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希釈されても色褪せないものを求めて

「山下さん。いつものやつでいいですか?」

お店で仕事をしていると、どうしようもなく眠くなる時がある。
そんな時には思い切って、お店を飛び出してお隣のカフェの店長にいつものやつをお願いする。
それは、小さなカップに入ったエスプレッソのダブル。
カフェラテを作る時にはたっぷりのミルクと混ざりあって優しく体に染み込んでいく【原液】みたいなやつに、砂糖をたっぷり入れてゴクッと飲む。

ウィスキーで言えばストレート。
水で割らないようなもので、トータルのアルコール量は同じでもその刺激はすさまじい。
カフェの店長さんによれば、カフェインの量はそこまですごくないそうなのだけど、濃厚な苦味と香り、そして砂糖の甘みで目が覚める(気がしてる)

こんな話をしているのは、いままさにクラウドファンディングのことで忙しくて仕方がなくてそのエスプレッソをキメたばかりというのもあるのだけど、ふとこの「原液の濃さ」っていろんな商いにも重要な要素だよなと思ったからだ。
身の回りのお客様と大切な時を積み重ねていきたい人にも、たくさんのお客様に愛されたい人にとっても、実は共通と言える要素な気がするので気になるひとはぜひよんでみてほしい。

「ここでしかできないかけがえのない経験」を諦める

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ここでしかできない素晴らしい体験があのお店ならできる!

そんな話を友達からきいたら、きっとあなたも心が動くのではないかと思う。
それは、自分がお客様の立場だったらきっと同様に思うし、それが当たり前だと思う。

だいたいのことがネットで完結する現代、たいていのことはネットで購入したもので再現できるだろう。
だとすれば、お店にお客様をよぶどう気になるのは「そこでしかできないなにか」だというのは容易に至る最適解だ。

もちろん自分のお店でも、自動で動いてポストカードにメッセージを書いてくれるマシンなんて変わったものがあるけれど、正直言ってまだそこまでのプレミアムな体験にはできていない。

そもそも器用貧乏&ひ弱な私には、そういったとことん突き詰めていった体験作りというのは苦手だ。
ただもちろん、皆様お察しの通りここで諦めたらお店終了。
お店を続けることを諦めきれない私は、「ここでしかできない素晴らしい体験」という原液作りを早々と諦め、自分のその特性をこそ深めることにした。

「器用貧乏とひ弱さ」という自分の欠点をひたすらに追求し、そんな私でも世の中で生きてきた「工夫」だったり、そんな私でもまっとうに仕事ができるようにしてくれる「道具」をひたすらに研究して世に発表すると決めたのだ。

そんなnoteも気づけば5000人を超えるフォロワーさんに支えていただき、このコロナ禍の中でもなんとかお店はやれている。

多くの人に希釈されても色褪せないものを求めて

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ネットでの発信、しかも文章を用いたものとなると、基本的に文面通りには相手に伝わらない。
それはまあ、どんなコミュニケーションにおいても同じではあるのだけど、相手の表情もわからず、口調や声量などもつたわらないことを思えば、対面でのコミュニケーションやYOUTUBEでの動画配信の方が伝わる情報は「そのまま」届けられる。

しかし、文章には文章でよいところもある。
それは、そういった情報が伝わらない分、読者は自分の体験を元に想像する他ないということだ。
それは元の情報が「薄まってしまう」とも受け取れるけれど、それぞれ受け取り手が飲みやすくするための余地があるということでもある。

ウィスキーの原液であれば、水割り、お湯割り、ロック、ストレート、ウーロン割りなど様々な飲み方を想像しやすい。
たとえ、同じエスプレッソであっても、使用するミルクが違えば味も変わる。

ただ、その時に「原液」となる元の情報が薄ければ、おそらくはそのコンテンツは伝えたいことも伝わらずに薄れて消えていく。
かといって、自分勝手な情報を撒き散らしていては、そもそも受け取り手が受け取ろうとも思えない。

私自身がそんな中で大切にしていることが2つある。

1つは、原液の濃さをきちんと保証すること
「器用貧乏とひ弱さ」という欠点を、「不器用なりに暮らしていく上で便利な道具の知識については自信がある」という長所に置き換えた私の場合は、できるかぎり世の中にまだ広く知られていないであろう情報を詳しく書くことで、誰かの役にたてればと考えている。
そこでは本気になれないことは書かないようにしているし、実際書いたところでそんなに読まれないことも実感している。

2つ目は、あくまで自分の私見であることを伝えること
カリスマがあれば「これはこうだ!」と断定して、皆を見たことのない世界にいざなってくれるのかもしれないけれど、自分としてはあまりやりたくない。
あくまで、自分が考えていることは自分の環境下で感じたことだと思っているし、読み手のすべてが納得できることではないと思っている。
その距離感を読み手にも感じてもらったほうが、読み手は読み手の考えを否定されずに、その原液をその人なりにうまく希釈して美味しく役立ててもらえると思うのだ。

「そこにしかない」にも「多くの人に広げる」にも濃さはいる

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「実店舗でのかけがえのない体験」に自信がない私は、文章を通したネットでの展開に活路を求めた。
でも、結局どちらにも必要だったのは「原液の濃さ」だったというのは、結論だけ聞けば当たり前の帰結のようにも思えるけれど、実体験としてはどこか驚きでもあった。

それに気づけたのはいま取り組んでいるとてつもなくニッチなクラウドファンディングで、想像以上にたくさんの皆様に初日からご支援をいただけたからにほかならない。
不器用な私が、自分でも簡単に配線をきれいにする道具を追い求めていたら、いつのまにかクラウドファンディングになっていたというのは本当に不思議なことだと思う。

でもこれからも頑張ってお客様の期待に応えられるような「原液」をしっかりと提供していけたらと思う。

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