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SF好きなオタクにおすすめしたいミステリADV『AI:ソムニウム ファイル』レビュー

鬼才・打越鋼太郎氏が生んだ奇跡の傑作バカゲー

※本レビューにメインストーリーに関するネタバレはありませんが、
ED分岐の仕様に言及する項目があります。
そして『ダンガンロンパ』(無印)のネタバレはあります。

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どうも、瓜(うり)です。

腐女子ゲーマーは忙しい。絵も描かないといけないし、ハマってる作品のサーチもしないといけないし、同ジャンルのフォロワーさんとも交流しないといけないし、ゲームもやらないといけない。というわけで久々に暇な時間が出来たので、人生初めてゲームレビュー書いてみました。日本語で何かをちゃんと書くのも初めてなので、気になる点があればアドバイスもらえると嬉しいです。


はじめに

今回取り上げるゲームは、『AI:ソムニウム ファイルという作品だ。このゲームのシナリオライターは『Ever17』や『極限脱出シリーズ』などで有名の打越鋼太郎氏で、私自身も極限脱出シリーズで打越氏のシナリオに心奪われ(にわか)ファンになった一人なので、この作品に対してもとても期待値が高かった。

このゲームはPS4版とSwitch版もあるが、私がプレイしたのはSTEAMのPC版だ。PCに移植されたスパチュンのゲームは他にも先程述べた『極限脱出シリーズ』や『ダンガンロンパ』『絶対絶望少女』などもやってたが、どれもWASD移動とマウス操作に対応して、PC移植のクオリティに関しては文句なしの高品質。


どんなゲーム?

プレイヤーは、警視庁の特殊班に所属する刑事となり、現代の東京を舞台に連続猟奇殺人事件の捜査に当たります。ゲーム進行は、現実世界で行う捜査パートと、重要参考人の夢の世界に侵入するソムニウムパートに分かれ、プレイヤーはそれぞれを行き来しながら、事件の真相に迫っていきます。(STEAMのストアページより引用)

プレイヤーは主人公の「伊達 鍵(だて かなめ)」として事件を追っていくが、この主人公自身も謎だらけの人物。ある時、記憶喪失した彼は警察の秘密部隊「ABIS」に拾われ、かれこれ6年間ABISで働くことになる。

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さらに伊達の左目には「アイボゥ」という名の人工知能を搭載してる義眼「AI-Ball」を装着しており、このアイボゥのおかげで、伊達は捜査時に左目を使うだけで物を透視できたり、常人が見えない遠方を見ることもできる。さらにインターネットも繋いでるので、知らないことがあれば瞬時に調べてくれる。便利すぎる。

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普段のアイボゥは目玉として伊達の左眼窩にいるが、実は自由に移動することも可能で、眼窩から抜け出すときは熊ちゃんみたいな見た目になる。かわいい。

このゲームは、伊達を操作して現実世界で事件を調査する「捜査パート」と、アイボゥを操作して夢の中を調査する「ソムニウムパート」の2パートに分かれており、現実と夢の手がかりを合わせて事件の真相を探すゲーム。


捜査パート

特筆すべき点はなく、割とオーソドックスで一般的なADVゲーによくある捜査パート。特に事件と関係ないオブジェクトを調査するときにキャラがちょっと面白いやり取りをするのも『逆転裁判』と似てると思った。

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調査画面で人物にカーソル合わせると話かけられる。
特に意味のないネタ選択肢選ぶのが楽しい。

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このごちゃごちゃ感も逆転裁判の成歩堂なんでも事務所を彷彿させる。


ソムニウムパート

主人公の伊達を操作して現実世界を調査する捜査パートとは別に、夢の中を探索する「ソムニウムパート」も物語の要所に挟まれている。「Psync装置」と呼ばれる特殊な装置で対象の脳内に入り込み、その人の「夢」の中で手がかりを探す。

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現実の捜査パートでは伊達の一人称視点となっており、現場を歩き回ることはできないが、このソムニウムパートでは相棒のアイボゥを操作し、夢の中を歩き回って色々アクションを起こして進んでいく

夢に入り込む目的は、嘘つきの嘘を暴くことや、心を閉ざしてる者の記憶を覗くなど様々で、ゲーム中のソムニウムパートではプレイヤーの目的を明確化しており、すべての「メンタルロック」を解除すれば該当パートクリアとなる

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左のバーは現在の進行度を示しており、一番下まで進めばクリア。

そしてこのソムニウムパートでは、ただ調査するだけでなく、色んなオブジェクトに対して様々なアクションを起こす必要があるが、夢の中なので、例えば電気をつけると鍵が開くとか、現実世界ではありえないことが起こりうるので、一見関係ないアクションでも実は謎を解く鍵となる可能性もある。夢の中がわからん。

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カゴを調査すると色んなアクションができる。


+洗練されたUI・便利なシステム・オシャレな演出

私はゲームやるとき一番重視する要素はUIなので、UIが良いゲームに目がない!!そしてこの作品のUIが実際めちゃくちゃ良い。ムービー中以外ほとんどの場面ではメインメニューを開けるし、いつでもセーブできる。メインメニューのアクセスも快適で速い。ADV周りのスキップ、オート、バックログ機能ももちろん一通り完備。何回も見るイベントのムービーシーンもスキップボタンで早送りできるので活用しがち。

そしてこのフローチャートが便利すぎる

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このゲームのフローチャートはその日の最初に飛べるだけでなく、なんとパートごとに細かいポイントへも飛べるのだ。そのため実績回収の周回プレイはかなり快適。ありがてえ。

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データベースの画面もオシャレで好き。

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ゲームに登場する用語などは【補記】でいつでも閲覧できる。
このイクラマンふとしは一体なにクラフトなんだろう。

【補記】の中の「フリーメイソン」項目の演出は必見。良すぎてしびれた。


+魅力的なキャラクターたち

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訳あって主人公と同居する小学生の女の子「みずき」、主人公の理解者であり上司でもあるクールな「ボス」、ネットアイドルとして有名な「A-set」など、個性的なキャラがたくさん。

ちなみにアイドルの「A-set」ことあせとんちゃんは実際にTwitterやっていて、今作の広告塔として情報を発信しているので気になる人はフォローしよう!本作の序盤をプレイする実況動画も上がってるので要チェック!

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あせとんちゃんのTwitter

本作のキャラ数自体は多くないが、どれもみんな一癖ある人物ばかりで、進んでいくうちに愛着が湧く。悪役も含めてみんな好き。3Dのキャラモデリングは時代で考えるとキャラの表情が少し硬いと感じるシーンもあるが、それほど気にしない。余程こだわりがなければ個人的には良好なクオリティだ。

キャラの中でも特に主人公の伊達と相棒のアイボゥは今回の事件を通して絆を深めており、ラストシーンは涙なしでは見られない!この二人の行き着いた結末をぜひ最後まで見届けてほしい。

ちなみに私の推しは、ABISのエンジニアでアイボゥの開発者でもある「ピュータ」。本名は風太。かわいい。見た目が良すぎるし一人称が「ぼく」で主人公に敬語使うのが可愛すぎる(目下には敬語使わないので敬語キャラではない)。ストーリー中での活躍も見逃せない。推せる。

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かわいい(語彙力喪失腐女子)


+安心と安定の打越鋼太郎シナリオ

このゲームの一番の評価点はやはりストーリー!!ネタバレになりかねないので多くは語れないが、安心と安定の打越鋼太郎シナリオなので、氏のファンならやって損はないと思う。私は期待値高かったが期待を裏切らないほどの満足感を得た。

とにかく重い話が好きな腐女子はやろう。キャラの過去は重いほど萌える。

そして打越氏といえばゲーム中で散りばめられる「中二心をくすぐる小ネタ」である。例えば「ブーバキキ現象」や「マンデラエフェクト」など、私達の現実世界でも有名な「少し不思議な出来事・現象」を必ずシナリオに仕込んでくる。そのため打越氏の他の作品をやったことある人だと、「あ、この話は『9時間9人9の扉』で聞いた!」ってなることが多い。私はなった。しかしこれらの小ネタはゲーム中ではあくまでも雑談として語られるだけで、メインストーリーとの関わりが薄く、面白さを損なう心配はない。私自身はこういう話が大好きなのであると嬉しい。ファンサービス的な。


+最初から道筋が決まっているマルチエンディング

このゲームは買ってから手がつけられないまま数ヶ月放置してしまったが、いざ始めてみたら寝る間も惜しんで一気に最後までやってしまった……。それもマルチエンディングの分岐とシナリオ構造に大きく関係する。このゲームはマルチエンディングではあるが、いくつか重大な事実が明かされるルートの途中では「シナリオロック」がかかり、特定のエンディングに到達すればロックが解除される仕様になっている。これは打越氏の過去作『極限脱出シリーズ』にも見られる仕様。

マルチエンディングなのにほぼ決まった順番にクリアしないといけないという、一見自由度が下がる仕様であるが、逆にいうと「たまたま最初に真エンドを見てしまって、すべての真相を知ったあとに謎だらけのノーマルエンドを回収する作業」という現象が起きる心配はない。私はゆとりなのでこの仕様自体は好きだ。

そしてこの仕様が原因で、最初に見るエンディングは何もわからないまま終わってしまい、真相を知りたいためもう一個のエンディングを見ると、明らかになる真相と共にまた一層深まる謎が……という、「知れば知るほど続きが気になる展開」が最後まで続くため、真エンディングまで15時間以上ぶっ通してプレイして一気にクリアしてしまった。


・バカゲー要素が強すぎる

この点は問題点というよりかなり人を選ぶ賛否両論点だと思うし、このゲームの一番特筆すべく特徴でもあると思う。というか最初から下の画像のようなギャグを連発してくるので、序盤からすでにプレイヤーの選別が始まる。このノリが耐えられないなら諦めよう。全編こんなノリである。

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フルボイスで小学生レベルの悪口を連発するアイボゥ。

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真面目そうな主人公もこんなノリである。もちろんフルボイス。

主人公の伊達は記憶喪失ではあるが、頭の回転が速くて賢いキャラなので、ゲームを初めたてでいきなりこんなふざけた言動されたら違和感を覚えてしまう。かなりのプレイヤーがこのギャグのノリで脱落してしまうんじゃないかな。私も最初は「は?」って思いながらプレイしてたけど中盤になる頃はもうこの変なノリに馴染んでしまった。慣れって怖い。

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自分に自己紹介したり、一人しりとりしたりする主人公。
二重人格ではなくただのギャグシーン。イェーイ!

こんなメインストーリーに関係ないところでふざけるのはまだいいが、いくつかのメインストーリーのイベントもギャグのノリで解決してしまう部分があるので、そこはかなりモヤモヤする……そうはならんやろ!!ってしばしば思う。勢いですべてを解決しても許せる人向けだな。

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データベースにある【クライアント】の解説。
用語解説でも容赦なくボケてくる。抜かりなし!


・ほぼ回避不可の他タイトルのネタバレ

※この項目は『ダンガンロンパ』(無印)のネタバレが含まれてます。

本作ではスパチュンの他ゲームからのパロディネタ大量含まれており、その中でも「食堂に飾ってるサイン色紙」が一番印象的だった。というか、この色紙を全部見ないと解除できない実績があるので、実績コンプを目指すなら必ず見ることになるシーン。

食堂に飾ってる有名人(?)のサイン色紙を調べると、なんと……

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あの方のサインが!!!!!

いや、最近ダンガンロンパ10周年迎えたし、アニメも放送されてたから知ってる人も多いと思うけど、キャラの名前と黒幕だと仄めかすメッセージを別のゲームに入れるのはどうかなと思ったけど。いいのかこれ。

ちなみに調査できるサインは全部で3枚で、ほかの2枚もスパチュンの別作品の重大なネタバレに関わるキャラのサインである。一体誰なのかキミ自身の目で確かめてみてくれ!私の口からは言えない!あと調べるときに該当キャラが登場する作品のジングルが流れるなど地味に凝ってる。


・終盤のソムニウムパートの自由度低下

2つ目のソムニウムパートから「6分の時間制限」の要素が追加され、歩くときにリアルタイムに時間が流れるほか、1つ1つのアクションに数秒~数十秒の時間がかかるようになる。【TIMIE】という要素もここで登場。

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右の「アイスピックを押し込め」を選べば10秒消費する。
左の「アイスピックを引き抜け」を選べば20秒消費するが、
【1/2】の【TIMIE】を入手することができる。

【TIMIE】はソムニウムパートでアクションを行うときにたまに入手できるアイテムで、最大3つストックできて、アクションを行うときに任意のタイミングで消費できる。

例えば前述の【1/2】を使うと、消費時間を半分にできる。他にも、元の消費時間に関わらず1秒で済ませることができる【[1]】や、次のアクションで強制に消費時間が2倍になるお邪魔アイテム【x2】など、これらの時間短縮アイテムを駆使してなんとか6分以内にクリアするという、パズルゲームのようなシステム。

ここまでなら普通にパズルとして楽しめるが、終盤のステージになると獲得できる【TIMIE】が【?】表示になるものが多くなり、実際に入手してみないと効果がわからないため、人によって何回かやり直さないとクリアできない覚えゲーの要素も出てくる。

消費時間の短い最適解を見つけるパズルゲーの楽しさが生まれる反面、「面白い反応が見たいためわざわざネタ選択肢を選ぶ」という遊び方がやりにくくなった。と、評価点か問題点かは人によって変わると思うが、前述のバカゲーの要素と合わないと思ったので個人的には微妙だった。

一応救済措置として、回数制限があるもののチェックポイントからやり直せる他、いつでもセーブできるのでこれらの機能を活用すれば特にストレスは感じない。



総評

ギャグは寒いが、シナリオは熱い!
SF要素が強いミステリーが好きなすべての人におすすめしたい良作。

クリア時間:18時間 (ムービー早送りとボイススキップ多用)
おすすめ度:9/10

推理ゲームを買ったと思ったら実はバカゲーで、バカゲーだと完全に信じ切ったときに怒涛なシリアス展開で打ちのめされ、そして全部クリアしたあとにやっぱりバカゲーだなと再び悟るという奇妙なゲーム。万人向けではないものの、SFが好きな人なら十分シナリオを楽しめると思うので是非やってみてほしい。


以上、『AI:ソムニウム ファイル』のレビューでした。はじめて書いたゲームレビューなので、不備などがあればご一報くだされば幸いです。アドバイスや感想なども嬉しいです。

最後に、このゲームで一番好きなどうでもいい雑学で締めたいと思います。

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へー

20200423


おまけ:
推しCPの話をするだけのネタバレあり雑談記事
(サムネはネタバレではないです)


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