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ディレクションは「成果物以外の全て」なので本気で実態がわかりにくい

Twitterでもこんなこと↓書いてたんですけど、とにかく一言で説明しづらいんですよ「ディレクター」という職業って。物理的に例えると、アイキャッチにお借りした超かわいい和菓子の透明部分みたいな職業というか……。

むしろ、「ディレクションはこんな仕事です!」って断言する人の仕事の内容をよくよく聞くと「それはディレクションではなくて〇〇では……」と言いたくなること数知れずという状態でして、ディレクション実務をよく知る人ほど否定神学(=ディレクションは〇〇ではない~)っぽいこと言い始める気がするんです。

実録・アラートさんが経験したディレクション仕事

実際、私のディレクション仕事って、ざっと下記くらい振れ幅ひどいんですよ。これ全部同じ人間がやってたんよ。やってる時期は違ってても。

・ひたすらヘルプ文言作る
・ゲームアイテム/ガチャのマスターデータ作る(時折プルリク送りつけてた)
・テスター
・CS対応(お問い合わせへの返事も書いてた)
・更新情報作成
・不具合対応時のとりまとめ
・ミーティングのファシリテーター
・雑誌誌面/新聞広告の校正指示
・イラストレーターさんのアートディレクション(ペンタプ買ってもらった)
・外注ディレクション(契約~支払い・指示書作成などなど)
・イベント/キャンペーン企画案~進行管理
・機能改修の企画立案~効果検証
・KPI分析(エクセルでの分析~偉い人への報告も含む)
・売上集計・レポート(ガチの直売上ね!デベロッパーサイトで見れるやつ)
・業務フローの改善提案~実行
・業務の定型化+引き継ぎ
・トラブルの仲裁・火消し
・採用面接官
・中間管理職(怒られ役)

こうやって書きだすと「まぁこれだけやってたら大体の会社で生きてけるな……?」って素で思うレベル。これらの各種業務を、チーム状況(人間関係・課題などなど)の情報収集しつつ、「うまく貢献できそう」な順で徐々に実行していくと、1年くらいすれば「居ないと困る」人になるという仕組み。

ちなみに、これらの多岐にわたる業務というのはすべて

エンジニア・デザイナーなど、開発資産を実際に作る人々がやらないこと

でもあります。

そして、この「やらない」ことというのは、配属されたチームでも比重が千差万別です。ヘルプを出すのが苦手な開発メンバーの場合は代弁する活動に精を出したり、状況によっては相手の領域の仕事に踏み込むこともありますし、開発メンバーのスペックがやたら高い場合は逆に「邪魔しない」のが重要な仕事になったりします。

なので、ディレクションをするにあたっては、所属チーム全体と、構成員間の力学をよく観察するのが最初の重要な仕事だったりするのです。

その観察ができないまま「これをやろう!」と突っ走ると大体手痛い失敗をすることになるので、ディレクターの職務領域は「あるようでない」のが実態なのです。

「ディレクター」の定義が合わなくて話がかみ合わないケースの話

ついでに言うと、「ディレクター」は大まかに下記2つにも分けることができます。

・a)解く範囲が定められた課題を実行する人
・b)課題を自ら定義し、実行する人

もちろん、絶対数はa)>b)という感じです。(採用面接するとよくわかる……)また、b)のほうが給与も上がります。

そして、不合理な真実ですが、いまのところは外注されたり、フリーランスの方にお願いするディレクション案件はa)の形式が圧倒的に多いです。課題定義から入っていただく場合は「コンサルタント」とか「プロダクトマネージャー」とかと、別の職名に変化します。

私自身の場合は、新卒の時から究極の放置プレイで育っているクチなので、a)みたいなご丁寧なお膳立てを経験することなく9年社会人をやってしまいました。

結果、必然的にb)の力を付けざるを得ずに、ディレクターにb)を求める黒めな会社を複数社エンヤコラして今に至り、そうして、b)の可能性を買われて、今までの職歴の中で一番大きくて白い会社に入ったものの、そこで初めて「意外とa)のディレクター多いな????」と衝撃の事実を知ってしまうことになるのです。

たぶん、ちゃんとした会社はa)のようにちゃんと担当業務切り分けてくれるから(実際、現職もかなりちゃんと切ってくれる)、結果的にそうなるんだろうなぁ……。

それは幸福なことだからほんと噛みしめてほしい……。でも人は幸福なところにいるとそれを所与のものだと思ってしまう……。

そういうわけで、b)の人ってそもそも実物が少ないみたいで、実際に働くb)の人を見たことがある人ってIT業界外だとなかなか出会わなかったりするのです。

私はずっとb)の人の話をしているのに、a)の人のみをディレクターだと思っている人だと「こいつ何無茶ぶりしてんの?」と結構本気ですっとぼけられることがあります。

例えば、「何を作るか」を決めるのってb)からすると根本の話なので、かなり熱を込めて事前の分析の話とかしたりするんですけど、a)の人には響かないとか。なかなか歯がゆいなぁと思っていたのですね。

じゃあ「いいディレクターってなんだ」って話なんですけど

一口に「解決能力が高い」人はいいディレクターになる素養があります。

人の話を聞いて「こうしたら?」と的確に、相手が納得する案を出せるタイプの人は、一番重要だけど教えづらいところが既にできているので、あとはwebの用語などなどがわかってくれば最強です。

解決能力がある人には、周囲の人も安心して相談事を持ち掛けられるので(そりゃそうだ、伝えたら前向きに解決してくれるもんね)、相乗効果でその人のチームの周辺に良い感じの世界が広がってくるのです。

あとは、「集中してなくても周囲の情報が勝手に入ってくる」というのも素質ありです。これが装備されていると大きなトラブルになる前に手が打ちやすくなるからです。

なんというか、個別のディレクションスキルをゲームのスキルツリーのように習得するよりも、「性格の特性」を活かしてチームに貢献しようとする意識が重要かも……というのが正直、私が仕事をして得た実感でもあります。むしろそれ以外には、「実務以外全て」を拾うディレクターの居場所ってない気がします。

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