見出し画像

"とめ・はね・はらい"議論から見る学校のリスクコントロール

スギ花粉がなくなってきて、楽になってきた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
ヒノキのアレルギーの方はまだまだですよね。新年度が始まるにあたって相当忙しい学校関係者の方など、大変ですけどなんとか乗り越える感じでやっていけたらと。

議論となった"とめ・はね・はらい"の減点問題

そんな中ですが、先週、以下の記事が少し話題になっていました。

この話題、忘れたころに定期的に出てくる気がします。かけ算の順序問題と同じ感じ。
「こういうチマチマしたことより重要なことがあるだろ」「発達段階に応じて対応して欲しい」などの意見もあれば「とめはねはらいを理解した方が字が綺麗になる」「基本をしっかり身に着けることが重要」なども。

学校教育は「一億総評論家」とも言われますが、誰もが通ってきた道なので、ほとんどの人が経験に基づく持論を持っていたりします。
この辺りが先生の働き方を苦しくし、巡り巡って児童生徒の学びを阻害していそうだな、と常々感じていたりもしており、今日はその辺りを書いてみます。

採点基準に保護者への説明しやすさを考慮する

妻は小学校で理科専の先生をしていますが、自宅で単元テストのマルつけなんかもやっていたりしますが、〇△×の基準を考えることに結構苦慮しています。

いわゆる事業者から購入するカラーテストの場合、採点基準も一緒に提供されます。ただそれはあくまで参考なので、妻はどういう授業を行ったのか、どんな力を身に着けて欲しかったのか、によって採点基準を設定し、その子にとって有益なフィードバックをしよう、と悩んでいます。

上記は真っ当な悩みなのでストレスにはならないようですが、それに加えて採点結果で保護者からクレームがこないようにしよう・クレームがきても分かりやすく説明できる採点基準にしよう、という考慮まで考えているようでした。

図解すると以下みたいな感じでしょうか。

ベン図

ピンクチョークで書きましたが「ムチャいうなよ...。」というのが個人的な感想です。左側の円だけに特化して仕事したいですよね...。
校長はこれの学校経営版を考えているわけで、針の穴を通す・綱を渡る仕事って感じがします...。

保護者の意見が負のスパイラルを産む(こともある)

今回のとめ・はね・はらいのことについて書いている保護者は、良識のある方の意見に見えますが、必ずしもそういう状況ばかりではないのだと思います。正論だったとしても、状況が悪くなることもあるんじゃないでしょうか。

娘が小学校のころ、学級崩壊に近い状態になったことがあります。自分の娘が関わる事なのに他人事のようなのですが、傍から見る限りでは、保護者の声がその状態をさらに悪化させる要因になっていました。

久しぶりに懐かしの悪循環ジェネレータを使うとこんな感じでしょうか。

画像2

その時の保護者の一部は、上記に近い感じでヒートアップしていきました。
マズイのは、保護者間のSNSでイライラがどんどん広がっていくこと。
そして極めつけは、保護者が子供に「先生がイマイチだ」などと言い始めてしまうことです。
そうなると、子供は先生をさらに軽んじるようになり、手が付けられない負のスパイラルに入り始めます。

息子の〇年生は一生に1回なのにあんまりだ!!」という保護者を横目に、私はちょっと感覚がズレているので「学級崩壊の経験もそうできるものではないのでアリかも」とか思っていたりしました(ダメ親)。
こんあ構造になっている、ということを(無情にも)娘に解説したりして、娘は結構悩んだりしていました(ごめんね)。
まあそれも良い経験ということで(無反省)。

ただ、校長先生含め、学校はもの凄いリソースをかけて対処していました。翌年度、従来は担任は持ち上がりだったのですが、(良くあるパターンかと思いますが)学級経営力の高い先生に交代したりしていました。
当初の原因は違うかもしれませんが、保護者とのコミュニケーションによって状態悪化が加速していったのは間違いなさそうで、ここのリスクコントロールは本当に気を遣わないといけないのだと改めて感じた事象でした。

そもそも採点基準は平等であるべきなのか?

話戻って採点の話ですが、ちなみに今回の「とめ・はね・はらい」については、平成28年2月29日に文化庁から「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」が出ており

骨組みが過不足なく読み取れ,その文字であると判別できれば,誤りとはしません。

と明確に書かれています。
ではこの指針によって、とめ・はね・はらいの減点は間違っているのか、というと必ずしもそうではなく、評価の目的に依存してくるようです。
というのも、上記の引用の次頁であるP78には以下のような記載もあります。

漢字の字体・字形に関する評価には,正誤以外にも「整っているか」,「美しいか」,「丁寧に書かれているか」といった観点があります。当指針は,そういった観点に基づいて指導することを改めるよう求めるものではありません。また,漢字を習得する段階では,発達の段階に応じた配慮等から,ある字形を推奨し,細かな部分にまで注意しながら書くことが有効な場合があるでしょう。

つまりは、その先生がどのような意図で評価をしているのか、によって〇や×の意味が変わってくるということです。
ここまで説明する先生は稀でしょうし、理解する保護者も稀だと思うのですが、、、
本来はその専門性を先生が有しており、それを保護者が信頼して委ねる、となれば最もそれぞれの負荷が少なくなるのですが、、
1億総評論家ではなく、なんとかそういう世界観に持っていきたいな、と思っています...。

ちなみに私は採点基準は平等でなくても良い派です。同じ回答内容であっても、人によって〇だったり×であっても良いんじゃね、とすら思っています。

同僚と仕事をしていても、新入社員と中堅社員が同じ成果をあげたとしても、私は同様のフィードバックはしません。
これだと肩書で対応変えている感じなのでミスリードですが、、人によって背景も特性も違うため、可能な限りその人に合わせ、次に繋がるようなフィードバックをするよう心掛けています(きちんとできているかは横に置いて)。

人生を左右するテストのようなものだと意見は変わりますが、日々の成果を確認し、その結果からアセスメントをし、さらに成長してもらうことが目的であれば、その目的に合致していれば他の人と採点基準が違うことはむしろ望ましいことなんじゃないでしょうか。
実現が難しい絵空事かもですが、GIGAスクールを通じた「個別最適化した学び」の一端もここにあるのだと思います。

この手の話の反論として、公教育の平等性を訴える際に「教育基本法 第4条 教育の機会均等」が用いられることがあります。が、読んでみると意外に良いことが書いてあります(超失礼)。

(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。

すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならない、のです。
教育基本法によると、個別最適化しないといけない。

つまりは一斉授業連発は法令違反ということですかね(極論)。GIGAスクール、頑張んないといけないっす。

GIGAスクールの日常化もリスクコントロールがカギ

そしていつものトーンに戻して、GIGAスクールの日常活用への道に。
先週、話題の30代校長の蓑手さんと打合せしましたが、学校としていかにリスクコントロールをするのかが、GIGAスクールの日常活用への道筋になるのでは、という会話をしていました。

巷では「とにかく自由に使える環境を」と訴え、ガチガチ設定の環境を攻撃するような風潮があります。
私もガチガチ設定はぶっ壊したい派ではありますが、ガチガチとは言わないまでも、その学校や学年、クラスの状態に合わせて、ルールやシステムの設定が行われるのが良いとも思っています。

こんな言い方は好きではないですが、全く統制の利かないクラスで自由に活用できる端末が使い放題となるのは、多くの先生にとっては恐怖だと思います(むしろ落ち着く可能性も0ではないけど)。
いくつかの道筋やパターンを例示し、学校や先生に委ねることが、理想論かもですが、リスクコントロールがなされていくのではないでしょうか。

特に保護者との対話はとても重要で、保護者とのコミュニケーションの状態に応じて、段階的に緩めていくような在り方も成功の近道のように感じています。
この辺りはどこかで蓑手先生にも実際の運用をどうしていくと良いのか、改めて話を聞いてみようかな。

おわりに...。保護者とのコミュニケーションのデジタル化を。

リスクコントロールついでですが、GIGAスクールを進めておきながら、保護者とのコミュニケーションがアナログでは説得力がありません。
以前も書きましたが、4/1からまなびポケットでは保護者からの出欠連絡をデジタル化する機能を無償提供しています。

画像3

まずは出欠連絡から始めますが、今後スピード感をもってさらなる保護者機能を充実させていく予定です。新年度になって、保護者とのコミュニケーションをどうしようか、と悩んでいる自治体・学校の方は、是非ご連絡くださいー。

ちなみに、私は「とめはね」と言ったら最初に「とめはねっ!」が浮かぶタチです。書写の授業の前に、全巻読んだ方が良いっすね。

この漫画で知った明末の書家:傅山の「寧ろ拙なるも巧なるなかれ」は、自分の仕事のポリシーの1つでもあります。

「寧ろ拙なるも巧なるなかれ。醜なるも媚なるなかれ。支離なるも軽滑なるなかれ。直率なるも安排なるなかれ。」の気持ちで、今後も書いてみます。

ではまたー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?