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フリーライターはビジネス書を読まない(16)

突然の打ち切り

話は前回から2カ月後に飛ぶ。
初めて書いたインタビュー原稿は、当然というべきか、修正を指示された。
「本人の話しことばがそのまま出ているから、もうちょっと客観的に書いてください」というていどで、構成と展開はこれでOKということだった。
その後、インタビュー音声も2回受け取って、1冊分の原稿が出来上がった。

文章に書いたらたった4行が、この2カ月間の出来事のすべてだった。

ある日、
「原稿料の半額を前払いしますから、請求書を送ってください」
編プロの社長からメールが来て、金額も指定されていた。

その後、来るだろうと思って待っている修正の指示が来ない。まさか、またこのまま本になるのでは?

心配になりはじめた頃に、社長からメールが来た。
証券アナリストに原稿を渡してチェックしてもらっていて、細かい修正は編プロで対応していること。ところが修正の指示がコロコロ変わって、修正を済ませた個所に再び修正を指示してくるなど、なかなか進まない。証券アナリストからは、とうとう返事が来なくなって、出版社も編プロも対応に苦慮しているという。

「初めて本を出す人は思い入れがが強すぎて、こいうことはありがちなんですけどね」と社長はいい、最悪の場合はこの企画から手を引くかもしれないことも考えているという。理由は「長引くと採算が取れなくなるから」で、編プロ経営も商売なら仕方のないことだった。

それから間もなく、編プロは本当に企画から手を引いた。

その後、出版社だけで進めたのか、ほかの編プロか制作会社が引き継いだかは知らない。あの証券アナリストの名で検索しても、著作物はヒットしなかった。

原稿料の半額をもらっていたのが、不幸中の幸いだった。丸損ではない。
今思えば、半額を請求してくださいといってきたとき、編プロの社長は進捗が思わしくないことを察知して、こうなることを予測していたんじゃないだろうか。

こうして、初めてのインタビューは世に出ることなく終わってしまったが、この経験が後々いろんな場面で活きることになる。

(つづく)

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