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俺の実家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。

俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。

時代の移り変わりとは忙しないもので、あれだけ騒ぎになったオリンピックの延期問題についても内閣府が現金ばらまきトラックを巡回させたことで収束に向かい、新型コロナもスーパードクターKとブラックジャックとザ・シェフがなんとかしたらしい。喉元過ぎればなんとやらの国民どもは半年後に迫ったオリンピック開催を楽しみにしている。

半年前はそれなりに大変だった。オリンピックが一年間の延期をしたことにより、日本中が大混乱、自粛ムードが吹き荒れ聖火リレーが立ち消えになった。この混乱に乗じて聖火の奪取を試みたのが東北四県にまたがるカルト教団「芋煮会」だ。

「聖なる芋を捧げよ!!」をスローガンに聖火リレーのスタート地点である福島県に北から芋煮会が攻め込み始めた。少し遅れて南からは「日本和牛協会」がやってきた。和牛に火をつけて走り回れば病原菌やお調子者は死ぬ、という主張は到底理解しかねるが、これが芋煮会ビーフ派と融合したことで一大勢力となった。

芋煮会ビーフ派が伸長すると協調していた芋煮会内部に緊張感が生まれる。ポーク派、チキン派は連合して一斉にビーフ派を攻撃。芋煮会は芋洗いのごとき内ゲバに見舞われることになる。

そして、俺の実家だ。当家は会津藩で二千年続く刀鍛冶であり古代ギリシア時代から「へパイトスの炎」を受け継ぐ家系だ。日本国政府はギリシアの炎の管理について最もふさわしい場所として俺の実家を指定したようだが、これがもう迷惑この上ない。

今日もまた芋煮どもがやってくる。最初は生き試しができることを喜んでいたが、いまはではもう首塚、耳塚、足塚、手塚で足の踏み場がないくらいだ。そろそろ聖火で焼いていかないと衛生的にも問題が出てくる。

爺ちゃんが手槍をしごく。父さんは鎖鎌を振り回し始めた。母さんがたっぷりの塩桶を用意して待っている。妹は……おいおい、今どき種子島かよ。

やれやれ、俺は【生き試し"全力疾走ビーフポーク二つ胴唐竹割り"カリバー】を肩に担ぎ嘆息した。

これはなんですか?

正しい芋煮知識を身に着けよう!



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