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『キングダム』 ひたすら面白い映画に会いたくて 〜80本目〜

 これは本当に邦画なのか。間違いなく邦画の限界に挑んだ意欲作である。邦画でもここまでのことができる。そのことを本作は圧倒的な熱量をもって私たちに教えてくれた。出演者やスタッフたちの並々ならぬ熱い思いが、大画面のスクリーンを通して迫ってくる。全てのシーンに無駄がない。最高のキャスティング、最高のスタッフ、最高のロケ地。これらが余すことなく本作の質を高めている。マンガの実写化作品の中でも、本作のクオリティは最高峰ではないか。

『キングダム』(2019)

原作:原泰久 / 脚本:黒岩勉、佐藤信介、原泰久 / 監督:佐藤信介

【キャスト】 
信(山崎賢人)、嬴政・漂(吉沢亮)、楊端和(長澤まさみ)、河了貂(橋本環奈)、成蟜(本郷奏多)、
壁(満島真之介)、バジオウ(阿部進之介)、朱凶(深水元基)、昌文君(高嶋政宏)、左慈(坂口拓)、
騰(要潤)、王騎(大沢たかお)、タジフ(一ノ瀬ワタル)、ムタ(橋本じゅん)

「俺は いずれ 天下一の大将軍になる男だ!!」

物語の概要

 時は春秋戦国時代。これは中華西方にある「秦国」を舞台に繰り広げられる物語だ。秦国の王子である嬴政は、中華統一を成し遂げて、戦乱の世に終止符を打つという壮大な夢を抱いていた。しかし、異母弟の成蟜らの反乱により王の座を奪われてしまう。
 一方、信は「天下一の大将軍」になることを親友の漂とともに誓い合い、強くなるための努力を毎日欠かさずに続けていた。そしてある日、「漂」という存在がこの2人を引き合わせる。信は嬴政と出会い、王座奪還のために立ち上がるのだ。

 「おまえが中華統一を成し遂げる王になるのなら、俺は天下一の大将軍になる」。この作品は、信と嬴政たちが、成蟜から秦国の王座を取り返すために反乱を起こす物語である。原作の1~5巻で描かれた「王座奪還編」を見事に映像化した珠玉の1作となっている。

本作の魅力

 本作の魅力は何といっても原作の世界観や面白さを一切損ねることなく、映画ならではの見せ方で観客を楽しませてくれたことに尽きる。誰が観ても楽しむことのできる質の高い作品として仕上がっている。脚本に原泰久さんが参加しているので、原作ファンも安心して観ることができるはずだ。原さんの考えた映画オリジナルの改変は本当に素晴らしいものであった。原作の質を高水準で保つだけでなく、映画ならではの物語として完成させているのが上手すぎる。ぜひ、本編を観てこの映画オリジナルの改変を堪能してもらいたい。

 原作コミックの連載10周年を記念に製作された3分間の実写動画で信を演じていた山崎賢人に、再び白羽の矢が立った。「山崎賢人の続投が決定」。これは素直に嬉しいキャスティングであった。この実写動画を観たときに彼ほど信を上手く演じる役者はいないはずだと強く思っていたからである。本当にハマり役であったし、山崎賢人の演技はまさに信そのものであった。あそこまで信になり切れる俳優は彼しかいない。原作の信の特徴を上手く捉えて、自分の演技に見事落とし込んでいたのだ。
 また、尺の都合で省略することなど一切なく、じっくりと信と漂のエピソードを描いてくれていたのがとても嬉しかった。この2人の間に本物の友情があったということを熱い演技で私たちに見せてくれた山崎賢人と吉沢亮。彼らの素晴らしい演技に盛大な拍手を送りたい。

 「ONE OK ROCK」が本作に捧げた主題歌「Wasted Nights」も『キングダム』の世界観と見事にシンクロした素晴らしい楽曲であった。エンディングでこの曲がかかり、エンドロールが流れていく。「私は洋画を観ていたのか?」と思ったほど衝撃を受けた。日本が生み出した傑作マンガ『キングダム』の実写化作品を、その生みの国である日本がこれ以上ないほどのクオリティで世に送り出した。この事実が何よりも嬉しいことであり、とっても誇らしいことである。

私の選ぶベストアクター

 キャスティングはどの役も最高であったが、その中でも、まるでマンガの中からそのまま飛び出してきたんじゃないかと思ったほど素晴らしい演技を見せてくれた役者が3人いた。それは、嬴政役の吉沢亮、成蟜役の本郷奏太、楊端和役の長澤まさみである。彼らが身に纏うビジュアルや雰囲気には恐れ入った。まさか、原作のイメージにこれほどぴったりと当てはまる役者が日本に存在していたとは。

 まず吉沢亮は、いつも冷静で王族の気品さを保っているように見えるが、心の内には誰よりも熱い炎を宿している嬴政の魅力的なキャラを見事に演じ切ってくれた。漂との1人2役という大変な役割であっても、全くブレることのない真っすぐな演技で観客たちの感動を何度も誘った。この吉沢亮の演技力の高さには驚かされたものだ。

 次に本郷奏太は、見ている人たちをイラつかせるあの成蟜の難しい役をなんなくこなしているように見えて驚いた。喋り方や態度から、ムカつく小物野郎感がプンプン漂っていたことをよく覚えている。

 そして最後の長澤まさみは、本作品のMVPじゃないかと思うぐらい素晴らしい演技であった。特に、楊端和のアクションシーンがお気に入りだ。まさに「圧巻」の一言である。長澤まさみがとても神々しく自分の目に映り込んでいた。最高にカッコよく、そして誰よりも美しい。そんな彼女の姿に惚れ惚れしてしまったものだ。

1番好きな場面

 信と漂がお互い「天下一の大将軍」になることを目指して、何度も何度も決闘し合うシーンが大好きだ。親友がお互い共通の夢を抱いて努力するというのはいいものだなあ。私にも、周りの親しい友人たちと共に「サッカー選手」になることを目指して、何度も何度も練習や試合を積み重ねていた過去があった。しかし、時が経つにつれて、私は次第に夢よりも現実に向き合うようになっていった。幼い頃からの夢を成し遂げるために努力をし、大人になって実際にその夢を叶える人は輝いて見える。信には、このまま「天下一の大将軍」への輝かしい道を歩き続けていってほしいものだ。

おわりに

 映画館で本作の予告を観ていた時から、この作品にはワクワクさせられっぱなしであった。何回観ても胸を熱くさせられる予告であったのだ。そして、公開前から持っていたこのとてつもない私の期待を本作が裏切ることはなかった。こんなにも素晴らしい邦画を初めて映画館で観た。続編が楽しみでしょうがない。今回のように原作の5巻分ずつの物語を2時間程度に上手く落とし込めるような最高の続編を作ってほしいものだ。「おすすめの邦画作品はなに?」と友達に聞かれたときには、「『キングダム』がおすすめ!」と胸を張って言える。本当に素晴らしい作品であった。

予告編

↓映画『キングダム』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】東宝MOVIEチャンネル 映画『キングダム』予告)

(↑2020年5月29日に「金曜ロードショー」で『キングダム』が地上波初放送されるみたいなので、興味のある方はお見逃しなく!みんなで楽しみましょう♪↑)

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