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「つくる」をわかるプロジェクト

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京都工芸繊維大学/櫛研究室とUCI Lab.の産学共同プロジェクト
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#京都工芸繊維大学

第11回.(最終回)「つくる」のわかりかた

UCI Lab. 所長 渡辺隆史 アイデア創造の現場を参与観察して何がわかったのか? 最終回はここまで書き進めてきた大石から渡辺が執筆のバトンを引き継いで、過去10回の考察を振り返り、その意義について検討する。そして、それらを統合して見えてくる点についても書き進めていきたい。 つくるを緻密にわかろうとした意義私たちUCI Lab.は、2019年度に京都工芸繊維大学の櫛勝彦教授の研究室と「アイデア創造における精度アップのプロセスの可視化の研究」と題した共同研究を行った。そ

第10回.参加者が主体的であるということ

1.参加者はどうプロジェクトに臨むべきか「参加者の心構え」もプロジェクト成功の重要ポイント これまでの連載では、アイデア創造におけるプロセスの詳細や場を整えることの重要性について触れてきました。しかし当然のことながら、プロジェクトの成功に大きく影響するのは「参加者」の存在です。そこで、私(大石)のパートの最後は「参加者」にフォーカスを当てたいと思います。 さて、今回のアイデア創造プロジェクトでは、京都工芸繊維大学 櫛研究室の学生及び、大学院生に参加してもらいました。 もし

第9回.動画を用いるということ

1.動画を使ってみて考えたこと なぜアイデア創造のプロセスで動画を使うのか 私たちUCI Lab.がアイデア創造を行う場合、最終的な成果物(アウトプット)として『コンセプトシート』や『UXストーリー』といったものを制作し ます。 ●コンセプトシート例 ●UXストーリー例 そして被験者の方にアイデアを評価してもらう際は、『コンセプトシート』や試作品を用いて評価いただきます(こちらが用意した調査会場に被験者に来てもらって実施します)。 もちろん、試作品がある場合は実物を触っ

第8回.断片を集めて練り上げるということ

1.アイデアのプロセスを分ける なぜアイデアのプロセスを分けるのか 今回、全体のプロセスを振り返って興味深かったことのひとつに、アイデア創造の過程を『アイデア生成(アイデアブレスト)』『アイデア統合』という2つのプロセスに分けていたことがあります。 まず『アイデア生成』で沢山のアイデアを出した後で、その断片を統合していく(練り上げていく)のは、一見遠回りな気がします。 「わざわざプロセスを分けなくてもアイデアは出せるのでは?」「そもそもアイデアのブレストってどういうや

第7回.「未完成の段階」で検証するということ

1.「未完成の段階」で検証するとは?完成形は目指さない 「未完成の段階」で検証するとは、文字通り詳細を作りこむ前の早い段階でフィードバックをもらうということを意味しています。 今回のプロジェクトの場合は、最初の『調査』で動画を撮らせていただいた被験者の方々に『未来生活ムービー』をみせてご意見を伺った『被験者インタビュー』がそれにあたります(今回のプロセス上は『未来生活ムービー』は仕上げに当たりますが、実際の商品開発のプロセスの中では、実はまだ初期段階です。)。 私たちが日頃

第6回.メディアを変えるということ

1.メディアを変えるとは?メディアとは何を意味するのか アイデア創造において「メディアを変える」とはどういうことでしょうか。 「メディア」という言葉は、日常生活でもよく耳にすると思います。分かりやすいところだと、新聞やTV、ラジオといったものが思い浮かぶのではないでしょうか。今回は「手段」「方法」「媒体」といった意味でこの「メディア」という言葉を使用します。 さて、以前もご紹介しましたが今回のアイデア創造プロジェクトのプロセスは以下の通り。 この中の『プロトタイプ』『シナ

第5回.場を整えるということ

1.「場を整える」とはどういうことかプロジェクトは多様な個性が集まる場 プロジェクトとして進めるということは、多様なメンバーが関わってくるということです。 そこには「アイデア創造」に関わったことがあるかどうかといった経験値の差もあれば、引っ込み思案な人・社交的な人・思ったことをすぐに口に出す人・じっくり考える人といった個性による差もあるでしょう。 そのような差異を活かすため、アイデア創造の場で多用されるのがワークショップです。 ワークショップやファシリテーションに関する著

第4回.言葉選びのセンスを磨くということ

1.なぜ言葉選びにセンスが必要なのか? 言葉にこだわる先生たち 先生方に対する振り返りインタビューで、強く印象に残った発言の一つに”言葉選びにはセンスが必要”というものがあります。 「言葉選びのセンス?何を大げさな」と言われるかもしれません。 また、「センスとはどういうこと?客観的に”正しく”記述するべきなのでは?」とも思う方も多いでしょう。 ここで言いたいのは、「キャッチフレーズみたいにかっこいい言葉を使うセンスを磨きなさい」ということではありません。 では、先生方がお

第3回.プラットフォームをつくるということ

1.プラットフォームとは何か?アイデア創造におけるプラットフォーム いったい何のこと?と思われるかもしれません。 今回の場合、プラットフォームとは全体のプロセスのうち、ビデオゲームワークで作成した問題構造化MAPのことを指します。 それまでは、7家庭個別で見ていた事象を構造化しテーマの全体像を把握すると言うもの。「〇〇家の朝食」という個別のシーンから「子育て家庭の朝食」というように抽象化するワークを経たものです。 この問題構造化が意味するものは、この調査の概観の説明。 「要

第2回.ひとつひとつのプロセスを丁寧にたどるということ

1.なぜ多くのプロセスがあるのか?UCI Lab.型プロジェクトの場合 通常、私たちがアイデア創造のお仕事をいただいた際、「ほどく」「共感する」「つくる」「届ける」という4つのプロセスに基づいて設計します。 一見「なんだ4ステップか」と少なく感じるかもしれませんが、実際に設計するときにはそれぞれのプロセス内はさらに細かく分かれていたりします。 分解すると見えてくる細かなプロセス さて、今回のオモテプロジェクトですが実際のプロセスは以下の通り。 櫛研究室に依頼をした「アイ

「アイデア創造」の現場を観察して分かったこと 第1回

1.プロジェクトのはじまり「UCI Lab.のお仕事」 私が所属するUCI Lab.はクライアントであるメーカーの商品開発や新規事業開発のサポートが主な仕事です。 「ほどく:作り手の思い込みを解く」 「共感する:生活者や世の中に共感する」 「つくる:アイデアやコンセプトの創造」 「届ける:市場ポテンシャルや実現受容性等の検証」 といった4つのプロセスをクライアントと協働しながらプロジェクトとして進めています。  「事前説明の難しさ」 私たちがプロジェクトについて事前に説