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【5月号特別企画】「今、日記が読みたい」05 髙城晶平(cero)【コラムフェスティバル①】

なんだか今、めちゃくちゃ日記が読みたい。

きっと一生に一度レベルであろう、この特殊な状況下で皆どう過ごし、どんなことを考えているのか。まずそれが気になるし、人と会う機会が減った寂しさから「肌触りを感じる文章」に触れたくなった、という気持ちもある。そんなわけで、個人的に気になる人たちに約1週間の日記を書いてもらった。

今回の書き手は、ceroの髙城晶平。バンドや自身のソロプロジェクトで活動するミュージシャンであると同時に、二児の父親でもある彼が過ごした、この5月の記録。

編集/前田隆弘
カバーイラスト/スッパマイクロパンチョップ

たかぎ・しょうへい●1985年1月3日生まれ、東京都出身。cero のボーカル/ギター/フルート担当。2019年よりソロプロジェクト “Shohei Takagi Parallela Botanica”を始動。 2020年4月にファーストアルバム『Triptych』をリリースした。

5月13日 水曜

8時ごろ起床。よく晴れている。

下の子(1歳)を連れてここのところの日課である朝の散歩へ。バギーを押しているからか手の甲が焼けて異様に黒い。近くの寺の"子育て観音"に寄る。像の片手には赤子が抱かれ、子どもがもう一人裾にまとわりついてる。最初のうちは子育てを完璧にコントロールできている超然とした存在としてこの像を見ていたが、ある日観音の顔が疲れているように見え、以来同士だと思って会いに行っている。今日の観音にはまあまあ余裕を感じた。

家族で自転車に乗り中野へ行く。上の子(5歳)に3000円もする恐竜のしかけ絵本を買わされる。中野ブロードウェイ地下で夕飯の買い物。焼売を買う。喫茶店を覗くと結構客が入っている。自分はまだ店でゆっくりするようなマインドになれていないので、そういうインスタレーションのように見える。

夕飯、たらのムニエル、焼売。
夜、漫画家のたかたけしさんのお母さんが亡くなったことをブログで知る。母の日のことだったという。文章を読み、笑い泣く。

5月14日 木曜

7:30ごろ起床。晴れ。
朝の散歩で小島麻由美の『さよならセシル』を聴く。1998年頃の吉祥寺ヴィレッジヴァンガードの匂いや街の雰囲気を回想し、しばし郷愁に浸る。

昼食後、だいたい下の子が眠くなってグズグズしだすのだが、最近卒乳に向けて夕方まで授乳禁止しているので、寝かせる方法がユラユラさせるか散歩に連れ出すかしかない。だいたいユラユラするだけでは寝られないので、またも下の子を連れて散歩へ。散歩しまくっているので日焼けしているが、マスクの部分だけ色白く奇妙。
抱っこで寝ている間、公園のベンチで村上春樹の『猫を棄てる 父親について語るとき』を読む。たまたま並行して『ねじまき鳥クロニクル』を再読していたのだが(これもまた郷愁に浸るため)、思いの外共通点が多く、あんなに妙な話でもある程度実体験が影響してるのだな、と思う。
帰宅して自分も少しだけ昼寝。

夕飯、鶏ハラミとエリンギのバター炒め。

5月15日 金曜

7:45ごろ起床。晴れたり曇ったり。
下の子昼寝のすきにcero荒内くんの著書『小鳥たちの計画』読む。加筆修正のためか、ネットで読んでいた時よりさらに面白く感じる。紙で読むのに適しているのか? 彼の人生初の著書だが、大健闘の一冊だと思う。

DVD返却しに行きがてら、少し公園で遊ぶ。たまたま砂場にいた気さくな女の子(上の子と同い年)が一緒に遊んでくれる。お父さんがお店をやっていて、彼女と同じ名前を店に冠しているのだそう。

帰りしなに高円寺でタイ料理のテイクアウト。サバーイ・タイランドがいつの間にかニュー・サバーイ・タイランドに名前が変わってた。ソムタム、ヤムウンセン、グリーンカレー、パッタイ。子どもが産まれる前、グリーンカレー中毒になって毎日のように食べてたことを思い出し、妻と話す。普通に昼も夜も食いに行ってたなぁ。

食後、妻と上の子とで人形遊び。台詞や話の展開が可笑しく大笑いする。

5月16日 土曜

8:30ごろ起床。一日雨。
雨風が強く、コインランドリーと買い物以外は外に出なかった。

夕飯はクラムチャウダー風鹹豆漿(台湾の豆乳スープ)。ポパイの料理特集を読んでてふと思いついて作ってみたが、なかなか良かった。アサリの缶詰、豆腐、ザーサイを豆乳で温め、小ネギ、ピーナッツ、酢、醤油、食べるラー油を振る。とても簡単。

今日はダンボールでゲームのステージのようなものを作り、上の子と人形で遊ぶ。面白くしすぎると、今度はやめるタイミングがなくなってしまい、結局泣きだすので難しい。

夜に横浜の叔母から電話。ミュージシャンが無収入なのではと心配してくれた。90歳になろうとしている祖母が自粛を無視して高島屋に一人で買い物に行ったことに腹が立った、とのこと。

本当は夜中に友だちと公園で軽くソーシャルディスタンス飲みをしようと計画していたのだが、雨で延期に。延期してるうちに緊急事態解除されるのでは?とLINEを送る。たとえ緊急事態解除されたとしても、なんとなく店ではなく外で飲むのがやりたい気分。

5月17日 日曜

8:00ごろ起床。昨日と打って変わって晴れ。
朝から子どもたちの機嫌が悪く、すぐ怒ったり泣いたりしている。こちらもなんだか余裕がなく、言葉が鋭くなる。自分の体感では、なぜか土日にこんなふうになることが多いように感じる。毎日休みのようなものだし、曜日の感覚も極めて希薄なのに、なぜなんだろう。週末は時計がなかなか進まない。今朝の"子育て観音"の表情は、なぜか四千頭身の後藤にしか見えなかった。

15:00ごろにようやく家族で外出。中野へ。完全にマンネリ化しているが、少しでも時計を前に進めるために行動している。ノーベルというバルコニーのある喫茶店があって、最近荒内くんが行ってると聞いたので、前を通りがかった時に見上げてみる。バルコニーには誰もいなかったが、ひょっとしたら中にいたかもしれない。中野ブロードウェイに少しだけ寄る。既に平時と変わらないくらいの人出。自分含め、間違いなく緩んできてると感じる。

夕飯、豚バラ大根、唐揚げ。
長い長い土日がようやく終わる。


5月18日 月曜

7:30起床。小雨。
朝の散歩で久々に子どもがバギーで寝てくれたので、その隙に大急ぎでセブンのフィッシュバーガーをがっつく朝食。ベンチに座って少し休憩しようかと思ったら、子どもが速攻で起きている。なんだよと思ってよく見ると、バギーの雨よけカバーの中にいつの間にか蚊が入りこんでいる。勘弁してくれ。帰りにブックオフが営業再開していたので寄る。前から読みたかった『ヒストリエ』を一気買いする。

録画しておいた『セサミストリート エルモのおうちで遊ぼう』が、なぜだか沁みる。エルモのお父さんが最後に「みんな、身体に気をつけて」と言う何気ない一言が、大人が大人に語りかけるトーンに一瞬変化したことに、心揺さぶられた。子どもたちも気に入ったようで、何度も繰り返し観ている。

高木壮太さんのツイートで吉祥寺オッシュマンズ向かいの立派なイチョウが切られたことを知る。吉祥寺は好きな店がほとんど潰れてしまったので、ああいう古い木くらいしかランドマークとして機能しないなー、と思ってたら、それすら無くなってしまった。うーん、残念。

夕飯、焼きそば、焼売、たこ焼き。謎メニューすぎる。保育園から連絡あり。場合によっては6月末まで自粛を要請するようなことが書いてあり、少し心が折れる。毎日子どものペースに合わせっぱなしで家で好きな音楽を聴くこともできない。先が見えないのはとてもキツい。

5月19日 火曜

7:30起床。今日も雨。
6:00前に起きていた下の子が眠そうなので雨の中抱っこして散歩へ。下の子は雨の日に外出するのが結構好きなようだ。すぐに眠り、雨風をしのげる場所で一時間以上立ちっぱなしで音楽を聴いたりケータイを見たりして過ごす。

昨日僕が自粛生活でかなり参っていたこともあり、妻がコインランドリー行ってしばらく『ヒストリエ』読んできていいよ、と言ってくれる。正直言ってとてもありがたい。洗濯物を廻しながら、外の雨音をBGMにして漫画を読む。

火曜日はテイクアウト・デー。南阿佐ケ谷のプラバートでインド料理のテイクアウト。レモンチキン、ジーラライス、チキンカレー、チーズナン。ここの料理はどれも美味すぎて一口ごとに感想を言ってしまう。調子に乗って食後腹を壊す。

夜、妻がビデオくん(VIDEOTAPEMUSIC)、牧野さん(NRQ)とZoom飲みしている声を聴きながら『ヒストリエ』読む。



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