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さすらいのプログラマー

20年以上前になりますが、当時輸入していたソフトウェアを直してもらいにアメリカに行った時の話です。

アメリカ製のソフトを日本人が使うと、細かいところを含めて沢山の問題が見つかります。その頃は見つかった問題をメールのやり取りで修正してもらうのが普通でした。今みたいに動画で状況を詳しく伝えたりできないのと、課題を管理するシステムもなかったので、しばらくやり取りしていると埒が明かない状態になります。そういう時は作っている会社まで行って直談判するのが一番でした。そこで、ダラスまで行きました。

その会社はNASDAQに上場している会社でした。多くのプログラマーに会えることを期待して訪問しました。でも驚いたことにオフィスはがらんとしていました。調子のいいCEO、受付のおばさん、パッケージのデザイナーと太った技術部長だけしかいない様子でした。(たぶん、その4人が全社員)
これで本当に、ソフトを直してもらえるのか心配になりました。会議で技術部長に修正してほしい内容を伝えると「わかった」と言ってくれました。技術部長は人のいいおじさんでプログラマーには見えません。「この人が直すのかな?」とますます心配になりました。

新しい製品の話などを聞いているうちに夕方近くになりました。
その時、その男は現れました!
大きなリュックから大型のラップトップを取り出しセッティングしました。太った技術部長から私が説明したソフトの修正点を聞いた後、いくつか私に確認して「わかった。明日の朝までに修正する。」と言って黙々と作業に入りました。

私は調子のいいCEOと技術部長といっしょに夕食に出かけました。その時ケネディが暗殺された通りを車で案内してくれました。

次の朝その会社に行くと男が待っていました。「これでどうだ!試してみろ」と言うので、修正してもらったことを一つづつ確認しました。
「お!ちゃんと直っている。」
日本に帰ってから修正版を受け取るぐらいのイメージだったのに一晩で直してくれるとは、かなり驚きました。

その男は、そのソフトを作った人ではなく一晩だけ雇われたプログラマーだったのです。フロリダからダラスにその仕事のためだけに来たと言っていました。それなりの報酬が支払われたと思います。

この経験で、アメリカの会社はNASDAQに上場していても空洞化していて、まともな技術者がいないということを知りました。
そして、他人の作ったプログラムでも一晩で完璧に修正して去っていく「さすらいのプログラマー」が、すごくかっこ良く見えました。

つづく

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