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大切なものを守るためにみんなでアクションを起こす ~一般社団法人アーツシード京都 / THEATRE E9 KYOTO 福森 美紗子~

京都の今を生きるU35世代の価値観を集めたメディアです。
次期「京都市基本計画(2021-2025)」を出発点に、これからの京都、これからの社会を考えます。


2019年にオープンした「THEATRE E9 KYOTO」を運営する一般社団法人アーツシード京都で、舞台芸術とアーティストを支えている福森 美紗子(ふくもり みさこ)さん。街の劇場を支える福森さんが大切にされている価値観「# 街のみんなで支える」「# 自分の言葉を持つ強さと優しさ」「# 頭の中のカオスを大切に」 について迫ります。

───普段どういうお仕事や活動をされているのか、教えてください。

福森 美紗子(以下、福森):一般社団法人アーツシード京都が運営するTHEATRE E9 KYOTOの事務局で活動しています。事務局の人数も限られていることから、舞台の企画から調整、広報、当日の運営まで、お客様に舞台芸術を体験していただくためのほぼ全てのことをやっていますね。

活動の中では、「アートを社会と繋ぐときに、どうすれば持続可能な創造環境をつくれるか」ということを大切にしています。
アートに関わる方の多くが、好きでやっているからこそ、採算がとれなくても取り組んでいることがほとんどです。それは時として、身体にも経済的にも負担になってしまうこともあって。誰かの無理で成り立つアートから、無理のないアート活動にどうするとできるのか。その仕組みづくりに挑戦しています。

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■当たり前にあるものは、守られているから続いている

───その挑戦はどんなきっかけからはじまったのですか?

福森:学生時代に演劇に出会ったことがはじまりです。演劇も好きなのですが、それ以上に劇場全体の空間と光に魅了されたんです。夢中になって劇場に通っていましたね。
ある時、よく通っていた劇場が閉鎖されることになったんです。突然の知らせに大きなショックを受けました。劇場ってずっとあるものだと思っていたのに、なくなってしまうんだなと。
その後、他の小劇場も閉めるという話しを聞き、当たり前にあると思っているものも、守らなければ消えるんだと気付くことができました。


■大切なものがなくならないためにできること

福森:そんな時、THEATRE E9 KYOTOを立ち上げるプロジェクトの話をインターネットで知りました。私以外にも、劇場をなんとかしたいと思う街の人がいる。まずは話を聞いてみようと、当法人の代表に会い、場を守り運営する姿勢に共感し、活動を手伝いはじめました。
それから大切にしたいと思ったものは、守るために行動していきたいと思う気持ちが強くなりましたね。

劇場の設立のためには、1億円を超える大きな資金が必要だったんですが、
「京都に100年続く小劇場を」を合言葉に、地域の企業や個人の方からたくさんの支援をいただいたんです。一人ひとりの「街に劇場を」と想う気持ちと、守りたいという行動から生まれた劇場がTHEATRE E9 KYOTOなんです。

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E9内観


■わたしの言葉であるかとどうか

───今の社会に対して「違和感」を覚えることはありますか?

福森:昔はテレビやラジオなど情報発信できるメディアが限られていたと思うんですが、今はSNSをはじめとして、個人単位で発信できるようになっていますよね。
ですが、自分の言葉で発言していない人や、他の誰かの言葉に乗っかっているだけのような人に違和感を覚えてしまいます。

元々芸大で学んでいたこともあり、「自分の言葉で話しているか」ということが気になるのかもしれません。芸大は常に作品を創り続ける場だったので、自分が何を思ってどう感じているかを考え、作品を通じて発信していました。

そうした背景もあって、社会の中で「周りに合わせる方がいい」とする雰囲気や、少し変わった考えを「認めない」「受け止めない」といったことが気になりますね。

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■放つ声から自分らしさが生まれる

福森:たとえ、自分自身の芯が確立されていなくても、ありのままに自分の思いを声にして発することはできると思うんです。そして、その声を受け止めて聞くことができれば、自分の言葉で話すことが当たり前になっていくと思うんですね。

それが少しずつ重なって、自分の言葉となっていくし、受け止めた分だけ多様性が広がる。そうした表現ができる時間があると、生きていく上で強く優しくなって、楽になれると思うんです。誰かに合わせるのでなく、自分らしくいられるように。

■誰もが、自分らしい表現ができる社会へ

───自分の言葉で話せることが自分らしさにつながりますね

福森:そうですよね。その人の話していることはわからくとも、何か切実なことは伝わるように、想いは届くと思うんです。
その人自身を認め、受け止めることができる社会になって欲しいと願っています。
そのためにも、いろんな表現の実験ができる劇場をみんなで守り続けていきたいと思います。

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<インタビューを終えて>
福森さんに質問を投げかける時、「私、頭の中がカオスで、まとまったお話ができるか心配で」と話されていました。確かに、いろんなエピソードや思い、視点、思考が溢れるお話でした。しかし、インタビューを進めていくと、言葉では表すことができない、色んな一面を持った福森さんがいることに気づきました。
分かりやすく伝えられるように、情報を絞ってお話しすると、気づかないうちにその人らしさが失われているのかもしれません。
福森さんは、「頭の中のカオス=ありのままの素直な自分」があるからこそ、自分らしさをありのままに体現できているのかもしれません。

今回集まった新しい価値観は3つでした。

「# 街のみんなで支える」
「# 自分の言葉を持つ強さと優しさ」
「# 頭の中のカオスを大切に」


<福森 美紗子さんのプロフィール>
一般社団法人アーツシード京都 / THEATRE E9 KYOTO 
2019年京都市立芸術大学 美術学部 美術科 構想設計専攻卒業。
在学中より、劇場建設のための”プロジェクトTHEATRE E9 KYOTO”に参加。
劇場開館後はE9の事務局として、劇場運営や主催事業の企画・制作を行う。
また2018年より劇団三毛猫座の制作を担当。


<福森 美紗子さん 関連URL>
一般社団法人アーツシード京都 / THEATRE E9 KYOTO 


取材・文:仲田匡志(株式会社MIYACO / フリーランス)
写真:其田 有輝也



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