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フランスで自分たちにあった保育ママさんに出会うために:20の質問

「Qui c'est qui décide ?(ここでは誰が決めるの?)」「C’est TATA !(タタさん!)」

娘がフランス人の保育ママのタタさんちに預けられるようになって、約1年、1歳を過ぎて、タタさんのこの呼びかけに答えられるようになりました。タタさんに預けられている子ども達全員が教わる言葉です。カタカナで書くと「セ タタ」。まだ言葉が拙い幼児にも簡単に喋れるフレーズです。娘が人生で最初に喋った一文はこれかもしれません。
初めて聞いたときは、え?軍隊??と軽いショックを受けましたが、フランス人の友人たちに聞くとそういった印象はないそう。私にいわれて、「確かに隊長!って感じはあるかもねー。でも可愛いじゃん」という反応。そうなのね。
この言葉は、言うことを聞かないモードになってしまった子どもに投げかけられます。そして、「セ タタ」と答えさせることで、主従をハッキリさせて、反省を促すのです。この呼びかけには続きがあり、「Si tu es à la maison ?(もしお家だったら?)」
答えは、「Maman(お母さん)」
ちゃんと、お母さんを立ててくれているのが嬉しいです。

タタさんは、女手ひとつで、4人の男の子を育て上げた、還暦過ぎのベテラン保育ママさんです。保育ママ経験年数は20年以上とか。アルジェリア系フランス人で、生まれも育ちもフランスですが、イスラム教徒なので、ラマダンをやることも。でもラマダン中も、全くそれを感じさせないので、私はしばらくの間まったく気づきませんでした。
タタさんは、この経験年数にして、新しいものへの好奇心と新しい工夫が尽きません。預け始める日、保育ノートを持参していったら、「私はそういうの好きじゃないの。Whatapp(日本のLINEみたいなアプリ)やってないの?」と。お年に似合わず最先端!日々の様子はアプリを通じて、写真、動画など、娘の様子を伝えるメッセージと共に、たっくさん送られてきます。

タタさんの元には、常に3人の子どもたちが預けられています。娘が生後3ヶ月で預けられ始めた頃は、2歳の白人の男の子と、同じく2歳の黒人の男の子がいました。アジア人の娘と並んで、ベネトンの広告みたいだと、よく言われていました。フランスは満3歳からécole maternelle(幼稚園)に通います。2人の男の子たちは、去年の9月に幼稚園に入園し、タタさんの家を巣立っていきました。ベネトン解散で寂しいなぁ、と思っていたら、代わりにやってきたのが、4ヶ月の白人の女の子と、8ヶ月の黒人の女の子。またベネトン編成になりました。それまで娘は、お兄ちゃん達に囲まれて可愛がってもらっていたところから、いきなりお姉ちゃんに。実は娘は、自分よりも小さい子達の前では、仕切りたがりという新しい一面が見えてきました。一人っ子でも、兄妹がいるような経験ができるのは、タタさんちの良いところ。

今となっては、とても信頼のおける人で、日々、感謝しかないのですが、出会いはそう簡単ではありませんでした。フランスでは、子どもを預けたい親が雇用主となって、保育ママさんを雇うという方式です。保育ママさんへの給料明細発行は、雇用主である親が行います。雇用に先立ち、面接は必要不可欠です。

私達は、7人の保育ママさんと面接をしました。この7人は、nounou topという保育ママと預けたい親のマッチングサイトでみつけました。連絡先を手に入れるために多少の課金も。あとは、保育ママ協会や、市役所にある保育ママ登録リストも参考にしました。実際に問い合わせても、保育ママさんが預かれる年齢ではなかったり、もう枠が埋まっていたりで、7人の面接にこぎつけるまでに、30人に電話をしました。
ちなみに、預かれる年齢というのは、2階以上に住んでいる保育ママさんが、3人預かる場合、ひとりで歩ける子、ひとりで座れる子、赤ちゃん、と月齢差がないといけないのです。万が一、エレベーターが故障していて、階段を使うことになった場合、3人とも歩けない赤ちゃんだと、誰かをひとりにしてしまうリスクがあるからです。そして、フランスではエレベーターはよく壊れます…。

話が少し逸れましたが、フランス人曰く「保育ママを決めるポイントはフィーリング」だそうです。
「ひと目会った瞬間に確信した」「迷いは全く無かった」「彼女しかいないと思った」と、みなさん、ドラマチックなことをおっしゃいます。
私達は、フランス人ではないので、フィーリングには自信がなく。その上、夫婦間のフィーリングにも大きなズレがありました。特に私達夫婦はお互い対照的な性格なので、良いと思う人も対照的になるんですよね。元気な人に好印象な夫と、丁寧な人が好きな私。
結局、以下の20の質問をし、回答をエクセルの表にいれて点数化、優先順位をつけて決めました。とはいっても、会った人達は、本当にどの人もいい人ばかり。決めるために、条件で洗い出した、という感じです。最終的に、夫婦共に、2番目に良いと思っていた人に決めました。

当時の質問リストです。

基本情報の質問
①資格証の確認:基本事項です。
②保育料、食費、管理費:国で基準は設けられてはいますが、多少差があります。
③支払い方法:振り込みか、小切手が一般的です。
④預かっている人数:経験年数、家の広さなどから、1〜4人の間で免許に上限人数が記載されています。
⑤育児経験:お子さんが成人している保育ママさんの方が、時間や休暇の融通が効く傾向あり。
⑥経験年数:長いから良いというものではありませんが、一応。
⑦一日のタイムスケジュール:過ごし方を聞くことでイメージが膨らみます。
⑧保育ママさんでの活動には何か参加しているか:外の人とどのくらい関わりあいを持つ人かどうか。
預かり時間、休暇、緊急時の融通の質問
⑨預かり時間のフレキシブルさ:5分でも遅れて来られては困るという方もいらっしゃいました。
⑩最長の勤務時間:どうしても仕事の都合でお迎えが遅れてしまう場合のリミットは何時か。
⑪学校休み中の預かりの有無:保育ママさん自身の子どもがまだ小さい場合、自分の子どもの面倒を見るために、学校休み中は預からない人もいます。
⑫希望する年間の休暇日数:標準で5週間。ふつうは8月に取るものなのですが、6月に取りたいという人もいました。
⑬風邪を引いた時の預かり条件:基本的には38.5度を超えたらダメという人が多いです。
⑭怪我などをした際の対処:意欲的な保育ママさんは、任意の救急講習を受けていたりします。
我が家では優先度高かった質問
⑮今預けている親の連絡先:保育ママさんを推薦できる人として、話を聞くことが推奨されています。
⑯土足禁止かどうか:一般的なフランスの家庭は土足なので。
⑰細かい話:離乳食はどうしているのか、車の有無、タバコを吸うかどうか、ペットの有無。
フリートークな質問
⑱この仕事の中で好きなことはなんですか:ここで保育への考え方を聞くことができます。
⑲特別な要望はありますか:意外と向こうも言い忘れることってあるので。
⑳質問はありますか:こちらも聞きますよ、という姿勢も。

「我が家では優先度高かった質問」に関して、少し掘り下げます。
質問の⑮の、今預けている親と話すことについて。これは、フランス特有のものだと思うのですが、インターネットで、みつけたアドバイスでした。最初は、聞いちゃって良いのかな?とドキドキしていたのですが、面接のときに、あらかじめ他の保護者の連絡先を準備をしている人もいたので、大丈夫でした。
見ず知らずの人に、いきなりフランス語で電話するのには、めちゃくちゃ緊張しましたが、生の声が聞けて、本当に良かったです。預け始めてからも、ちょっとしたことでも相談できる間柄になりました。親同士で事前に話し合って、タタさんに子ども達の写真入りカレンダーをクリスマスにプレゼントしたり。
私もタタさんに、見学きた人に連絡先を渡して良いか聞かれたので、ばっちりオススメする気満々で待っていたのに、かかってこなかったです。残念。

⑯の土足禁止かどうかは、フランスでは一般的には土足ですが、保育ママさんをやっている家庭では、わりと土禁にされている家も多いです。とある見学行った先で、土足の家で、赤ちゃんが床をハイハイ、お腹を黒くしているのをみて、私達には受け入れられないと気づきました。

⑰の細かい話。離乳食は、ほとんどの保育ママさんが手作りしてくれます。車の有無は、家の場所によって、公園や児童館が遠い場合など、車を利用する人もいて、ベビーシートが必要になることもあるので、聞いていました。タバコとペットの有無は参考に。

次回に続きます。

これまでの保育ママさんに関する記事は、こちらにまとめてありますので、もしよろしければ。

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