【監督は】2020 Jリーグ第5節 ガンバ大阪vs大分トリニータ【つらいよ】

 ご無沙汰してます、ちくわです。

 しばらくぶりですが皆さん元気にしてましたか?僕はなんとか元気にしてます。仕事はテレワーク中心になったので家にデュアルディスプレイの環境を整えて32:9の大壁紙で毎日ドヤってます。この週末は息子が初めてかかった風邪に初めて感染る、というハートフルな時間を過ごしていました。ギャン泣きする息子を助けることもできず見守るしかなかったのが尾を引いてか、ちょっと今週から息子がパパ見知り気味で寂しい気分ですが、まあガンバが勝ってくれたので、大体OKということで。

 閑話休題。今回は第5節、ガンバ大阪と大分トリニータのマッチレビューを書きたいと思います。試合前のガンバと大分はともに勝ち点7で並んでおり、勝ったほうが上位争いに食い込めるという負けられない一戦。結果は2-1でガンバの逆転勝利とあいなりました。過密日程なのでレビューの納期も短い!というわけで、パパっと振り返っていきましょう(パパだけに)(いらんことを言うな)。

スタメン

0 スタメン

 ガンバは3-1-4-2の形。スタメン予想では4-4-2の予想もありましたが3バックに戻してきました。前節から中5日ということもあり、変更は倉田→小野のみ。小野はいまだ骨折の傷が癒えない中での強行出場と、浪花節に弱いであろうガンバサポの心をガッツリつかんでくるその姿勢に脱帽です。

 大分は前節からスタメンを4人変えています。再開後は毎試合数人をローテーションさせている片野坂監督。今年から加入の選手も多く、選手を慣れさせつつも手堅く勝ち点を積み上げている印象です。

大分が狙うミスマッチ

 まずは大分の攻撃から見ていきましょう。

 大分はボール保持の際、3-4-2-1からボランチの1枚が最終ラインに落ちる4-1-5への変化を行います。Jの戦術界隈ではおなじみの「ミシャ式」ですね。後ろの4枚と、時にGKの高木まで絡めたパス交換で相手を引き付けてブロックを広げ、空いたスペースにボールを送り込んでいきます。

 それに対してガンバは主に2つの形の守備を準備していました。

 1つめは「①前からハメる」守備。相手がサイドにボールを供給した際に全員が前に出て、近場のパスコースを消しに行くパターン。4-1-5の1に位置する小林裕紀を抑えに前に出ていくアンカー矢島の動きが特徴的でした。奪えればよし、奪えなくてもGKまで戻させてロングボールを蹴らせ回収、という流れ。もう一つは「②サイドで刈り取る」守備。5-3-2の並びで中央のパスコースを切り、サイドで網をかけて奪う、というパターンです。

1 前ハメ

2 サイドで刈り取る

 2つのパターンを使い分けながら大分からボールを奪っていったガンバですが、33分に訪れたガンバの失点シーンではこの使い分けについて意思の疎通が図れていませんでした。ここでは大分の小林の動きが秀逸だったと思います。上下の動きで矢島の基準点をぼかし、結局矢島は「②サイドで刈り取る」ために中央を埋めに行く動き(下がる動き)を取りました。

 ただ、その動きが2トップと共有されておらず、「②サイドで刈り取る」際には2トップが切っておくべき(と思われる)フリーになった小林裕紀へのパスコースが通っている、という状況でした。

 中央で小林に前を向かれたガンバはラインを下げざるを得ず、プレッシャーを受けない形で大分は前にボールを運べます。ここで刺さったのが小題に挙げた大分の狙いである「ミスマッチ」でした。

 この日、大分は右シャドーに田中達也を置きました。田中達也とマッチアップするのはキムヨングォン。彼の爆発的な加速による「初速」のミスマッチで、11分など、大分はガンバの最終ラインの裏を起点に決定機を演出していました。

 田中達也から供給されるクロスの多くがファーの渡を狙ったものでした。これも大分の狙い通りだったと思います。中央CBの三浦と違い、右CBに入った高尾はエリア内での駆け引きに優れたタイプではないようで、渡の動き出しに出し抜かれるシーンは何度か見られました。「左でチャンスを作って右で刺す」というおそらくは狙い通りの形で大分が先制点をものにします。

3 失点シーン

「圧し潰す」ガンバ

 ガンバは、基本的には3-1-4-2の"3-1"を担当するヨングォン・三浦・高尾・矢島の4人がビルドアップに関与してボールの前進を図ります。対する大分は1トップに入った知念が矢島へのパスコースを消すタスクを担っていました。サイドに流したところでシャドーが詰める→蹴らせて回収、を狙っていたと思います。

 最序盤は無理せず蹴っ飛ばしていたガンバですがもしかするとこれは「シャドーのプレスが効果的だ」と相手に思わせるエサだったかもしれません。しばらくすると、釣りだしたシャドーの裏をビルドアップの出口として使うようになります。

 そこからの落としで前を向けると大分としては自陣PAへの撤退を余儀なくされるため、敵陣でボールを持てるガンバ。

 右サイドもシャドーの裏狙いという目的は共通だったと思いますが、中央に入って受けられる小野瀬がいることから相手を内に動かしてから空いた外のレーンを使う、などローテーションを使って少人数で前進できるのが特徴的でした。

4 ガンバ保持

 大分は「田中達也とヨングォンのミスマッチ」を使って先制点を挙げましたが、一方でそれ以外には明確な勝ち筋がない、とも言える状況でした。翻ってガンバは、押し込んでしまいさえすれば色々な引き出しがありました。例えば宇佐美からの高精度のクロス、間で受けられる小野瀬の突破、アデミウソンのミドルなどなど。同点に追いつくPK奪取も、PA内でのプレーが連続したため大分の対応が後手に回ってしまった結果生まれた、偶然というよりは必然に近いものでした。

 「相手を押し込んでしまえば、どこかで優位性が作れるから、それで圧し切ろう」なガンバと、「勝てる部分は少ないが、そこに集中して突き破ろう」な大分の姿勢が対照的な前半だったと思います。

選手交代にみる中間管理職のつらさ

 さて、後半。立ち上がりの速い時間にガンバが逆転に成功します。この日初先発となった大分の羽田が持ち上がる動きを見せたところを宇佐美がスライディングで刈り取り、ショートカウンターから深い切り返しを見せたアデミウソンがゴールを奪います。

 前半から何度か見せていたハイプレスの形からのゴール。羽田から見えるすべてのパスコースが塞がれている状況だったため、選択肢を作るために前に運んだのだと思いますがミスが起きてしまいました。自陣から繋いでいくチームにはあって当然のミスですが、初先発の羽田には苦い経験になってしまったかもしれません。

 その後も、後半60分ぐらいまでは大分陣内でのハーフコートゲームの状況が続いていましたが、ガンバの選手交代からゲームの流れは少しずつ大分に傾いていきます。

 ガンバが最初に切ったカードは「小野→倉田」と「アデ→渡邊千真」でした。この交代カードを切った直後のプレーで、自陣でボールを受けた東口は渡邊千真へのロングボールを選択します。それほどコントロールが難しいボールではなく、CBもフリーだったので、ここまでの流れであれば、CBへのパスを選んでもよかったはず。しかし、おそらくまず渡邊にワンプレーさせようという意図があってのキックだったかもしれません。ただ、このロングボールによってアンストラクチャーな状況が生まれます。

 その中で輝きを見せたのが大分33番の現役大学生・藤本一輝。ドリブル突破からシュートを放つなど、持ち味のプレーでチャンスを演出します。高尾は渡・藤本とタイプの異なる2人の選手の対応に苦しんでいる印象でした。

 その後は、再びガンバのボール保持で時間が推移しますが、決定的に戦況が変わったのは75分の宇佐美とパトリックの交代からだったと思います。同点に追いつきたいがためにプレッシャーを強める大分。宇佐美・アデミウソンの交代で地上戦への対応力が落ち、ボールの落ち着けどころを失ったガンバ。ロングボールやダイレクトプレーで大分のゴールへ向かうプレーが多くなり、試合はオープンに傾きます。

 ガンバは敵陣でボールを落ち着けられることができず、守勢に回る時間が長くなっていきます。目立つピンチは自陣のパスミスから生まれた三竿のシュートぐらいでしたが、特にリスクなく繋げるはずのタイミングでも裏へのボールを狙って相手にボールを渡してしまう、もったいない状況が多く生まれていました。

 おそらく、「90分のマネジメント」を考えるなら宇佐美とアデミウソンをできるだけ引っ張って地上戦を挑める時間をできるだけ長くするほうが良かったようにも思いますが、「シーズンのマネジメント」という観点では、連戦による疲れの蓄積や、好調な渡邊千真・パトリックにプレー時間を与えるなどいろいろな要素が相まって早めに交代カードを切らざるを得なかった、という状況だったのではないかと推察します。

まとめ:どうやって絵を描くのか

 今シーズン、ここまでの試合の中では一番「自分たちのやりたいサッカーに近い形での勝利」だったのではないかと思います。ただ、「自分たちのやりたいサッカーができた」のは、この試合については、大分・片野坂監督とて同じだったのではないでしょうか。

 大分の視点に立つと、前半は、攻め込まれつつもクローズなサッカーをすることで自分たちの強みを出せる部分を明らかにし狙い通りに点を奪えています。前半のサッカーはスペクタクルでしたが、後半のゴタつきを見ると、大分がそのゲームプランに乗っかってくれたからこそ演出された試合、と言えるかもしれません。

 ガンバは多くの優位性を携えて大分を打ち破ることができましたが、一方で、選べるカードが多いからこそどのタイミングでどういうプレーを選ぶのか?についてはまだまだ場当たり的な印象を受けました。

 それをどうやって整理し、自分たちから絵を描けるようなチームにするのか。今日は1人で全体の絵を描けてしまうヤットの出場がありませんでした。彼に代わって新たなスペシャル・ワンが絵を描くのか?それとも、チームとして一つの生き物として絵を描いていくのか?真の意味での「脱・ヤット」が問われるシーズンになりそうな予感がします。これからの連戦でそれが問われることになるでしょう。難しいマネジメントになると思います。

 それほどポイントは離れていませんが、上位チームを眺めるとやはりガンバより太い軸を持つ、「自ら絵を描ける」チームが居並ぶ印象です。言い換えれば、そういった状況でもこれだけの勝ち点を拾えているのはポジティブ。伸びしろもたっぷりある、、よね!ということで、今後も生暖かく見守っていきますよー。

雑談BOX

・特指の大学生を2人も起用してきなすった、「ガンバは大学生に弱い」というデータをきっちりスカウティング済みの知将片野坂監督。

・高尾には厳しい論調だったけど試合中何度か見せた持ち上がる動きはめっちゃ好きなので今後もどんどんやっちゃってほしい。んで地味に背が高いのもあって渡を割と消せてた(181cm、渡は176cm)。サイズあって機動力があってあとはパワーがつけば……夢が広がるなぁ。


ちくわ(@ckwisb

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