[読書] ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた「つまらなくない未来」

この本はどんな本か?
この本は行政サービスの99%がオンラインで完了できるエストニアという ロシアの隣の人口132万人の国についての話である。日本なら役所へ行って紙の申請書を書いたり証明書をもらったり納税したりするところを、ほぼすべてをオンラインで実現できる。
この本ではエストニアがどのような国なのか、なぜそのような国になったのかがわかりやすく紹介されている。
著者は現地へ訪れてレポートしている。とても面白いのだが、良くも悪くも著者の主張が大きい。この本を読むときは、事実と著者の主張を分けて読み解く必要がある。また、wikipediaでいいのでエストニアの歴史、現状調べてから読んだ方がいいと思う。

エストニアという国
第二次世界大戦時にソ連に占領され、ソ連崩壊に伴い独立したバルト三国の1国。人口132万人と非常に小さいが、ロシアの隣国ながらNATOとECへ参加している。歴史的に数学に強い国民性を持ち、旧ソ連時代には暗号技術などの研究所などがあったことからIT化に向けた人材も豊富だった。
そこに目をつけたのがSkypeの創業者であるデンマーク人のヤヌス・フリスとスウェーデン人のニコラス・ゼンストロームだ。能力が高く人件費の安いエストニア技術者を雇い2003年にP2Pで音声通話のできるSkypeを完成させた。Skypeは2年でe-Bayに26億ドル(2800億円)で売却、エストニアの技術者たちもストックオプションで多額の資金を得て数多くのIT企業を設立した。
また、国も行政サービスのIT化を目指し、X-Road という分散データ交換基盤システムを2001年にサービスを開始した。これにより、それまで各行政機関同士が紙でやりとしていた作業のほとんどがオンラインで手続き可能になった。
エストニアは、Skypeと行政サービスのIT化の2つの偉大な成功を元にIT立国としてブランディングをすすめている。

行政サービスのIT化
エストニアではデジタルIDを使って99%の行政サービスが利用可能だ。例えば出産すれば、病院が国民登録を行い、10分後には行政からお祝いメールが届く。と、同時に国の子育て支援申し込みも自動で完了している。住所登録も、車の名義変更も24時間365日オンラインで行える。選挙もオンラインで可能だ。
一つの巨大な行政システムがあるのではなく、行政ごとの各サービスを同じIDで利用でできるようにすることで異なるサービスを繋いでいる。それを安全にアクセスさせる技術がブロックチェーン技術を使ったX-Roadシステムだ。
それだけのサービスをしていて中央政府のIT予算は1億3500万ユーロ(176億円)と格安といっていい金額だ。さらに似たようなデータベースを作ってはいけない、13年以上同じ古いシステムを利用してないけない、透明性を確保するなどの興味深い基本方針がある。

デジタル産業と起業家マインド
Skypeで多額のストックオプションを得た元従業員たち(Skypeマフィア)が数々の企業を立ち上げた。また彼らが投資家となり新たな企業家たち(エストニアンマフィア)が活躍している。Skypeマフィア、エストニアンマフィアのマフィアは当然PayPalマフィア(PayPalを立ち上げたあとに、テスラ、YouTubeなどを起業した人たちにつけた名称)を意識したブランディングである。起業家たちを支えるために「コミュニティ」や「エコシステム」「行政との適切な交流」などがあるため、起業家マインドが高い。起業活動の活発さを表す「総合企業活動指数(TEA)」は先進国に分類される24か国中トップ(日本はワースト3位)。

デジタル化された教育
デジタル立国をブランディングするエストニアは教育にも熱心だ。PISA(学習到達度調査)では教育大国フィンランドを抜いて欧州1位になった。
そして教育の現場でもIT化が進んでいる(子供の成績や学習態度の確認、教師とのコミュニケーションもすべてオンライン)。
そして学校ごとの裁量権と、透明性が確保している(年一回の学力試験の順位・成績は学校別にすべて公開されている)。それと、デジタル化により誰でもITを代表する先進的な教育を受けることができることとの相乗効果により、エストニアでは結果的に学習機会の平等化が実現している。

この本をどう感じたか?
この本では「では日本は?残念、、」のような問いが多い。確かにエストニアの優れた部分と比べると日本の残念な部分が際立つけども、よく見るとエストニアという国の国家の民族の骨格があってこそと思える部分も多い。
日本に関しても日本の骨格は何なのか?を考えてから新しいものを作り出すべきではないかと思いました。


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