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footballista79号 オンライン対談-ジェンダー問題-の感想

はじめに

フットボリスタ79号でサッカー界のジェンダー問題としてささゆかさん(@ice_rosa)と北健一郎さん(@kitaken1ro)のお話が掲載されていまして、仕事柄もあり読む前からとても気になっていました。

あまり日本ではジェンダー問題に真っ正面から向き合う内容が多くなく、取り上げていても少し政治色が強かったり、何かしらの色が強い議論が多いなど、あまりフラットに話がされているのは見ない印象がありました。また、サッカー雑誌という立ち位置から取り上げる意義は極めて大きいと思います。

welfare分野からサッカーのジャンルをどうにか発展させていきたいと考えている自分としては、感想くらいは書きたい衝動に駆られて、読むまでバレないようにオフサイドポジションにいたんですが(下)

ささゆかさんに読む前に感謝されてしまい、完全にオフサイドになったことをご報告してからスタートいたします。

ジェンダー問題を話す前に

まず、僕の感想を書く際に、何点かベースにしている考え方をお伝えすることを通じて、皆さんの言語化の一助になればと思います。
本題より長く感じると思うので、人によっては飛ばしてください。

ジェンダー問題のとして、性役割という考え方があります。だいたいこの部分で引っかかってる議論が多くありますが、wikiレベルの話でもある程度解決します。

性別によって社会的に期待される役割とされますが、これは過去の歴史など、すなわち傾向から決められているものなので、時代の変化の境目などでは極めて扱いが難しい、という点は容易に理解できると思います。

さらに派生する話として、性別役割分業なんてものもあります。これは読んだ字そのままなので、説明は割愛します。

このあたりに委ねると、考えなくて良いので楽なんてメリットが挙げられると思います。

ただ基本的には自己理解に繋げるものであって、これらの考え方は自分を決めるものではありません。その部分が整理できていないと、安易な差別やレッテル貼りに繋がる話になるため、危険な部分もあります。

僕がこのあたりの理解が進めるにあたってはエリクソンの心理社会的発達理論の考え方が妥当だと捉えています。

ここで、アイデンティティの確立がうまくいかないとアイデンティティは拡散するという表現があります。

性役割や性役割分業についての自己理解が進まないと、いざその話が揺らぐような事態に出くわすと、適切に対応できず相手を攻撃することもある、と理解して差し支えないと思います。

個人的には突如システム論でよく聞くような表現を突っ込んでくる無茶振りに、いろんな方が困惑しているんじゃないかと思いますが、以下の図をイメージできると比較的簡単に話が理解しやすくなります。

(画像はReserchGateの論文の下記画像をお借りしています)
https://www.researchgate.net/figure/Examples-of-various-system-behaviors-a-short-time-unstable-classically-stable-bshort_fig1_289168652

左のstable systemであれば一定の値に収束して安定、右のunstable systemであれば値が発散しているため不安定、と説明されます。細かい部分では、応答が早く、オーバーシュートが少なく、一定の値に収束するシステムの評価が高い、という話になります。

ただし、要は自分の考え方や立ち位置が定まっているか、定まっていないか、あたりの表現で説明できると思うんですが、きっと訳した方がこの辺にまで明るい人じゃなかったんだろうな、と感じてます。

余談も余談に逸れている感がありますが、システム論と絡めた話はまた別の機会に。

記事の感想

やっと本題です。自分でも何の話がしたいのかわからなくなりそうでした・・・

少し整理して感想を書きたいと思います。

まず、北健一郎さんに対して。

同い年の男性ということもありますが、変に理解がありすぎるのもこの話題をする意味が見いだせなくなりますし、一般的な男性像として非常に素晴らしい立ち位置でこの難しい話に関わられている、と感じました。

僕の所感として、性別を問わず自分と同年代の人たちは、ジェンダー問題などの話題を意識的に勉強をしなければ触れる機会が多くない時代を生きてきました。さらに40前後で一気にこの手の目が厳しくなってきたため、非常に難しい立ち位置にいると感じています。僕自身、意識的に勉強する機会が先にあっただけで、それがなければよくて同じ立ち位置だったと思います。

次に、ささゆかさんに対して。

ジェンダー問題とかでなく、ささゆかさんという方に対する理解が極めて乏しかったです。そもそもライターを仕事にしている人だと知りませんでした。すみません…

常日頃から僕自身も感じているジェンダー問題、特に女性の難しい立ち位置の話があり、すごく共感するところがありました。
自分自身は男性なので、本当に女性の気持ちを理解することは不可能ですが、女性同士でも自分ではない女性が考えていることは同じではないため、男性だから女性のことがわからないか、といったらそれは理解を放棄しているだけ、と考えた方が恐らく妥当だと思います。
また、努力や内容を正しく評価されず、女性であることや容姿の話が多く話題に挙がるのは、努力が正しく評価されない部分に着目すると、共感できる部分が出てやすいと思います。
そのような中で、男性が多い分野でフラットに勝負していることを知り、応援するとともにイマイチなものを書いていればしっかりと反論を挙げていくのが大事だと感じました。

正直、性別や見た目の良さってのは、文化的な側面の向上心や努力という側面を切り口にすると、足を引っ張る要素でしかないと感じています。

女性らしさばかりだと公平ではないので、男性らしさ、の話も一つしておこうと思いますが、男なのにプリキュアを見ているとか言ってる人が職場にいたんですが、女子児童に見せるアニメが敵殴ってていいんですかね。
女性は殴ってはいけないとか不平等とかそういう話?
いや、ジェンダーとかじゃなく、そもそも殴るなって話ですか。そうですね。

最後に、この対談全体の感想として。

北さん、ささゆかさん両名ともに、決して違う考え方の人の足を引っ張ってはいないという点がとにかく素晴らしいと思います。

性役割、性別役割分業の話はこの対談を少しでも理解してもらい、言語化するべく書いたんですが、性役割や性別役割分業の考え方で助かっている方もいるため、この考え方が否定されてしまうのもまた別の問題を生みかねません。

中立な立場でかつ、どこかしらに着地点を見出すのは本当に難しいのですが、こうった企画が掲載された意義の大きさと、少しでも多くの人にこの記事の意味が歪まず伝わることを祈ります。

こういった話題を投げかけたfootballistaを今後も一層サポートしていきたいと感じました。

最後に所感

今回の感想を書いた一番の理由は、同時にfootballistaに載ってしまったことにあります。
サッカー業界でソーシャルワークをしたい!とか話をしてたら、同時にこんな話題が載っていて、若干実名・顔だしになるとしても一緒に書かないとさすがに嘘だろ…って感じで飛びつきました。

カウンセラーをしていたこともあるのですが、職業としてのカウンセラーをしている人や、福祉関係に従事している人の中でもジェンダー問題は極めて深くあります。むしろクローズな社会で全然アップデートされてない人が多数いるので、より深刻かもしれません。

女性の相談は女性が受けるべき、という話があるんですが、女性の相談員には話したくない、という女性もいます。
これ相談に入る前にアウト確定なんですね。

時には体調不良の理由を知らなければならないため、月経前症候群(PMS)の問題やなんやらも聞くことがありました。生理の話は必要以上にオープンにする必要もないですが、完全にこの話題を完全にクローズにされていると一向に理解も進まないですし、一般的な生理でも人によって程度があることや、極めてつらいときに休むことも一生理解されることはありません。

また、今回の記事にも出てくる「女性らしさ」という危うい表現を安易に使う人たちもいます。もちろん「男性らしさ」も同じです。

らしさ、ってなに?
それは一律なの?
どこで決まったの、それ?
あなたの考えている女性像/男性像を相手に押し付けていない?

こういった話をしても、安易な言葉を使う方から出てくる答えはありません。そして、投げかける人間は面倒だと切り捨てられていくのが現実としてあります。

本来この問題を考えないと仕事にならない最前線にいる立場ですらこの議論が進まず、むしろ取り残されている状況だったりもするので、極めて難しくもあります。

そして何より大事なこととして、

ジェンダー問題も含め、差別は確実になくなりません。
なくすのではなく、弱めていく、和らげていく意識が重要です。

差別をする人は理由がないことが多いです。無意識の話もありますが、親が言っていた、周りが言っていた、など極めてくだらない理由で差別は生まれます。

また、どんな人にでも差別意識は少なからずあるはずです。
差別意識が自分にもあることを自覚、理解し、それを相手にぶつけないことがジェンダー問題も含めた差別問題をやわらげていく要因になると思います。

こういった話題について、考えが足りないならまだ良い方で、加えて考えることができる人がいれば、考えることができない人もいます。
僕が無くならないと断言する理由は、考えることができない人のことが念頭に置かれていないからです。

これは諸問題を前に進める上で非常に重要なポイントだと思います。

社会が変わるには、一人ひとりの意識付けが重要であって、僕一人が社会をわかったつもりになっても何も変わりません。わかったつもりになったことが正しいかもわかりません。

こういった記事をきっかけに、いろいろな人が社会問題に触れ、前向きな話ができるようになってほしいと切に思います。

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