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デビルマンに惑わされ・・・


自分の人生に一番大きく影響したマンガは「デビルマン」じゃないかと思う。
たぶんその証拠に、自分で単行本を買った最初の作品がこの「デビルマン」だ。マンガとはいえ、小学生が単行本を買い揃えるのは至難の業だ。金銭面もだし、その大事なお金を握りしめ本屋に行き、小学生女子には不似合いな「デビルマンをください」と言うのは、かなりハードルが高いからだ。

本屋へ行くこと自体は、通ってたピアノ教室がその2階だったし難しくはなかった。けれど、本屋の娘は1年上と1年下でちょっとコワモテ、本屋のおじさんもあまり優しいタイプではなかった。
それでも私のデビルマンへの愛はその試練に打ち勝った!
ある日、私は手の届かない上の本棚に陳列されていた「デビルマン」を指さし「あの本をください」と、とうとう言ったのだったけれど・・・

さて、そのデビルマン。皆さんが連想するのは「デビール!」と叫ぶ東映動画アニメ「デビルマン」かもしれない。自分もたぶん最初はそれだった。最近、女性アニメーターの半生を題材としたNHK朝ドラ「なつぞら」で主人公が手掛けた「魔界の番長」のモデル作品だ。
それは知らなくても「♪あれはだれだ、だれだ、だれだ、あれはデビル、デビルマーン」というOPソング、ちょっと黄昏た感じの「♪誰も知らない知られちゃいけない~、デビルマンが誰なのか~」というEDソングなら知ってる人も多いかも。これらはなんと昭和を代表する作詞家・阿久悠氏が手掛けている。
このアニメ、夜8時半からの30分放映という珍しいもので、たしかあの頃小学5年生だった自分も、家族と一緒にこれを見ていた。
ちょっとワルだけど、彼女の為に命をかける一途な主人公のデビルマン=不動明君はカッコよく魅力的だったw 
でも原作の内容は、TV以上に私には衝撃的だった。

永井豪氏による「デビルマン」の原作は”週刊少年マガジン”で連載されていた。
当時、我が家はその"少年マガジン"をとっていた(※"とる"というのは、町の書店に注文し、毎週家に届けてもらう当時のシステム)。記憶は定かではないが、"週刊マーガレット"をとっていたのに、いつだか"少年マガジン"に切り替わっていて~多分、4つ年上の兄の謀略によるものだろう~、その連載マンガの「デビルマン」はTVアニメ版とはまるっと違っていた!
その内容は、小学生の知っていた世界の天と地とがひっくり返るぐらい衝撃的なものだったのだ。

TV版では、氷河の中から目覚めたデーモン(悪魔)族のデビルマンが不動明の体を乗っ取るが、人間の少女・美紀を愛し、デーモン族を裏切る。そんな彼を倒すべく次々とデーモン族が送られ毎回戦う、という話だ。構造としては悪の団体を裏切り抜け出し戦う仮面ライダーやカムイ外伝の忍者と同じ昭和なヒーローだ。

マンガの方も大まかな設定は同じだけれど、絵柄も劇画チックで内容も激しくディープで、人間とデーモン族それぞれの心理的な葛藤もあって・・・で、とにかく子供には相当に衝撃的だったのだ。
なによりアニメにはない飛鳥了というクールなイケメンキャラの存在が大きい。エヴァで言うなら渚カヲル君的なキーマンなのだけど・・・原作読んでない人の妨げとなるので全部語るのはやめとこう。

さらに単行本を買う決意をしたのは、原作の最初を読んでなかったからかもしれない。「ベルばら」がマーガレットで始まった頃だけ覚えてるので、その後マガジンに移行したと思われ・・・で、私は貯めたお小遣いを握りしめ、意を決し本屋に行ったのだった。
かくしてやっと手に入れた「デビルマン」の第一巻。
家に帰り着くなり、私はその本を開いた・・・だけど私はそこで思わぬ事実に直面した!
「ち、ちがう!!」

その漫画は少年マガジンに掲載の永井豪氏が描いたマンガではなかった!
絵も話も違う・・・どうやらTVアニメの「デビルマン」をマンガに描いた作品のようだった。
良く見るとその作品の作者名も"蛭田充"と書かれていて、発行しているのもマガジンの講談社ではなく秋田書店だった。
まさか別の「デビルマン」のマンガがあるなんて・・・
とはいえ「この本は違うで取り替えて下さい」だなんて言う度胸も、すぐにホンモノの「デビルマン」をさらに買う資金力も小学5年生にはなくて、その日はどんより落ち込んでいたと思う。

やっと次のお小遣いをもらった私は、こんどこそ念願の"ホンモノ"の「デビルマン」を買った!
そして嬉々として私は、それを学校に持って行き、みせびらかした。
学校ではアニメの"デビルマン"は人気があり、何人かの男子が読ませてくれと寄ってきたので、私は良い気分で、ホンモノの「デビルマン」の本を貸してあげた。
だけど読み終えたその男子は私に言ったのだ。
「アニメより絵がキタナイ」
え・・・・
当時、まだ控えめで大人しかった自分は(←ホント)『これはキタナイのではなく迫力のある絵なのだ』と言い返せもせず、絶句するしかなかった・・・

まあそんな事を言われたにしても、そうして買い揃えた「デビルマン」全5巻は、その後の私にとって大切な存在で、何度も読み返した宝物だった。
週刊少年マガジンで最終話を読んだ時の衝撃は今も忘れられない・・・
世で言われてる"善"とか"悪"って絶対的なものではないんだ、と、当時小学生の私の心に刻み込まれた。
その後進んだ中学で「デビルマン」等の永井豪作品や水島新司作品を愛する友人と出会い、今も変らず付き合いは続いている。それもこのマンガと出会ったお蔭なので、やはりこの作品には感謝しかない。
あれだけの覚悟で買ったもう一つの「デビルマン」も、捨てる事が出来ず、今でも私の本棚に仲良く並んでいる。

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さらに後日談がある。
久々に再会した小学校時代の友人U子とM君の男女2名。
2人とは別々に再会し話している時、二人は同じように私から「デビルマンを借りた」と言った。
私は貸した事すら忘れてたけど、大人になっても覚えてたなんて、やはり2人にとってもあのマンガはかなり衝撃的だったのだろう。
ちなみにその2人、どちらも地域で一番の難関高から某有名国立大学にそろって進んだけど、仲はよくない(お互い言ってる)w
そしてその後、2人がともに出席した同窓会の帰りの電車。
私と3人で酔っ払いながらエヴァンゲリオンの話をしていた・・・ヲタの魂百までも、だ。

☆資料(WIKIより)
・マンガ「デビルマン」1972年25号~1973年27号
 週刊少年マガジン 単行本全5巻 講談社
・TVアニメ「デビルマン」1972年7月8日~1973年3月31日
 全39話 NET(現TV朝日)系
・参考「ベルサイユのばら」
 1972年~1973年 週刊マーガレット

これを見ると、原作がはじまるのとほとんど変わらずアニメが始まっているのがわかる。
アニメの準備期間を考えると、原作とアニメの企画は、ほぼ同時にスタートした様子。 
しかし土曜の20:30~という不思議な時間帯の30分アニメ。
同じ時間帯には手塚治虫原作の「ミクロイドS」が同じ時間帯でやってたと記憶していて、調べたら「デビルマン」の後番組で、貴重な?東映動画制作の手塚作品。
そして主題歌はヤング101とかww(わからない人すみません)
さらにその後はあの「キューティーハニー」という、ちょっと大人なアニメの番組枠だった。

ここでは原作ばかり言及したけど、アニメも好きだ。
前述の音楽もだし、ハレンチ学園で知られる永井豪作品の代表的キャラ等をアニメには散りばめ、お茶の間の視聴者が楽しめるよう、メインライターの辻真先先生(あえて先生と言わせていただく)を中心に仕上げられてる。辻氏ご自身、この原作を愛し、よく理解した上で脚色して下さったのだと思う。まさにプロのお仕事!
そして「ベルばら」オーストリアから嫁入りした最初の方だけ覚えていて、途中から当時読んだ記憶がない自分の記憶もほぼ裏打ちされたw

※リンク
デビルマンーWIKIPEDIA 
テレビ朝日系列土曜夜8時台枠のアニメーWIKIPEDIA
嗜好と文化:第39回 辻真先さん「趣味が仕事になる」毎日新聞


これまで書いたnotoの紹介はこちら
→ インデックス https://note.com/u_ni/n/ncaae14bb6206/edit

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