今、一番面白い芸人（だと思う） とにかく明るい安村の生き様を見ろ！

今、一番面白い芸人を問われたら、間違いなく私はこう答えるだろう。とにかく明るい安村だと――。現在、ゴールデンタイムの地上波で唯一“お笑い”をやることだけに心血を注いでいる『有吉の壁』（日本テレビ系）では、“Mr.壁”と呼ばれながらも、放送ではネタが未公開になることも多い男、とにかく明るい安村。「東京って凄い！」と歌い踊るネタでは、芸人から笑いよりもスタンディングオベーションをとり、自宅からリモート出演しているにもかかわらず、尋常ではない量の水をかぶる。ウケてもスベっても芸人としての生き様そのものを見せつけてくれる、とにかく明るい安村を取材するなら今しかない！　というわけで、「もう誰も聞いてくれない」という彼の芸に対する思いを取材してまいりました！

取材・文／だるま亭へっぽ子　撮影／高岡弘　企画・構成／末光京子

▼「東京って凄い！」TV Bros.オリジナルバージョン

▲インタビューの主旨に懐疑的なとにかく明るい安村さん

膝にくるほどスベる姿が
オトナ女史の癒しに!?

――担当編集の「いま一番面白い芸人は、とにかく明るい安村さん」（以下、とにかくサン）という意見に賛同し、お話を伺いにまいりました。

ホントですか!?　 ありがたいんですけど…（まったく信用していない声で）。

――我々だけではなく、とにかくサンを支持するオトナ女史たちが多いのです。マツコ・デラックスさんも番組で絶賛していました。

……ナゾですね。『有吉の壁』では、めちゃくちゃスベっているのに…。先日も、立っていられないほどスベりましたから。

――「現代の代弁者 宮本」（7/1放送）でしょうか？

そうです、宮本です。完全に膝にきていました。首が折れるほどのスベり方でした。

――でも、とにかくサンの存在を「癒し」と言い切る人もいるんです。『有吉の壁』がレギュラー放送になったのが、ちょうど自粛生活に突入した時期で。不安な気持ちを抱えながら、番組を見て腹が千切れるほど笑って救われたという方が多かったのではないでしょうか。なかでも、毎回、とにかくサンには救われている、と。

そう言っていただけるのは、本当にありがたいのですが、2015年に裸のネタでテレビに出始めたときも、周りがすごく持ち上げてくれたんですよ。で、そのあと、一気にバーンって落ちたので…。その恐怖があるからコワい。「面白い」と言われるのがコワくて…。だから、そういうありがたいお声は話半分で聞いています。ウソだろうな、と（笑）。

――もちろん、この５年ぐらいの経緯も踏まえて、です！　『有吉の壁』の舞台でもおなじみの熱海のＶ字回復に匹敵するぐらいの、とにかくサンのＶ字回復力に着目しているんです。

すべて『有吉の壁』のおかげです。壁があったおかげで、いま、なんとかやっていますから。

　とにかく明るい安村『有吉の壁』（レギュラー化以降）でのＶ字回復の軌跡

【20/4/8放送】商店街での即興ネタにて、「テンバイヤー」と渾身のひと言。霜降り明星・粗品風の口調だったため、悪質なドーピングとみなされ、空振りに終わる。本編で活躍できなかったが、hulu限定の未公開版で暗躍。以降、未公開版で目立とうとする悪いクセがつく。
【20/4/15放送】ブレイクしそうなキャラ芸人選手権コーナーで、ハンガーラックとマンボを踊る「安村＆ハンガーラックペア」を披露。キレのある動きと腹立つ顔でホームランを放つ。このネタのスピンオフとして「安村＆ホワイトボードペア」という社交ダンス版もあり。シュール。R-1ぐらんぷり2回戦敗退という逆伝説となる。
【20/4/22放送】なりきりスターのおもしろ自宅公開コーナーにリモート出演。原田龍二になりきり、リビングでバケツの水を思いっきりかぶる。その勢いの良さで、場外ホームランを放つ。
【20/5/6放送】日本カベデミー賞にて、グラニュー糖浩一として最優秀主演男優賞を受賞。似ていたが、最後のスピーチでやや行き詰まる。また、昨年の特番で披露した「安村昇剛（東京って凄い！）」がブレイク芸人総選挙コーナーで復活。有吉弘行から「キャリアのピークを迎えた」と、称賛される伝説の場外ホームランシーン、再び！
【20/5/27放送】なりきりスターのおもしろ自宅公開第2弾にて。森末慎二になりきり、リビングでホースの水を浴びる。水の勢いが弱く、不発。最後は顔芸で乗り切るしかなかった…。真の壁は「ちょっと前の自分」ということに改めて気づかされた傑作回。
【20/6/3放送】ブレイクしそうなキャラ芸人選手権にて、「安村昇剛　同世代の恥さらし」を披露。大三振の回。
【20/7/1放送】ブレイクしそうなキャラ芸人選手権にて、「現代の代弁者　宮本」を披露。膝にきて、首も折れるぐらいのゴリスベリを体験。
【20/7/15放送】結婚式場に潜んでの即興ネタにて。稲村亜美からブーケトスを受けるネタを。説明が長すぎた。かろうじて有吉から〇をもらうが、本人は「ダメな〇」と自覚。本気で悔しがる。

――2014年にコンビ解散後、ピン芸人「とにかく明るい安村」として登場されたとき、スゴイ芸名だな、と感心したのを鮮明に記憶しています。成功しても失敗しても笑いになる、という意味でつけられた名前が今まさにジワジワ効いてきていて。2015年の『R-1ぐらんぷり』の決勝に進出されてから、あっという間に人気者になり、翌年3月に文春砲を浴び、飛ぶ鳥、秒で落とされるという。

自分で落としたんですけどね（笑）。『有吉の壁』は2015年からやっていたので、ただただ一所懸命やってきました。有吉（弘行）さん、佐藤栞里ちゃん、スタッフさんたちの愛情に甘えて、ただただ一所懸命やっているだけです。でも、まあよくスベる（笑）。

――スベっているところも面白いです。むしろ、スベっているときが好きだったりします。

だとしたら、それは番組のおかげです。スベっているところも面白く映っているのでしたら…、ホントにありがたいです。でも、自分ではスベろうと思ってやったことは一度もないですからね。それでスベるから、ホントにね…（しんみり）。首が折れちゃうほどですよ。

▲ゴリスベリを思い出して頭を抱える安村さん

――うなだれて、ね。

そんな姿を面白いって言っていただけるのはホントにありがたいですけど。何度も言いますけど、本当は全部ウケたいんですから！

――（笑いを押し殺して）重々承知しております。

いや、めちゃくちゃ笑ってるじゃないですか！　めちゃめちゃ喜んでるじゃないですか！　俺がスベるのを！　

――でも、スベる姿が清々しいんですよね。見ていて気持ちいいというか（笑）。
　
ありがたいですけども（笑）。

――『有吉の壁』が水曜の午後７時という放送枠になったことで、視聴者層も広がったと思います。

子どもたちも見てくれるようになりましたね。うちの娘（７歳）も一緒に番組を見ていますが、シソンヌやチョコプラ（チョコレートプラネット）のネタで爆笑しています。

――娘さんはお父さんのネタにはどんな反応を？

ただただ苦笑いですね（笑）。

――あ、全然、刺さってない…。

子どもたちは、オレでは笑わない！　子どもたちは、ＴＴ兄弟とか、Mr.パーカージュニアが好き！

――その場にいた芸人たちのスタンディングオベーションをかっさらった伝説のネタ「東京って凄い！」も、子どもたちには難しい…かもですね。

ただただ苦笑いですよ（笑）。でも、オレはMr.パーカージュニアとかと同じ感覚でやっているんですけどね。子どもたちには、全然、刺さらない（笑）。

▲万引きGメンに店の奥に連れてこられた犯人ではない安村さん

スベりたくないけど、腕もない！
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