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『海底47m 古代マヤの死の迷宮』『追龍』映画星取り【7月号映画コラム④】

気付いたら、いわゆる夏休み。そんな気持ちになれない中、ヒヤッとする映画とアジアの極上バディが活躍する映画を星取りします。
(星の数は0~5で、☆☆☆☆☆~★★★★★で表記)

<今回の評者>

渡辺麻紀(映画ライター)
わたなべ・まき●大分県出身。映画ライター。雑誌やWEB、アプリ等でインタビューやレビューを掲載。押井守監督による『誰も語らなかったジブリを語ろう』『シネマの神は細部に宿る』『人生のツボ』等のインタビュー&執筆を担当した。
近況:長期にわたる断捨離&大掃除のおかげで、いろんなものを発掘し、いろいろとお役立ちしそうで大喜び。
折田千鶴子(映画ライター)
おりた・ちづこ●栃木県生まれ。映画ライター、映画評論家。「TV Bros.」のほか、雑誌、ウェブ、映画パンフレットなどで映画レビュー、インタビュー記事、コラムを執筆。TV Bros.とは全くテイストの違う女性誌LEEのWeb版で「折田千鶴子のカルチャーナビ・アネックス」(https://lee.hpplus.jp/feature/193)を不定期連載中。
近況:気分が落ち込むことの多い昨今ですが、湯浅監督の『日本沈没』を勿体ながって1話ずつ鑑賞中。あ、これも気分アゲ系ではないか。
森直人(映画ライター)
もり・なおと●和歌山県生まれ。映画ライター、映画評論家。各種雑誌などで映画コラム、インタビュー記事を執筆。YouTubeチャンネルで配信中の、映画ファンと映画製作者による、映画ファンと映画製作者のための映画トーク番組『活弁シネマ倶楽部』ではMCを担当。
近況:大ヒット中の『今日から俺は!!劇場版』を近いうち家族で観に行く予定です。

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』

海底47m★メイン画像

監督・脚本/ヨハネス・ロバーツ 脚本/アーネスト・リエラ 出演/ソフィー・ネリッセ コリーヌ・フォックス ブリアンヌ・チュー システィーン・スタローン ジョン・コーベット ダヴィ・サントス カイリン・ランボ ブレック・バッシンジャーほか
(2019年/イギリス・アメリカ/90分)

●親同士の再婚で姉妹になったミアとサーシャの仲を取り持つため、父親は船中でサメを鑑賞するツアーに2人を連れていく。2人はマヤ文明の遺跡が眠る海底洞窟を目指すケープダイビングに参加するが、入り組んだ遺跡の中で迷子になってしまう。そこには盲目の巨大人喰いサメがいて…。パニックスリラー『海底47m』シリーズの第2弾。

7月23日(木・祝) 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
©THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD
配給:ギャガ


渡辺麻紀
正しいB級ホラー
海底洞窟に沈んだ古代遺跡、徘徊する巨大な盲目サメ。何も知らずにそこに潜る女子高生4人組。ありがちなアイテムとシチュエーションに少しだけ手を加えて窒息しそうな恐怖を演出している。どうにかなりそうでならない、しつこいくらいのパニックのつるべ打ちはプチ・キャメロン状態。ネタも洞窟ダイビングで『サンクタム』と重なるところもあるしね。伏線もさりげに回収していて、正しいB級ホラーだと思いました。
★★★☆☆

折田千鶴子
副題ほぼ無視サメパニック
邦題、煽りすぎ(笑)。え、マヤ!? と興味津々ガン見したら、物語にほぼ関係なく、遺跡は単に背景で完全にサメ映画。なんだ『海底47m』第2弾か、と知ってみれば、あら、楽しい。夏に1本はこの手の作品で、ツッコミながら悲鳴を上げて大いに楽しみたいもの。暗闇&水中にニョ~ッと巨大サメが現れる瞬間は怖いし、水中迷路も息苦しさを煽るし、誰がサバイブするかも含め、大船に乗った気分で安心して楽しめる。観終えた後の解放感こそ、この映画の醍醐味かも。
★★★☆☆

森直人
星の数より好感持ってます
スマッシュヒットを記録した明快な人喰いザメ映画、『ムー』的な要素を交えつつの第2弾。ティーンホラーの定型を踏まえたアトラクション系とも言えるのだけど、ある意味『ジョーズ』以前、ほとんど1950年代のB級海洋パニック映画に近い原始的な演出が持ち味で、恐怖というより呑気な気分になる。これをコロナ禍の今、劇場で鑑賞するのはなかなか優雅だなあと。ちなみにシルヴェスター・スタローンの愛娘さんが本作でデビュー(全く初演技とのこと)。お顔に父の面影ありますね。
★★☆☆☆

『追龍』

『追龍』:メイン写真

監督・脚本・製作/バリー・ウォン 監督・撮影/ジェイソン・クワン 共同監督/アマン・チャン 出演/ドニー・イェン アンディ・ラウ ケント・チェン フィリップ・キョン ウィルフレッド・ラウ ユー・カン ケント・トンほか
(2017年/中国・香港/128分)

●仕事を求めて香港にやってきたホーは、ヤクザの抗争に参加して逮捕されるが、ホーの実力を見込んだ警察署長のロックは彼を助ける。恩義を感じたホーは裏社会からロックを支え、2人は友情で結ばれていくが…。1960年代に実在した香港マフィアのボスと警察署長をモデルに、裏社会と警察の関係を描く。

7月24日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©2017 Mega-Vision Project Workshop Limited.All Rights Reserved.
配給:インターフィルム

渡辺麻紀
正しい実録映画
舞台となるのは1960年代の香港だが、その再現度が凄い。とりわけ魔窟的な妖しさを誇る九龍城。セットはもちろんうごめく人々まで細心の注意が施されていて、その空気感を見事に伝えている。その中で出会い友情を結ぶドニー・イェンとアンディ・ラウも実録風のリアルな演技を心掛けている。とりわけドニー氏は髪型のせいもあるのか、別人なくらいのなり切りっぷり。ナルシストな部分をしっかり封印していた。★的には3.5です。
★★★☆☆

折田千鶴子
懐かしのザ・香港男気映画
泥臭さ最高! 大スター、ドニー・イェン&アンディ・ラウが、いまだ全身張ってバッキバキに熱演してくれているってだけで、妙に“ありがたや”感に包まれる。1960年代の香港を舞台に、成り上がってく男と刑事のシンパシーと生まれゆく友情って、もろ「ザ・香港映画」なのに、むしろ新鮮、かつノスタルジックにツボ押されまくり。チンピラ風情からドンになっていくドニーの変貌と所々で炸裂するアクション、終始ハンサムで若々しい美魔女ならぬ美魔王アンディの艶を堪能!
★★★★☆

森直人
スコセッシ汁滾る香港活劇
かつて『インファナル・アフェア』が米国で『ディパーテッド』に変換(リメイク)されたわけだが、こちらはバリー・ウォン版『グッドフェローズ』と呼びたくなる実録もの。ペース速めな長距離走のリズム&トーンを持った黒社会の娯楽叙事詩で(編集が技アリ)、満を持しての初顔合わせとなるドニー・イェンとアンディ・ラウの二枚看板にも拍手。音楽面もやたら充実しており、ダニー・ハサウェイの「ザ・ゲットー」などファンキーな選曲が面白い!
★★★★☆

2020年7月の星取り映画はこちら

今回の評者のコラムはこちら


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