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『ジャッキー・ブラウン』 ひたすら面白い映画に会いたくて 〜62本目〜

   今回ストーリーの核となるのは「運び屋」である。複雑なストーリーを豪華なキャストを用いて鮮やかに描いたクールな作品であった。

   また、中年同士の恋愛要素も加えられており、その部分だけを切り取っても美しい作品であったと思う。

62本目 : 『ジャッキー・ブラウン』(1997)

   脚本・監督:クエンティン・タランティーノ

   「MONEY EXCHANGE(現金の受け渡し)」

物語のあらすじ

 この映画は、エルモア・レナードの小説『ラム・パンチ』を基に脚本・監督をタランティーノが務めたクライムサスペンス作品である。

 ジャッキー・ブラウン(パム・グリア)は、CAをしながら、メキシコの銀行にあるオデール(サミュエル・L・ジャクソン)のお金を運ぶ「運び屋」としても働いていた。

 しかしある日、オデールの部下であるボーマンの裏切りによって彼女は警察に捕まってしまう。彼女は前科もちであり、前の職場も逮捕により失業を余儀なくされていた。彼女としてはやっとの思いで再就職できた今の職場を辞めるわけにはいかない。

 一方警察は、ジャッキーの逮捕が目的ではなく、オデールの逮捕が目的であった。そこで、警察からジャッキーにオデール逮捕に協力するならば、見逃してやるという強引な取引きを持ちかけられる。ここから物語は動き始めるのだ。

   最終的にジャッキーの取った行動とは。

登場人物たちそれぞれの利益

 この物語では、各登場人物が自己の利益を最大化するよう各々が行動する心理戦が魅力的だ。以下では、主な登場人物の利益を簡単に整理しておこう。

ジャッキー
→①レイ(マイケル・キートン)捜査官と協力してオデール逮捕に貢献することで、仕事を辞めなくて済むこと。
→②オデールとレイら警察官を出し抜き、オデールの50万ドルを全ていただくこと。

火器局のレイ捜査官
→オデールを逮捕すること。

オデール
→メキシコにある自分のお金の50万ドルをジャッキーに届けてもらうこと。もし彼女に何かあったとしても自分が捕まらずに済むこと。

   あとはじっくりと本編を観ていただきたい。

本作の魅力

 ジャッキーの着ていたCAの制服の青やオデールの着ていたジャケットの黄色。本作の登場人物たちの服装はどれも画面映えし、カラフルで何だか観ていてワクワクさせられた。「Jackie Brown」というタイトルロゴもおしゃれでかなり素敵だ。もしかして、タランティーノは黄色が好きなのか。

   また、相変わらず音楽も最高である。タランティーノ監督の作品はどれを観てもサントラがついつい欲しくなってしまう。私でもこのように思うので、劇中の音楽をリアルタイムで聴いていた年代の人たちにはもっとたまらないのだろうなといつも思う。

 そして、サミュエル・L・ジャクソンも最高に良かった。彼の個人的お気に入りシーンは、銃に関する超マニアックな知識をマシンガントークする場面である。タランティーノとの相性が抜群に良いのであろう。ハマり役であった。おちゃらけた演技から殺し屋の顔まで見せる彼の演技は必見である。

私の好きな場面

 私の好きな場面は、ロバート・デニーロ演じるルイスのマヌケっぷりが露呈してしまう次の2つの場面である。

 1つ目は、ルイスがオデールからシモーンに電話してくれと頼まれた場面で、もう1つは、彼がメラニーとジャッキーに現金を受け取りに行く場面である。

 前者では、電話を頼まれても、受話器を持ったまま何も考えていないようなぼけっとした顔をしているデニーロを見ることが出来る。その後の受話器を戻す動作もマヌケさが伝わり、相当面白いデニーロを見ることができたと思う。

 そして後者では、メラニーに仕事の出来なさを散々バカにされ、子供みたいに怒ってしまうデニーロを拝むことが出来る。映画の中で、仲間の足を引っ張りまくりのデニーロを見ることが珍しかったので新鮮で笑えるシーンの連続であった。こういう役をやってもちゃんと似合うのがすごいところだと思う。

 ロバート・デニーロは他の映画ではマフィアのドンなど仕事のできる大物を演じていることが多いにも関わらず、本作では、常に疲れ果てたマヌケな顔をしていて、小物臭漂う役を演じていたのが私には可笑しくてたまらなかった。演技の幅がとてつもなく広い。この辺りはさすがデニーロだなと。マヌケなデニーロも意外と似合っていて良かった。

   タランティーノの映画に出てくる名優たちはほんとにいつも素晴らしい演技を見せてくれる。これだからタランティーノ作品はやめられないのだ。

最後に

   タランティーノ作品にしては、比較的落ち着いた作品であった。いつものようなアクションはあまりなく淡々と話が進んでいった印象だ。

   ストーリーは複雑であるし、映画自体も結構長いのでいつものタランティーノ作品に見慣れている人にとっては少々しんどいかもしれない。しかし、集中してじっくり観ればとても面白い作品であることは間違いないので、途中であきらめずに最後まで観て欲しい。

   本作でのタランティーノの出演に気づかなかったことがとても悔しい限りだ。彼がどこで出演しているのかすぐに気づいた人がいるなら、私はその人を心から尊敬するに違いない。今回ちょっと難しすぎるよ。

予告編

↓映画『ジャッキー・ブラウン』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】Movieclips 「Jackie Brown Official Trailer # 1 - (1997) HD」)

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