読書記録⑥『人のセックスを笑うな』
『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ 著
「人間関係は常に一対一だ。」本文からの引用です。真理だと思います。人と人の間にあるものは、どんなに顕微鏡の倍率が上がろうと観測することはありません。また、観測される必要もないのです。
とても印象的なタイトルです。そして内容もとっても印象的。あそこまで男子大学生の心情をみずみずしく描かれると現役の身としてはぞっとします。見透かされている!
装丁に、作中の二人をモデルにした男女が寄り添って眠る写真が使われていますが、あの雰囲気が作品全体から溢れ出ています。朝日か夕日か分からない日差し、決して二人の関係を脅かすことのない日差しが、おそるおそる部屋に射し込んでいる。二人はその陽気に包まれて、向かい合って眠っている。このとき、窓の外はゾンビだらけだろうが核の炎に包まれていようがどうでもいいのです!世界とは二人がいる部屋だけなのですから。
文庫本で百ページちょっとの短い小説です。文体も読みやすく、それでいて私たちの心に確かなものを残していく。「虫歯と優しさ」という短編も文庫版には収録されています。こちらも大変面白かったです!
言っちゃえば「不倫物」のジャンルにも当てはまりますが、不倫が好きでない方も大いに楽しむことができる作品だと思います。この本を読めば人のセックスを笑うことは絶対にできなくなりますが、もっと大事なことができるようになるかも。
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