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他人の目に写る自分のコンプレックス

私は自分の歯並びがどうしようもなくコンプレックスです。ガタガタで前歯が出ていて、叢生という文字をみただけでゾッとします。

大学生になってから、遊んだときにお互いの写真を雑誌かのように撮影するのが流行って?とても辛かったです。カメラ越しに綺麗な歯並びの友達の眩しい笑顔を見たり、人気で美人な子はみんなに撮られるのですが、自分にはカメラが向けられないことなどとても卑屈な気持ちになりました。ですがカメラを向けられても、私は美人ではないので、何気ない横顔や食べている顔などを不意に撮られるのは本当にやめてほしいと思っていました。

綺麗な人は恋人がいて、友人にも好かれ、可愛いと容姿を褒められる。美しく写真におさまり、見た人から好感を持たれる。容姿が整っていれば。

そう思っていましたが、今はそういうことじゃないと言えます。

その理由は2つほどあります。

まずは、自分が持つコンプレックスは他人にとっては取るに足らないものであること。私は恋愛経験が浅い分、女の子の友人が多かったので色々な友人がいました。胸の大きさに悩む子、身長について悩む子など女の子が持つコンプレックスは様々です。ですが共通しているのは、コンプレックスに対する思いが強ければ強いほど彼女の価値観はその部分に傾倒している気がしました。

例えば、胸が小さくて悩んでいる子はどんなに聡明で優しい性格であっても女性としての魅力は胸の大きさに左右されると思いこんでいたし、私がなりたいと思う可愛い顔の子も身長がコンプレックスで、そっくり中身だけ私と入れ替わりたいと言っていました。

かくいう私も自分の歯並びに対するコンプレックスが強すぎて、他人から見た自分の顔の印象は全てこの歯並びに集結し、醜いと思われているのではないかと怯えていました。

しかし、そんなことはありませんでした。

歯列矯正を始めて、終わりには程遠いですがやっとコンプレックスの怨念から自由になれるほどの変化をした時期に久々に会う友人と食事をしました。

しかしその友人は、私の容姿の微細な変化には気付いたものの、私の歯列矯正の変化に気づきませんでした。

歯並びは明らかに変わったのですが友人は、私の目元や輪郭の微細な変化ばかりで全く気づかなかったのです。

そこで初めて、私が思っているほど友人は私のコンプレックスに意識を向けていないということを実感しました。

二つ目に入りますが、人は自分が思っているほど容姿のみで評価を行なったり優劣をつけたりはしていません。先ほど、友人からカメラを向けられないのは容姿のせいだと思い込んでいた話をしましたが、可愛くないのは私の性格でした。

その時の私は別のことに夢中で大学の友人との付き合いがとても雑でした。ドタキャンをしたり遅刻をしたり、そのわりに課題を移させてもらったりしていました。そんな人は誰の目にも美しく写るはずがありません。逆に、良い人間性や愛らしい性格の人は、他人の目に美しく写ります。容姿の整い方ではないのです。

コンプレックスの塊だった私にはそのことがわかりませんでした。

例えば、SNSで有名なカットモデルの美しい顔とショートカットの写真よりも、勇気を出してロングヘアからショートカットにした友人の方が私には何倍も愛らしく美しく見えます。それは、友人の愛らしい性格や大好きな気持ちがそうさせるんだと思います。

星の王子さまにこんな文章があります。

「あれ、きみたちは、僕の薔薇に全然似てないや。きみたちはまだ、いてもいなくても、おんなじだ」王子さまはバラたちに言った。「誰も、きみたちをなつかせたことはなかったし、きみたちも、だれもなつかせたことはないんだ。はじめて会ったときの、キツネみたいだ。最初は他の十万のキツネと同じ、ただのキツネだったもの。でも、それからぼくたちは友だちになって、今ではこの世で一匹だけの、かけがえのないキツネなんだ」__サン=テグジュペリ「星の王子さま」

そしてキツネは王子さまに大切なことを教えます。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」忘れないでいるために、王子さまはくり返した。「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」__サン=テグジュペリ「星の王子さま」

正直な話、友人と写真を撮り合うことについて雑誌のモデル気分なの?と思って心の中で馬鹿にしていました。ですがその子たちと真摯に向き合うようになって、本当にその子たちを好きになって初めて、写真を撮る行為の中には大好きな人と楽しい瞬間を刻みたいという思いがあったことに気がつきました。

容姿だけで判断したらそんなに差はないのです。ただお互いの関係性があるからこそ美しく写り、愛情が湧いて大切な存在になるのだと思いました。

歯並びが変わったからではなく、コンプレックスや容姿などにどうしてもこだわってしまう思考を変えることができたから、私は歯列矯正をして本当に良かったと心から思います。

私のように根本からコンプレックスを解決する方法と、大好きな恋人や友人に肯定されて自分のコンプレックスを愛せるようになる方法など様々な向き合い方があると思います。どちらにしても、少しでも多くの人がコンプレックスから解放されて対人関係に前向きになれればと思います。


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