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【UO】思い出の劇場が差し押さえられた話

自宅が腐った!!

#心に残ったゲーム  という話をさせてもらうんですが、やはり私の場合は十年以上プレイしている"世界で最も愛されたオンラインゲーム"Ultima Online(以下UO)の話を避けるわけにはいかないでしょう。とはいえこの事件は昔の話ではなく2020年の11月に発生したホヤホヤの出来事です。

(画像:差し押さえになった自宅)

※【腐る】UOで地面に置いたアイテムが自然消滅をすること。転じて、自宅が差し押さえられて倒壊・消滅することを指す。

UOで最も有名な資産

UOでもっとも有名な資産と云えば、異世界に自宅を持てるというハウジング機能です。邸宅は立地や広さによって価値が千差万別。田舎だと広い家を持ちやすく、繁華街であれば小規模でも商用施設としては利用価値充分という、実際の不動産取引にも似た価値の浮沈があり高額現金取引(リアルマネートレード)も頻繁に行われていたという原初のオンラインRPGにして末法に到達していたという興味深い世界です。

私がハウジングに参入をしたのは、それらの狂騒も一段落をしたころ。それでもプレイヤー人口に対しては「土地」が不足しているという状態でした。たまたま極小サイズの家屋を入手することができ、やっと一国一城の主だぞ!と意気込み、稼ぎに精をだしました。(とはいえご存知の通り私は戦闘に向いておらず小銭拾いがやっとなのですが)

その時代のUO家屋不足には一つの原因がありました。
米国本土を襲ったテロ事件によりオンラインゲームへのログインが不安定化。直接間接的に被害に遭ったプレイヤーを救済するために月額プレイ料金延滞に対する自宅差し押さえが「凍結」されたのです。既存プレイヤーの資産保護が新規プレイヤーに対する住宅供給を抑制しました。家屋は証券化し富を持つものがプレイヤータウンを支配する小領主として産声を上げます。世はまさにUOコミュニティ群雄割拠時代。

家屋の価値は値上がりし、新たな人口の受け皿はない。新たなオンラインRPGが出現して人気を博し、クオータービューにしては変な角度から見下ろすUOは時代遅れとなっていきました。嗚呼、このままUOは滅びてしまうのか!

20xx年。福音「家腐り再開」

新たな家は建たず優良プレイヤーは離れ、狩場をモヒカンが支配し、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた。だが人類は死滅していなかった!!

テロ事件の落ち着きやプレイヤー人口の推移を反映してか、ついに家屋の差し押さえ=課金終了後一定期間での家屋倒壊(腐敗)が再開されたのです。家屋が倒壊することで新たな家が建築され、新規導入されたハウスカスタマイズシステムは家屋に付加価値を与える。回り始めた不動産経済はスカベンジャー的なプレイスタイル「腐り待ち」を生み出しました。

【豆知識】代表的なスカベンジャーのクラス

以下はキャラクターの戦闘スキル等に依存しないプレイヤースキルによるスカベンジャー系クラスの概要である。ソロプレイヤーは複合した要素を持つことが多い。また売却するための不動産を維持するためには月額プレイ料金が必要となる。

◆不動産屋◆
UO最古の職業。複数の土地の権利を握り高額で売りさばくことを目的としたプレイヤー。中でも隣接した土地を所有するメリットは大きく小規模物件2件を大規模家屋1件に建て替える等の錬金術を用いることができた。

◆名簿屋◆
倒壊予定家屋を発見し座標を名簿にして腐り待ち業者や不動産屋に売りさばく業者。フリーのスカベンジャーによる互助会的な動きも活発で「誰にも知られていない価値の高い家屋」の発見に多くのプレイ時間を割くプレイヤーも存在した。

◆占有屋◆
倒壊した家屋の土地に真っ先に家を建てることで土地の権利を主張する職業。土地さえ確保してしまえば不動産屋に転売するだけで利ザヤがあるため他のクラスの多くもこの職業を兼ねることがあった。大型建築が可能な土地に複数の小型ハウスが建築された場合、不動産屋はそれぞれの家に交渉を行い立ち退きをさせる必要が産まれた。また、倒壊土地に家を建てることで倒壊時のアイテム回収を最短距離で行えるというメリットもあり、そちらも強く意識された。

◆拾い屋◆
一般的な野次馬参加者。家屋が倒壊したときに敷地内に落下するアイテムのおこぼれにあずかろうとする事場泥棒の参加者達。とはいえノーリスクで一攫千金が可能であるため大型物件の場合は「祭り」としてにぎわうイベントでもあった。

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(画像:家屋倒壊時のグラフィック、この状況から目当てのアイテムを選択する技能が試される)

◆骨董屋◆
倒壊した家屋から最も価値が高いものを値踏みして持ち去る火事場泥棒の究極系。事前にリサーチを行い最も高額な証券の収まった箱や飾られている高額レアを特定する。

◆証券屋◆
職人の家の場合、大手生産者ギルドからの大口注文証券が保管されている場合がある。大口注文をこなすことで報奨として神秘的な鍛冶ハンマー等を入手することができため「自らの銘が入った世界最高の武具を生み出す」という夢を持つ生産者達がこぞって大口注文を求めた。証券は受注時点で価値が発生しており、多くは納品されることなく証券として流通したとされている。

◆ドリブラー◆
家屋内に保管されている鉱石や宝石等の重量物を専門的に持ち去るクラス。例えば鍛冶屋を営んでいたプレイヤーの家屋には大量のレア鉱石が保管されており、それを確保するだけで遊んで暮らせるため頻繁に収奪の対象となった。だが重量物はポケットに収めることができず、それを運ぶためには「拾う→一歩前の下ろす→数歩進む→拾う→一歩前の地面に下ろす」というドリブル作業が必要とされた。途中で他の業者に奪われるリスクを伴うこの作業はやがて競技化され「バッグボール」と呼ばれる公認競技と成長していった。

◆古着屋◆
UOの特徴的なシステムとして十分な腕前を持つ職人が作成したものには「銘が入る」というものがあった。中でも衣類はファッションブランドを模した銘柄やプレイヤー垂涎のファッショニスタの名前が流通する一大ムーブメントなっていた。また、その配色やコレクションはプレイヤーごとに千差万別であり、一般プレイヤーが見向きもしない衣装ケースの回収に悦びを見いだすプレイヤーもいた。

◆古書屋◆(例外的存在)
金銭的価値から最も疎外された物品が「本」である。高額レアでも実用性もない本を専門的に盗むプレイヤーはほとんど存在しなかったが、例外的にそのようなプレイヤーも存在した。プレイヤーの日記を読むことでのみ愉悦を感じるプレイヤーも存在した。(私です)

以下は、古本屋(始末屋)の顛末を描いた実話である。

自宅の多様性と大酒場時代

そんなわけで家屋が流動的になり贅を尽くしたカスタマイズハウスが隆盛を極めプレイヤーが運営するPC酒場が活発になりました。インターネットが発達途上でSNSが存在しない時代は情報交換の中心はゲーム内のやりとりでした。またロールプレイの拠点としても発展し「冒険者の宿屋に冒険者が集いクエストを受ける」という形式のセッションもよく行われていました。

自宅の雰囲気を良くするために高価なレアアイテムが取引され、吟遊詩人が訪れて冒険譚を歌い、芸能/大道芸ジャンルが花開いていく。私も吟遊演歌歌手として実績を重ね、いよいよ独立という機運が高まってきたのでした。

私設劇場のオープン

やっと本題に入ります。様々なプレイヤー酒場を回りイベントを駆けまわった私は本拠地を構えることにしました。それがLIVE HOUSE AKTO と呼ばれる私設劇場です。

立地は商業都市ルナの外周。立川でいえばシネマシティくらいの距離感の場所です。猥雑な駅チカを抜けると広めの幹線道路があり整備された街路に囲まれた落ち着いたエリアです。私設劇場では月例のイベントを開催し、多彩なゲストを呼び、無数の友人のバックアップを受けながら懸命に過ごし、ついにはUO日本公式に表彰をされる地位まで上り詰めました。(これはまた別の機会にお話をすることがあるでしょう)

その後、私はブリタニアを離れオンライン活動を縮小することになったのですが劇場はそのまま残していました。まさに心に残ったゲーム。

しかし……

その思い出の劇場が差し押さえられた

その何年もを過ごしたライブハウスが倒壊の危機に陥りました。原因はこうだ。ブリタニアへのふるさと納税をしていたクレジットカードの期限切れ。たまたまプレイ期間が開いてしまったのも間が悪かった。発見時には家屋の老朽状態は4段階目まで進行していた。残された時間は約24時間。通常、この状態になった場合は回復の手段はない。懐かしの我が家だがこのままではすべてのアイテムを朽ち果てさせてしまうことになる。

近所の図書館の大事件を繰り返すわけにはいかない。大至急、最良の立地を探しだし荷物を輸送、安全の確保が必要だ。

引越狂想曲

まず月額課金を再開し自宅の倒壊を防ぐべく王国へ嘆願を行った。運が良ければ差し押さえは取り下げられるだろう。自宅周辺の空き地を探し回る。自宅の裏の空き地、首都ブリテイン近くの空き地、見渡す限りの雪原の空き地、和風世界の空き地、空き地、空き地。

あれ、この世界にこんなに空き地って多かったっけ……。走馬灯のように住宅事情の思い出が駆け抜けたころ、ふるさと納税事務所から連絡が入った。

「納税確認されたッス。自宅の差し押さえ解除するッス」

そして納税へ

なんとかふるさと納税が間に合い、自宅の腐敗は停止された。助かった~~~!!とため息を吐きつつ、これまでの間に発見した空き地の数々に思いをはせる。今回はなんとか生き延びたが、次はないかもしれない。ふるさと納税を切らさないように注意しよう。私は長期納税証明書にサインをした。この調子ではいつまでたってもこの世界から離れられそうにない。

未来へ

今回、新たな立地を探したことで引越の虫がむくむくと頭をもたげてしまった。もっと大きくてきれいな家がいいな。自宅を建築する場合、飾りのためのアイテムが必要になるしダンジョンへ出かけてみようかな。

今回の騒動は何事も継続のためには変化が大切であるということを教えてくれた。全てのプレイヤーよ、エンターテイナーであれ。

おわりです。

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