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[読書] 行動経済学 「予想通りに不合理 」「ヘンテコノミクス」

偶然にも同時期に行動経済学についての本を2冊読んだ。いつも並行して何冊か本を読んでいるのだけど、同時に読んでいた4冊の内2冊が行動経済学の本だった。内容も似ているのでまとめてnoteの記事にすることにする。

行動経済学とは

あるレストランでの出来事。Aランチ2000円とBランチ1500円があったが、スープとサラダくらいの差しかないのでBランチばか注文が入る状態だった。商売としてはAランチの注文がもっと増えてほしい。そこでSランチ3000円を追加して、Sランチ3000円、Aランチ2000円、Bランチ1500円の構成にすることにした。するとなんとAランチの注文が増える結果となった。一番安いBランチを頼むのはプライドが許さないし、AランチはSランチより安いという自分への言い訳ができたのだ。このようについ真ん中を選んでしまうことを「極端回避性」という。最初は「高い」と言っていたAランチも、選択肢が変わることでガラリと評価が変わるのだ。

というような、人間は実はあまり合理的に考えない。その合理性では説明できない人間の行動を「人間の心理」という視点から解析しようとする学問です。

行動経済学は2002年「ファスト&スロー」の人、2013年「根拠なき熱狂 」の人、2017年「行動経済学の逆襲 」の人、と、ここ数十年で3回もノーベル賞を受賞している。

予想通りに不合理

ダン・アリエリーさんは認知心理学と経営学の両方の博士号を持っていて、人間の行動や価値判断には不合理なものが多く、しかもそれの予測の可能性を研究された方です。18歳の時に全身70%に及ぶ火傷を負い、その治療の家庭でモノの見方が変化したとのこと。一言でいうと天才の変わり者というタイプ。語り口もユニークで、ニヒルな語り口は前に読んだ「週4時間だけ働く」を思い出した。

内容に関しては 
【イラスト図解】マーケティングの図解さんの図解が完璧すぎるのでそちらを紹介したいと思う。


僕が注目したのは、検証するために実験を繰り返していることだ。こういった科学的なアプローチの上で成り立っている学問ということが分かった。しかし、最初の仮説をどのように得ているのかは分からなかった。あるあるネタから仮説するのだろうか?


ヘンテコノミクス

この本は佐藤雅彦という天才が手掛けている。佐藤雅彦さんは昭和ー平成(きっと令和も)を代表する奇才の人で、広告代理店時代にCMの大ヒットを連発した(湖池屋シリーズ(ポリンキー、スコーン、ドンタコス)、カローラ2(小沢健二の歌)、ペコー(一瞬とはいえ午後の紅茶を負かしたことがある)、JRシリーズ(小泉今日子)、バザールでござーる(NEC))、広告代理店退社後はなぜかゲームを作り大ヒット(PS黎明期のIQ)、大学教授に転身した後はNHKの子供向けコンテンツで大ヒット(ピタゴラスイッチ)、そしてみんなのうたでの「だんご3兄弟」の大ヒット。

その佐藤雅彦さんが元教え子の管俊一さんと企画したのが「行動経済学まんがヘンテコノミクス」だ。

行動経済学の面白さにはまった二人が、どのような手段で世の中に広めたらいいか考えた結果、「ザザエさん」でやるのがいいと思いついた。しかし(当たり前だが)どのようにサザエさんの制作チームに脚本のプレゼンをしたらいいか思いつかないし、アテもない。そこで「自分たちでサザエさんをやればいいんだ」と思い立ってマンガとして作ることを思い立つ。2人はマンガを描けないのでマンガを描ける人として「バザールでござーる」のイラストレーター高橋秀明さんに声をかけた。この人もマンガを描いたことがなかったけど奇才佐藤雅彦さんの依頼とあって快諾。雑誌ブルータスでの2年間の連載を経てまとまったのが本作だ(あとがきに詳しい)。

僕は広告代理店時代の仕事をまとめた「佐藤雅彦全仕事 (広告批評の別冊 (8))」を一生保管しておく本と決めているくらいファンなので、この本も楽しく読むことができた。

行動経済学については漫画だけではなく巻末に行動経済学のテーマがいくつか分かりやすい文章でまとまっている。

サンク・コスト(埋没費用)効果:いままでかかってきた費用がもったいない!と合理的な判断ができなくなること
デフォルト(初期値)効果: 初期値からわざわざ変えようとしない心理現象
フォールス・コンセンサス効果:他人も自分と同じように判断するはずだ!と思い込むこと
ピーク・エンドの法則:最も印象の強い瞬間と最後の瞬間を平均化してしまうこと。最後に痛い思いをした歯の治療は辛さを引きずる
確実性効果:100%にすることに固執して経費対効果を忘れること
確証バイアス:直観で思いついたことに固執すること 5-10-20-( ) だと思わず25を想定して、それ以外の可能性を自ら排除してしまうこと
決定回避の法則:選択肢が多すぎると決められないこと
少数の法則:少ないサンプルの偏った結果を何故か正しいと思ってしまうこと
プロスペクト理論:同じ量の得と損失を比べると、損の方が2倍重く受け止めてしまうこと
利用可能ヒューリスティック(直観的判断):思い浮かべやすい(利用しやすい)記憶で直観的に不合理な判断してしまうこと
ナッジ(肘でそっと小突いて注意を即す): 行動経済学の知見は、人が非合理な行動を起こしそうなときにナッジするためのものだという考え

漫画パートも最後に文章での解説もあり、非常に真面目に行動経済学を伝えようとしている。
佐藤雅彦さんファンでなくても読んでみる価値のある本だと思う。



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