東京弁護士会は「弁護士法人ベリーベスト法律事務所」と代表社員の酒井将氏、浅野健太郎氏ら二人の弁護士を業務停止6ヶ月に。

非弁提携に厳しい処分

ベリーベスト元職員から告発を受けて、ベリーベスト法律事務所の非弁行為を審査していた東京弁護士会は13日、都内の司法記者クラブで会見を行い、ベリーベスト法律事務所と代表社員の酒井将氏と浅野健太郎氏の二人の弁士を業務停止6ヶ月にすると発表した。時事通信

懲戒理由は司法書士法人の新宿事務所から過払金の事件の斡旋を受け、その紹介料を支払っていた、とするものだ。弁護士法は弁護士資格を持たないものが弁護士に事件を紹介することを「非弁行為」として禁じている。

弁護士も弁護士資格を持たないものから事件の紹介を受けたり、その事件の紹介料を払うことを禁じている。これを「非弁提携」としている。司法法人は弁護士資格ではないから新宿事務所から事件の斡旋を受け、その対価を支払えば非弁提携となる。

ベリーベスト法律事務所の酒井将氏は再三に渡って、この東京弁護士会の懲戒審査に対して主にマスコミを通じて抗議活動を行っており、強い抵抗の姿勢を示した。

懲戒請求とは弁護士が「非行」を行った時にそれを見たものが弁護士の品位を下げるものとして、その弁護士が所属する弁護士会に申し立てるものだ。

最近では「余命ブログ」の管理者が呼びかけして弁護士に対して一斉に懲戒請求する大量懲戒請求事件が起こり、「懲戒請求」というワードを耳にした人も多いだろう。これらのケースは不当懲戒請求として当事者の弁護士から裁判を起こされ、続々と懲戒請求者が敗訴して賠償金を命じられている。

懲戒請求は誰もが行えるが、気軽にやって良いものではなく、事実と証拠、相当の理由が必要だ。

【会立件だったベリーベストの懲戒審査】

今回のベリーベスト法律事務所懲戒事件は「大量懲戒請求事件」とは全く趣が異なる。懲戒審査をした東京弁護士会には「非弁提携対策本部」というものが置かれ、非弁行為に対して日々目を光らせている。

通常、非弁行為の告発は弁護士や一般人が弁護士会に申し立てをして、審査をしてもらうが、これは「会立件」と言って東京弁護士会の会長が綱紀委員会に調査命令を出している。それほどに会として捨て置けない悪質なケースだと判断されたわけだ。会として断固たる懲戒の意思を感じるものだ。

これに対してベリーベスト法律事務所の酒井氏は前述したように審査に対して徹底抗戦、メディアに情報宣伝活動を行なった。筆者から見たら「派手に」という形容詞をつけらるレベルだと思う。

法曹界きっての「IT革命児」がはまった深い谷 東洋経済ONLINE より〜

「東京弁護士会綱紀委員会は、被審査人らの主張をろくに検討せず、懲戒にせんとした。この不当性は明らか。」などの声明文を出してるというのだ。

「東京弁護士会所属の弁護士が会長に楯突いてどうするんだ?まずは疑義事実の釈明と騒動のお詫びが最初では?」と感じたが、強ち筆者の社会人感覚は的外れではないだろうと思う。通常の感覚では「こんなに不当だと騒ぐと審査側の心象悪くするだけだろう」と思うし、「大人しくしていなさい、黙っていた方が得策だ」とたしなめる世情に通じた人物が周囲にいないのだなと当人たちの人望を下げるだけだ。

他この案件の懲戒審査中の記事もいくつか目を通したが、概ね酒井氏に対して好意的で弁護士の非行に抵触する可能性については否定的な意見が散見された。丸山和也弁護士なども登場し「弁護士会は懲戒権を乱用するな」などと横槍のようなコメントも。これらは酒井氏の人脈の賜物だろうが、懲戒回避には一切役に立たなかった。(そもそもマスコミを通じて世論を誘導しても弁護士会に圧力をかけられるものではないだろうし)

なぜなら東京弁護士会の会長は何の揺るぎもなく、ベリーベスト法律事務所と二人の代表者を厳しく罰する事を表明したからだ。何が問題で何故、懲戒したか端的に示されいる。品位品格を持って、弁護士会会長の誇りをかけてコメントが出された。

弁護士法人ベリーベスト法律事務所らに対する懲戒処分についての会長談話

より〜ベリーベスト法律事務所は「弁護士報酬を獲得するために紹介料を支払い事件の買取り」をしていたと断じ、これらの行為を決定していた二人の弁護士は非行の行いをしていたとその咎を示した。そして「今後も市民の弁護士に対する信頼を確保するために、弁護士や弁護士法人の非行の防止に努めるとともに、非行に対しては厳正に対処してまいります。」と宣言しています。

さすが弁護士会の会長ともなる人はその徳の高さが違うと心からの賞賛しかない。

弁護士職務基本規程には「弁護士は社会正義の実現に努めなければならない」という趣旨の言葉が記されている。この会立件とした東京弁護士会による懲戒事件の裏にはSNSで弁護士の受託件数を誇り、手当の高さを保証して弁護士を集めるなどした依頼者の顔を見ない弁護士利益を主体にしたベンチャー弁護士事務所への強い警戒感を感じる。

まさにこの事件で弁護士会全体が本来の使命目覚め、綱紀粛正がなされることを願うばかりである。

因みに、この酒井氏と浅野氏は裁判を募金で賄う「リーガルファンディング」という一般社団法人の理事である。これらの役職はどうなるのか、またさらなる酒井氏らの抗戦があるのか気になるところではある。

(了)











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