ロシア点描
ロシア・ウクライナで今起こっていることは、視点によって戦争と呼んだり、紛争と呼んだりしているが、事実上は国と国が軍事力を使ってぶつかっている状態だ。「戦争」はよくない事というのは共通認識としてあると思うが、これまでの歴史を見れば当事者ともに、「そうせざる得ない」と。我慢には限界が、どうしても譲れないものがあり、それを超えるともう誰にも止められない、ということなのだろう。
が、だからと言ってその国の人達が悪いわけではなく、そこに住む人の生活は、食事をし、仕事をし、睡眠をとるという、今の世界ではほぼ皆同じように営んでいる。
第1章 ロシアに暮らす人々編
ロシアと一口に言っても広大でモスクワ、サンクトペテルブルク、の方に住んでいる人と、ハバロフスク、ウラジオストクに住んでいる人たちは全然違いそうだし、中央アジアなども含まれるので民族もさまざま。なので、著者が実際に触れたモスクワの人々で書かれている。
「無限の不信と信頼が同居する国」
基本的には人は信じないが、身内だったり、懐に一度入ってしまうととことん信頼するという。これは歴史的な背景も大きいと思う。社会主義国家で反逆罪で闇に葬られるという話もよく聞いた国ではそう簡単に隣人は信じられないだろう。が、だからこそ仲間を大切にしないと暮らしてゆけない。また、この弊害で身内のコネで利益を独占したり、汚職が当たり前のようにまかり通るというのは、なるほどと思った。
「靴下を履かせなさい!」
「ロシア人は突然話しかけてくる」
少し暖かいからと裸足で子供を外に連れ出そうとすると、隣人であっても通路に立ち塞がり靴下を履かせるまで通さない、といったところは極寒で子供を育ててきた歴史から理屈抜きにこうした行動に出るのだろうか。
「ルールです」と言われると破りたくなる
こうしたところも、上からのルールに対する反骨精神が強いというのもこれまでの歴史的な背景を感じる。
第2章 ロシア人の住まい編
ロシア日記や、ウズベキスタン日記、犬が星見たでも必ず出てきたのが、トイレの便座がない、ということ。最近は大部へったとあるが、「ソ連っぽい」ところに行くと今でも無く、それについてロシア人に聞いても曖昧な答えしか返ってこないと言うのも謎といえば謎。
社会主義ゆえ作られる家は画一的だが、それでも時代毎に異なる政策が反映されたフルシチョフカ、ブレジネフカ、スターリンカ、プーチンカと呼ばれる建物に住んでいるというのも、言われてみれば確かにそうなるか、と改めて思った。そして旧時代には有名だったKBGの諜報活動。諜報なのでかなり極秘に行われていたように思うが、むしろ、やっていることを公然の秘密として、意に沿わない発言や行動を抑圧していたというのも、対象が多くなるとその方が効果的なのもわかる。
第3章 魅惑の地下空間編
フランス・ナポレオンの侵攻、2つの大戦、冷戦の歴史から地下に政府機能を移すのはわかる。そしてそれは表面から見ることはできず、また、どれだけのものができているかを把握している人はほぼいないだろう。地下は一度掘ると戻すことは難しいし、どのような背景で掘られたかは極秘に進められたものほどわからない。これはロシアに限らず日本も同じだと思う。
そして、時代が進むほどに深くなってゆく。これも自明で浅い所はすでに掘られているので時代が進むとそれよりも深いところを掘るしかないからで、日本でも大江戸線は地下40メートルまで掘り進んでいることからもわかる。ちなみにロシアだと地下84メートルとさらに倍。どれだけ掘っているのかと驚く。
第4章 変貌する街並み編
第5章 食生活編
ロシア料理で思い浮かぶのは、ボルシチ、ピロシキ、ビーフストロガノフあたりだが、中央アジアのシャシリク、シベリア料理のペリメリと広いが故にそれ以外にもたくさん美味しいものがある。寒いところは薄味で、暑くなると辛くなるのイメージはそのままかも知れない。ただ、寒い故にアルコール度数の高いお酒のイメージも多いが、最近はこれもこれも減っているそうで、このあたりプーチン氏の影響も大きいとのこと。
第6章 「大国」ロシアと国際関係編
第7章 権力編
近年の国際城勢を見るとここの章はさらに、考えていなかったことが書かれています。主権国家という考え方、中国、インド、トルコをどう見ているのか。
また、ロシアの宗教といえば正教会が思い浮かぶ。日本だとカトリックがよく目につくが、東欧・ロシアはこちらがメイン。直接政治には関わらせていないが、国民の指示から全くの無関係とのならないところは、日本と違うところ。
わけを知れば、賛同できるわけではないが、だからと言って「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となるのは違うと思う。どのようなところに住み、何を食べ、これまでの歴史を知ることで、理解をするということは大切だと思う。こうした本はどうしても、著者のスタンスが含まれることが多いため、1つを読んで、わかったつもりになることは避けた方が良いが、かといって、何も見ずただ感覚的に判断はしないようにしたい。