2021シーズンガンバ大阪個人レビュー　MF編

　続き！仕事始まっちゃったよ。前回は下記から。

MF部門

No.6　チュ セジョン

　２年越しのオファーとして鳴り物入りで加入したものの、獲得を望んだ監督は解任、加えて異国の地で新型コロナウイルスに感染（韓国メディア報）という散々なガンバ初年度となってしまった。長短に供給できるパスの質には目を見張るものがあり、初の先発出場を果たしたホーム福岡戦では彼のサイドチェンジを起点としたチャンスメイクに可能性を感じたものの、監督交代後幅を使った攻撃のプライオリティと合わせて序列も下がり、シーズン終盤は控えにも登録されない状況となってしまった。苦しかったのはACLで登録外となってしまった点だろう。試合の中で連携を高められなければ、今期のガンバで信頼を得ていくことは難しかったかもしれない。当然ながら代表に選ばれるだけのクオリティを持つ選手なので、来年度は違った顔を見せてくれるはず。

No.8　小野瀬 康介

　宮本ガンバを支えたNo.8は今期ノーゴールと寂しい結果に終わってしまった。シーズン当初は編成不安の煽りを食う形で右サイドバックにコンバート。それだけ監督の信頼が厚いということだったのだろうが、流石に三笘や相馬などのJ1トップクラスのサイドプレイヤー相手には守備の粗が目立ってしまった。ところで今年の小野瀬があまり跳ねなかったのは、「気が利く選手」からだと考えている。ユーティリティ性のある気が利く選手だからこそスカッドのスキマを埋めるような使われ方が多く、自分の特性をどう生かすのか？ではなく、どうやってゲームを成立させるのか？に腐心させられていたような。点を取るのが本分の選手だと思うし、小野瀬自身もそう考えているはずなので、来期は本人が望むポジションでのプレーを望みたい。

No.10　倉田 秋

　出場試合37試合、欠場は累積警告による１試合のみ、と、超過密日程の中で流石の鉄人ぶりを見せた10番。しかしスコアポイントにのみ着目すれば今期はリーグ戦わずかに1ゴールと2012年のガンバ復帰以降最低の成績となってしまった。リーグ戦唯一の得点はアウェイ横浜Fマリノス戦のパトリックが留めたDFラインに後列から飛び出してフリーになって決める形。かの有名な「大阪ダービーの右足」といい、倉田のゴールといえばこれ（次点で脈絡のない謎ミドル）と言える形だ。ただ、今期に関しては二列目が飛び出す時間を作れるようなチームではなかった、というのが倉田のスコアポイントがここまで落ちた理由だと思う。一番の特徴が出せなくても、走攻守のベースが高いから使われていたという点に彼の凄味があると思うが、やはり餅は餅屋なので、来年はボランチ倉田は封印の方向で……。

No.14　福田 湧矢

　昨期はサイドバックで新境地を開拓したが、今期は度重なる怪我と脳震盪によりシーズンの多くをピッチの外で過ごした。今シーズンの福田の闘病記は涙なしには読めない内容となっている。シーズン後半、彼がメンバーに名を連ねるようになって以降ガンバは３連勝を果たし残留を掴み取ったが、彼の走力やデュエル性能がそこでのソリッドな戦いぶりを支えていたと思う。彼がサイドバックを遜色なくこなせている理由は上下動やフリーランをいとわない運動量とメンタルに加えて、自分が攻めるときにどう仕掛ければ相手が嫌がるか？ではその「逆」はどうだ？について、（言語化できているかどうかはともかく）本人の中で筋が通っているからではないかと思う。来期は万全な状態でプレーできるように、オフはしっかり休んでほしい。

No.15　井手口 陽介

　2020シーズンは八面六臂の活躍を見せたが、今期はコンディションの維持に苦しんだシーズンだった。デュエルでの粘りが見られず、ファウルで止めざるを得なかったり外されて運ばれてしまうシーンが多かったりと昨シーズンの輝きは見る影も無くなっていた。チームとして相手の攻撃方向を限定できているわけでない中でタックルのキレも落ちているとなれば必然モメンタムを渡してしまうことになる。シーズン後半、週単位でのサイクルでゲームが出来るようになってようやく本来のフォームに戻ってきたところでセルティックからのオファーが舞い込み再びの海外挑戦が決まった。キックの質やZOC(Zone Of Control)の広さには日本人離れしたものがあると思うので是非大活躍して日本のカンテになってほしい。現在25歳、カンテがブレイクを果たしたのが24歳と考えればまだまだ遅くないはず。

No.17　奥野 耕平

　2019年入団のユース卒でプロ２年目。「ガンバユース卒」と聞けば堂安など仕掛ける意識の高い選手のイメージが浮かんでくるが、奥野は彼らと異なり適切なポジションを取る、周辺の雲行きを読んでボールを奪うなどクレバーな選手としての特徴がある。その賢さを活かし今期はユーティリティな使われ方で出場時間を伸ばした。主戦場のボランチのみならずサイドバックやウイングバック、時にはサイドハーフなども担当。特に選手の離脱も多かった15連戦中にはスカッドの歪みを埋めるスーパーサブとして活躍。しかし、ここから絶対的なスターターとしての座を得るためには「アスリート的強度」を高めていく必要性を感じた。前期完全移籍で新潟へと旅立ったヤンこと高宇洋は彼と似たような特性の選手だが、この「強度」がボトルネックとなってトップチームへの定着を果たせなかったと感じる。来期は新卒３年目でおそらく一度目の契約最終年を迎える。（→勘違い、４年目でした）彼のポジションには即戦力の補強も行われているだけに、彼なりの特徴をアピールしていく必要がありそうだ。J3時代にはパンチの効いたミドルシュートでゴールを決めていたりもしたので、J1でもそんなシーンが見てみたい。

No.21　矢島 慎也

　GG！宮本監督の下昨期は様々なポジションで起用された矢島。今期プレシーズンのフジゼロックススーパーカップでは右ウイングで起用されゴールを記録するなど今期もキーマンとしての活躍が期待されたがチームは低空飛行。監督交代後もその調整能力を期待されてかスターターに名を連ねたが、上昇気流に乗らないチームに対してインタビューでは監督批判スレスレの発言を行うなどフラストレーションを溜めている様子だった。ACL以降は定位置を3-4-2-1のシャドーに移し、より得点への関与を期待されるプレーが増えるがスコアポイントは伸びず。リーグ終盤ホーム札幌戦以降は、負傷の影響もあってか一度も試合にエントリーされずにシーズン終了を迎えた。上述のインタビューからも読み取れるように、チームを俯瞰して課題を言語化する能力に長けているようだが、それをもってチームを動かすまでには至っていなさそうなのがもったいない。「それはコーチングスタッフのタスクだよ」と言われればそれまでなのだが、もうベテランに差し掛かる年齢、プレースタイル的にも、チームを引っ張る役割を自らに課して損はないと思う。

No.28　ウェリントン シウバ

　かつてアーセナルに在籍し（同クラブでの出場経験はなし）、ラリーガでもプレー経験のあるアタッカー。獲得報道自体は１月下旬に出ていたがコロナ禍による入国制限の影響もあり、チーム合流は４月と遅れてしまった。宮本監督の下で恐らく4-3-3の左ウイングとして期待されていたはずだが、コンディションが整っていないこともあり試合に出場したのはホーム広島戦から。そしてこの試合後に宮本監督が解任となってしまった。タラレバの多い今シーズンのガンバだが、彼がシーズンインまでに加入できていた世界線は観てみたい。松波政権下ではシャドーかサイドハーフの位置で起用されることが多かったが、シャドーでは窮屈そう、サイドハーフでは守備面で課題……と、帯に短し襷に流し状態だった。可能性を感じたのはホームマリノス戦、4-3-1-2の2トップで起用されたゲーム。残念ながら僅か15分で負傷離脱となってしまったが、宇佐美・ペレイラと連携し小気味良くマリノスの守備陣を攻め立てていた。守備面で計算しにくい状態だったからかシーズン終盤はベンチを温める試合が多くなってしまったが、本来のポテンシャルはまだまだ披露してもらっていない。来期は新加入の助っ人ぐらいの勢いで爆発してほしい。

No.29　山本 悠樹

　昨シーズンは１年目からブレイクしたものの、今シーズン序盤は短いオフや所謂"２年目のジンクス"の影響もあってかコンディション面に課題があったように感じた。持ち前の針の穴を抜くようなパスは影を潜め、ようやく本領が発揮されてきたのはシーズン終盤。ホーム鳥栖戦、マリノス戦、大分戦では３試合連続で見事なラストパスからアシストを記録した。加入２年目ながら主力の座を掴みネクスト遠藤保仁を期待され、デオウ選手権などクラブ主導のメディア露出も多く、シーズン途中加入の山見に先輩風をビュンビュンに吹かせるなど謎のふてぶてしさを発揮している。「社二病」という単語が一瞬頭をよぎったが、ことプロの世界においては「物怖じしないメンタル」という表現にも変換できる。背番号７を襲名するのは流石に荷が重いかもしれないが、来期はピッチ全体を掌握するようなプレーをもっと見せてほしい。

No.40　中村 仁郎

　昨期すでにJ1デビューを果たしていたが出場機会を考慮してか飛び級のプロ契約とはならず、今期はユースで過ごすこととなった。序盤はユースの試合にも出ておらず昨期からの怪我の影響を感じたが、シーズン終盤にはトップのゲームにも出場。その後年代別代表にも選出されキレのあるドリブルからゴールを奪うなど可能性を見せている。レフティの少ないガンバで、来期は加入１年目から重宝される可能性もある。とはいえ目立ちすぎるとそれはそれですぐに海外行っちゃって困るけど。

FW編は後日！思ったよりしんどいなおい！