語読みです。なんとなくフランスっぽさ、という意味だと理解していましたが、最近、実は思っていたよりも、幅広い世界があると知りました。
職場の同僚達に「あなたにとって、FRENCH TOUCHとはなんですか?」という質問をしてまわってみました。

トリコロールと、フランスを象徴するものたち

私が今までFRENCH TOUCHだと思っていたものは、トリコロールのロゴ。フレンチブランドは、何かとアクセントに青白赤のロゴを入れたがります。フランス語で「Bleu、Blanc、Rouge」といって、青は自由を、白は平等を、赤は博愛を表し、この順番も重要です。(フランス語の青「Bleu」は、英語の「Blue」と同じようにみえて、実はeとuの位置が逆。)
そういえば、マクロン大統領もトリコロールのアクセントが入ったマスクをしていましたね。

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フランスらしいアイテムと言えば、バゲット、ワイン、ベレー帽、ボーダーシャツ、そして雄鶏。雄鶏はフランス語でLE COQといって、中世からフランスを象徴する動物です。あの有名ブランドや、サッカーのフランス代表のユニフォームにもついています。

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これらの要素がギューギューに詰まったブランドコミュニケーションをしているのが、フランスの航空会社エールフランスです。2014年に発表された広告「FRANCE IS IN THE AIR」は、今でも使われている超ロングラン。フランスは同じ広告グラフィックを何年も使いまわし、日本のものよりも寿命が長い印象です。ものを長く使うお国柄ですが、広告も例外ではないようです。

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この広告には、いくつものFRENCH TOUCHの要素が潜んでいると、パリジェンヌの同僚が解説してくれました。

真っ赤な口紅(rouge)
黒いワンピース(petite robe noire)
ネックレス(collier)
ベレー帽(béret)
エッフェル塔(la tour Eiffel)

黒いワンピースのpetite robe noireは直訳すると「小さい黒いワンピース」なのですが、フランスでも小さいものは美しいという価値観があります。黒いワンピースにはなぜか、petite(小さい)ってつけるんですよね。たとえ小さくなくても。重くなりがちな黒という色に対して、語感に可愛らしいニュアンスを与えるためではないかと思うのです。
日本でも、枕草子の「うつくしきもの」の中に「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」とありましたね。個人的に日仏の共通点だと感じています。

飛行機に搭乗した際に流れる機内安全ビデオも、FRENCH TOUCH満載です。

パリジェンヌのドレスコード

とあるファッションメゾンのパーティーに招待された子が、何を着ていくか悩んでいました。そこで、肝っ玉母さん的キャラだけど、オシャレ番長として羨望を集める友達が「Tシャツにデニムで良いでしょ」とアドバイス。その子は本当に、そんなラフな格好で行ったのです! 髪型はサッとカンタンにまとめ、もちろん、真っ赤な口紅と、ハイヒールは忘れずに。そしたら、気合が入ったファッションで身を固めた人達の中で逆に目立ち、自然体で素敵だと褒められたそう。

coiffé-décoifféという言葉があるのですが、coiffé(髪が整った)とdécoiffé(乱れ髪)を組み合わせて、「あえて乱れ髪を演出した髪型」という意味があります。「無造作ヘア」といったところでしょうか。そんな肩の力が抜けたオシャレは、effortless elegance(エフォートレス・エレガンス)と、これまた英語で呼ばれています。

それとは対極に語られるのが、ハリウッドセレブの気合が入ったファッションです。フランス人は、コテコテに力を入れたファッションをバカにします。実は高級レストランのドレスコードも、フランスではそこまで厳格ではないのです。権威的なものに対しても臆しませんよ?という余裕をみせることがカッコイイという感覚がありそう。

音楽が起源のFRENCH TOUCH

1990年代後半から2000年代にかけて、世界的に流行ったフレンチ・ハウスというジャンルの音楽がありますが、本国フランスではFRENCH TOUCHと呼ばれています。実は、この音楽のジャンル名がこの言葉の語源かもしれません。
同僚達の何人かは、「FRENCH TOUCHといったら、音楽でしょ」といっていました。そして、親切にFRENCH TOUCHのプレイリストを送ってくれた子もいたので、みなさまにもご紹介。音楽に関しても、同じものを長く愛するフランスなので、これらの曲は今でも毎日ラジオから高頻度で流れてきます。

プロダクトデザインにおけるFRENCH TOUCH

フランスを代表するデザイナーのフィリップ・スタルク(Philippe Starck)は、アノニマスだったプロダクトデザイナーという職業を一気にスター性あるものに押し上げ、デザイナーの地位向上に貢献した人といわれています。彼の教え子たち、マタリ・クラッセ(Matali Crasset)、クリストフ・ピレット(Christophe Pillet)などのデザインスタイルがFRENCH TOUCHだという人もいました。

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また、2014年にシャンゼリゼ通りにあるルノーのショールームAtelier Renaultで、パリのデザイングループ5•5による、「So french by 5•5」という展示がありました。この展示がまさに、FRENCH TOUCH濃縮版! 「Bleu、Blanc、Rouge」、雄鶏、ベレー帽、とキーアイテムをおさえています。

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建築においてのFRENCH TOUCH

そもそも、この言葉の意味を深く知りたいと思ったきっかけは、パリで働く建築家の友達のひとことでした。フランスで建てられる現代建築の独特さについて話していた時、「ああいうのはFRENCH TOUCHっていうんだよ」と。私が日々、日々なんとなく感じていたFRENCH TOUCHとはまた違った解釈に、興味が湧いたのです。

以前、「フランスで不動産を買う:古い建物と新しい建物、どちらが高いの?年代別特徴編」の2000年代の建物の特徴として、挑戦的なデザインが多いということを書きました。大胆な色使い、ランダムな形状だったりする現代的な建物がFRENCH TOUCHだそうです。

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フランスが大好きなフランス人。「あなたにとって、FRENCH TOUCHとはなんですか?」 という質問は、とても盛り上がりました。
様々な解釈に出会いましたが、これが正解というものはない世界のようです。もし、身近にフランスの方がいらしたら、ぜひ聞いてみてください。

こんな記事も書いているので、ぜひ!


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