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少年野球で子どもたちの笑顔を増やすためにやったこと

今年から少年野球(小学生なので、正確には学童野球)に携わっています。

自分の子どもが野球を始めたわけではなく「子どもの野球環境をとりまく問題について何かできないか。」と思い「そのためにも現状を知りたい。現場を経験したい。」と考えたことがキッカケです。現在は、自宅近くのチームに入れてもらい、コーチとして毎週の活動に参加しています。

現場で最初にやりたかったのは「野球というスポーツを楽しんでもらいたい!」ということ。技術うんぬんよりも、まずは野球を好きになってほしい、せっかくやるなら楽しくあってほしい、という思いです。コーチとしての最初の目標は「子どもたちの笑顔を増やす」になりました。

noteを書くにあたって

選手としての経験は小学校から社会人クラブチームまで20年ほどありましたが、指導経験はなかったので、試行錯誤の繰り返しでした。

この試行錯誤が実際に効果があったのか。「楽しさ」というものを正確に測ることは難しいですが、主観として「子どもたち、楽しそうだな」と感じる場面が最近は増えてきました。
また、チームの監督・親御さん・練習試合の対戦相手のコーチからも同様の評価をいただけたことは、少し自信になっています。
(対戦相手のコーチの方は、試合前のアップを見て、楽しそうだと感じてくれたみたいです。ありがとうございます。)

前置きが長くなりましたが、多少なりとも成果が出た(と思われる)「子どもたちが野球を楽しむ」ためにやってきたことを、まとめてみたいと思います。すべての子ども・チームに当てはまる手段・方法はないと思っていますが、何かの一助になれば幸いです。

要約

・笑顔になる要因を探し、笑顔がすくない場面にその要因をあてはめてみた。
・要因は大きく分けると2つ:ゲーム性と自由さ(権限・主導権がある)
・コーチングの考え方はあらゆる場面で重要と感じた。

1. 観察と問いかけ

チームに携わって最初に実践したことは子どもについて知ることです。笑顔を増やそうとするターゲットである子どものことを、十分に理解するのは必要不可欠と考えました。「昔の子どもと今の子どもは違う」という理由ももちろんありますが、そもそもどの時代であっても子どもは1人1人違う(個性がある)と思っています。

実践したのは観察問いかけです。

・観察
子どもたちが笑顔になるのはどんなときだろう。逆に、笑顔がなくなるのは?なんの練習・活動をしているときなのか。監督・コーチ・仲間からの言葉かけにどんな反応をするのか。など。

「子どもたちと接する時間を持ちたい!」という気持ちをぐっとこらえて観察に徹しました。あえて子どもから離れて遠くから観察することもしてみましたが、より全体が見渡せていいなと感じました。(ボール拾いのときに外野の一番うしろにいる、など)

・問いかけ
観察を続けていると「こういうときに楽しいんじゃないかな?」という仮説が生まれてきます。この仮説をより確かなものにするため、またなぜ楽しいのか要因を探るために子どもたちに「問いかけ」をしました。注意したのは以下です。

・回答が「Yes or No」でおわる質問ではなく、会話がうまれる問いかけにする。(「オープンクエスチョン」と言われています。)
・大人の考えをおしつけず、回答をその場で否定しない。すべて受け入れる。
・子どもが話しやすい環境を作る(大人がしゃがんで高さを合わせる、内容によっては1対1の状況を作ってあげる、、etc)

☓ ゲーム形式の練習は、楽しかった?
○ ゲーム形式の練習は、どうだった?

【ポイント】
・楽しいという仮説を押し付けない
・「どうだった?」の問いかけから、子どもの言葉で感想を表現してもらう
☓ (ノックのときは下を向いている。守備が嫌いなんだな。)
○ どうして下を向いているの? -> (返答に対してさらに) -> なんで?

【ポイント】
・要因を観察者の自己解決にしない。
・なぜ?どうして?を繰り返して原因を深掘りしていく。(やりすぎ注意)

観察と問いかけについては、実際におこなった試行錯誤に対する評価・検証でも有用だったと思っています。子どもたちと接する上では常用なスキルだと感じています。これからも磨いていきたいと思います。

ある程度情報がたまったところで、子どもたちの「楽しい」に関することをポジティブ/ネガティブの観点でまとめると、以下のような状況でした。

ポジティブ:笑顔がいっぱい!子どもたちみんなが楽しそう!
 ・ゲーム性があること(紅白戦やティーボールゲーム、競争など)
 ・休憩時間の自由な時間で遊んでいるとき
ネガティブ:笑顔がない。大人から「元気だせよ」と頻繁に言われる。
 ・ウォーミングアップ
 ・ボール回し

2. ゲーム性を持たせる

チームでの最初のアクションとして、ポジティブ要素だった「ゲーム性がある」を、ネガティブ要素の「ウォーミングアップ」と「ボール回し」に適応することをしました。

・アイテムを使う
ウォーミングアップへの適応として最初に実践しました。新しいアイテムは子どもの好奇心をくすぐる意味でも効果を発揮してくれたと思います。

【マーカーコーン(画像)】... 塁間の距離でダッシュをしていましたが、ベースの延長線上としていたものをマーカーコーンにしました。距離は同じですが、コーンを置くだけでも「なんだろう!?」という目で見てくれました。

【笛】 ... 手をたたくなどしていたものを笛に。これもそれだけですが、今までに無いもの、という新鮮さがカギだったのかも。

【ラダー】 ... 最もわかりやすいかもしれません。アジリティ系パフォーマンスの向上にも繋がると思います。

・これできるかな? と レベルアップ
「できそうでできないもの」を調べてどんどんぶつけました。そしてそれができたら同じような動作で少しレベルを上げて...という具合です。新しいステージの提供と、ステージクリアを繰り返せるように。ポイントは「できそうでできないもの」をどれだけ質よく提供できるかだと思います。(YouTubeやSNSでひたすら調べてバリエーションを増やしました)

【コーディネーショントレーニング(Google検索)】... 運動神経を向上する効果があるといわれるものです。トレーニングという言葉がついていますが、簡易に実践できる動きも多々あります。YouTube検索では体育館やサッカーなど他スポーツでの事例が多いですが、スポーツによる違いはないと思っています。ウォーミングアップでできる動きをピックアップして導入しました。

【体つくり運動(Google検索)】... 上述コーディネーションと似ていますが、主に小学校の体育で使われることの多い言葉です。コーディネーションと同様に、導入できるものをピックアップしました。

アイテムにも記載のあるラダーをつかったステップワークもコーディネーションに含まれると思っています。これらの運動はウォーミングアップの時間をみながら、許す限り導入をしています。(準備体操のあと、ダッシュの前、休憩から練習に入るとき ... etc)

また、どんなコーディネーションをするか・ラダーのステップワークは何をするか、は毎回変えています。「笑顔になったものは毎回やる」「全員ができなかった動きはやめるorレベルを落とす」などチューニングをして「できそうでできないもの」の質を担保するようにしています。

・時間をはかる
ボール回しでは、まず時間を測るようにしてみました。(前述で触れませんでしたが、ストップウォッチも良いアイテムだと思います。低学年だと、ストップウォッチ自体に興味津津だったり)

時間をはかる(記録をつける)=> よりよい記録をだしたい!、というモチベーションに繋がるのでしょうか。「がんばれば新記録がでそう」という状況であることが重要かもしれない、とも感じています。

以下の3点に注意して導入しました。

【周回数を調整する】... 長すぎるとダレる。学年にもよりますがエラーもそれなりにあると思います。自チームでは時計まわり・反時計まわりをそれぞれ2周にしました。

【1日に複数回チャレンジする】... 1回目の記録を2回目に上回れるように。1回目で新記録がでたらそれで終わりにします。

【作戦会議の時間を作る】 ... 大人が介入しないことがポイントだと思います。子どもたちの作戦(選択)を尊重します。(後述)

3. 権限委譲:子どもの選択を尊重する

もう1つのポジティブ要素である「休憩時間の自由な時間で遊んでいるとき」も練習に適応したいと思います。

ちなみにこの「遊んでいるとき」は、悔しいくらい子どもたちは楽しそうです。鬼ごっこや遊具で遊ぶ子だけでなく、野球に関連したことをやっている子も含めて、みんな楽しそうです。(壁当てしたり、ピッチングしたり、子どもたちだけでノックしたり)

自由な時間に負けないように、子どもに権限(≒主導権)を与えたい。子どもが選択した考え・行動をできる限り尊重・承認してあげることが大事だと考えました。

・指示をしない
指示を一切しない、というのは小学生ではとても困難だと思います。ですが、観察をしていると、また自分の言葉を振り返ると、指示をやめることで子どもたちに選択肢を与えられる場面は多くありました。逆に、他者からの観察や内省の習慣がないと、指示をしていることにすら気づかなかったかもしれません。

代表的なものは「声だしていこう / 声だせ」だと思います。この言葉に対して子どもたちが出す声は「こーい!」「おーい!」などの場を盛り上げる声で、一過性であることが多かったです。これに対しては、自然と声が出したくなるような仕掛けを練習に組み込むことを考えました。

ブラジル体操】 ... YouTubeでコーディネーションを調べているときに、サッカーのウォーミングアップとして関連動画に出てきたことがきっかけです。これを参考に、ウォーミングアップの中で「1,2,3...の掛け声をみんなであわせられるかな?」としてみました。(ゲーム性を持たせるとも関連します。)

【ボール回し:フリー】 ... 「どこに投げてもOK」の時間を作りました。「声出さないとボールこないよ」とは言わず、自分がボール回しに入り、ボールを投げる前に声の出ている場所を探すような仕草をいれてみました。子どもたちも「声を出さなきゃ」と分かってはいるんだと思います。仕草をいれるだけで「へい!」「こっち!」と声を出してくれました。

他に「しっかり投げろ」といった「しっかり・ちゃんと・きちんと」といった曖昧な言葉で動作を指示してしまうことも多いと思います。

これは主に野球のプレーに対して、とりわけ何かミスがあったときに言ってしまいがちです。そもそもプレーをしているのは子どもであり(子どもに主導権があり)この結果に対して周囲がとやかくいう必要はないと思っています。それでも大人には「うまくなってほしい」という背景があると思っています。

【ロジカルに説明する】 ... 子どもがわかる言葉を使うのは前提です。だから難しい、よって曖昧な言葉に逃げてしまうのだと思います。「同じ言葉を大人にいったときに納得できるか」という観点を大事にしました。例えばゴルフを始めて、コーチから「ドライバー曲がってるよ。ちゃんとまっすぐ打て」と言われても納得できないと思います。

【現状を認める】 ... 「今はまだできない」を認めてあげることが大事だと思います。例えば送球エラーをしてしまった際に「ちゃんと投げろ」というのではなく「ちゃんと」の定義を明確にしたうえで投げれるようになるための練習を考え、提案してあげるようにします。

・選択を尊重するうえで考えること
選択を尊重・承認するといっても、全部が全部できないと思います。

ピッチャーをやっている子が「投げれる!投げたい!」と言っても、投げすぎて怪我をしないようにしなければなりません。
学年によっては練習に飽きてしまい遊んでしまうこともあると思います。全体で動きたいときに例外な動きの選択を尊重していては、チーム・組織としての動きができなくなってしまいます。

すべての選択を尊重するのは不可能だと思うので、尊重できるような選択ができるように、事前にアクションをとることが大事だと思いました。

【ゴールを一緒に考える】 ... ゴールは選択の基準となります。ポイントは、ゴールを大人が決めず、子どもと一緒に考え、子どもの選択により決めることだと思います。一緒に考えるのは、子どもが知らない知識・リスクを提供できることと、決めたゴールをその場で共有できることにあると実感しています。自分で決めたと思ってくれれば、責任も携わってくると思います。

4. コーチング:向き合うよりも、共に成長する

ポジティブ要素をどう落とし込むかを考えてきましたが、全てに共通するものにコーチングの考え方があると思っています。

学童野球においては、「コーチ」が子どもたちに野球を教えることを「コーチング」と表現することが多いと思います。本稿で言うコーチングは、本来の意味のコーチングであり、ティーチングとは明確に分けて考えています。
Google検索:コーチング ティーチング

コーチングでは、大人と子どもの関係は対等です。

【会話する位置】... 子どもと会話するとき、正面に立つことはできるだけ避け、斜め(or 横)に位置することを心がけました。加えて重複しますが、しゃがんで目線を合わせることも意識しました。とにかく子どもと同じものをみて、同じ目線で会話をします。

【一緒に悩む】 ... 野球のプレーにおいて、子どもたちができないことはたくさんあります。その度に教える(ティーチングする)のは最初は必要かもしれませんが「どうしたらいいんだろう...」と一緒に考える時間をできるだけ作りました。

【認めてあげる】 ... 対等であるといいながらも、最終的には子どもが選択したことをコーチが認める、というフェーズがあると思います。子どもの選択に対して「いいね!」「やってみよう!」と言葉・態度で同意を示し承認欲求を満たしてあげることが大切だと思っています。

最後に

まとめると言いつつ、とりとめもない文章になってしまいました。最後まで読んでいただきありがとうございます。

補足ですが、冒頭にて「技術うんぬんよりも」と書きましたが、楽しむためには技術も大事な要素の1つだと思っています。ホームランを打った!ファインプレーした!試合に勝った!はいずれも楽しい(嬉しい)です。楽しみながら運動能力が向上する・野球がうまくなっていく、ということができれば理想だと思っています。

時代背景や子どもの変化にあわせて試行錯誤を続けていくことが必要不可欠だと思っています。今後も試行錯誤を繰り返し、何か事例があればアウトプットをしていきたいと思っています。

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