「ひたすら面白い映画に会いたくて」23本目『ボウリング・フォー・コロンバイン』

23本目:『ボウリング・フォー・コロンバイン』

  『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002)

           脚本・監督:マイケル・ムーア

                  「USA and guns」

物語のあらすじ

 この映画は、1999年4月20日に発生した「コロンバイン高校銃乱射事件」を題材にマイケル・ムーアがアメリカと銃との関係について他国との比較や関係者へのインタビューを通して探求していく挑戦的な長編ドキュメンタリー映画である。

   コロンバイン事件の映像や音声は非常に生々しく、恐ろしい事件であったことが画面越しからでもひしひしと伝わってきた。なぜこんな事件が起こってしまったのか。アメリカ社会の闇を見ているようであった。

 本作はアメリカに対して批判的な作品である。しかし、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞するほど、高評価の作品であるのだ。恐らくアメリカ国民たちも自国での銃の異様さを感じているのだろう。

「ボウリング」のもつ意味

   題名にもなっているボウリング。これは当然、本編にも関係してくる。

   例えば、コロンバイン事件の犯人たち。彼らは、ボウリングを2ゲーム楽しんでから、銃乱射事件を起こしていたのだ。また、市民軍の射撃練習にもボウリングは使われている。ボウリングのピンが射撃の的として使用されていた。ボウリングのピンは人間の形と似ているからという理由らしい。

   このように銃とボウリングを結びつけるマイケル・ムーアの手法には、驚かされる。コロンバイン事件だけでなく、市民軍の射撃練習にまでボウリングが関係していたとは。本当によく見つけてきたものだ。

本作の見所

 映画の途中で挟まれるざっくりとした「アメリカの歴史」のアニメーションには笑った。だいぶ自虐的な内容であるのだが、非常にわかりやすいのだ。そこがまたアメリカ人に対する痛烈な皮肉にもなっている。アメリカの歴史を簡単にまとめると、あんな感じになるんだなと少し勉強になった。

 また、歌手のマリリン・マンソンのインタビューが非常に印象に残っている。人を見た目で判断してはいけないとはこのことだと思わせてくれる人物であった。今回の出演者の中で、彼が1番まともな考えを持っている人物だったのではないか。マリリン・マンソンのカッコよさに魅了された。どんな考え方であったか。それは本作を観てじっくりと味わってほしい。

私の1番好きな場面

 私の1番好きな場面は、「カナダに住んでいる人たちは、本当に鍵を掛けずに過ごしているのか」ということをマイケル・ムーアが実際に一軒一軒確かめに行く場面である。

 編集の都合もあるだろうが、映画の中でほぼ全ての家の鍵が空いていたという事実に驚愕した。しかも、空き巣に入られたことがあるという人も結構いるのである。しかし、彼らは断固として鍵を閉めないのだ。なんとオープンな人たちであろうか。

 アメリカなら絶対にあり得ない話である。マイケル・ムーア自身も相当驚いていたのも面白い。アメリカも異様だが、カナダはカナダで異様だなと思える場面であった。本当にカナダの人たちのオープンさには驚いたものだ。

 今のカナダの鍵事情はどうなってるかわからないので、今度カナダのことに詳しい人に聞いてみようと思う。さすがに17年も経ったら変わっているかなあ。

最後に

 マイケル・ムーアの映画を観たのは今作が初めてであった。編集やインタビュー手法に多少の強引さがあることは否めないが、観ている側からするとこれぐらい強引にやってくれる方が見応えがある。スリリングでとても面白いのだ。

   しかし、このドキュメンタリーはあくまでマイケル・ムーアの作品であるので、全ての情報を鵜呑みにしてしまうわけにはいかない。これは本当かな?と疑問が生じたところがあるならば、実際に調べて確認することが大切である。これを怠ると、偏った考え方になってしまう危険があるのだ。気をつけないといけないな。

 次は、ブッシュ政権を描いた『華氏911』を観てみよう。そしてその次はトランプ政権を描いた『華氏119』を楽しみたいな。もちろん、マイケル・ムーアの意見を全て鵜呑みにすることなく…。

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