見出し画像

【詩の森】527 ずっと気になっていたこと

ずっと気になっていたこと
 
僕には何十年も前から
ずっと気になっていたことがある
仕事にかまけて深入りはしなかったけれど
あれからずっと気になったままだ
それはサラ金が銀行の傘下に収まった
というニュースだった
その頃の僕の認識では
銀行とサラ金は天と地ほどに違っていた
敢えていえば銀行は善で
サラ金は悪ぐらいの開きがあったのだ
そして最近読んだ『円の支配者』という本で
その謎がようやく解けたのである
 
『何となく気になる』というのは
僕らの無意識のセンサーが
どこか腑に落ちないものや
理不尽なもの
違和感のあるものなどを検知して
僕らに知らせてくれる
シグナルなのではないだろうか
改めて調べてみると2004年に
アコムは三菱UFJグループの傘下に
プロミスは三井住友グループの傘下に収まっていた
あれ程社会問題化したサラ金が
今でも殆ど生き残っているのだ
 
それどころか
1970年代から銀行はすでに
サラ金に対して資金供給していたという
『円の支配者』によれば
銀行は無からお金を作るという
大きな特権をもっている
それが信用創造である
銀行は大口の顧客に対しては
信用創造で作ったお金を直接融資し
小口の顧客に対しては
傘下のサラ金を通して
高金利でぼろ儲けしている
 
 
つまりサラ金だけが悪ではなく
銀行とサラ金は初めから結託していた
ということなのだ
殆どの民主主義国では
民間の組織である中央銀行と市中の銀行が
通貨発行権を握っているといわれる
日本では1997年の日本銀行法により
中央銀行が実質的に独立した
だから政府は銀行から借金するしかないのだ
通貨発行権を巡っては
戦費にまつわる黒い歴史があると
いわれている
 
ここで『円の支配者』(88頁)から
信用創造のプロセスを引用してみよう
あなたが銀行に千円預け、中央銀行は預金準備率を
一パーセントに設定しているとする。
この場合、銀行は九百九十円貸し出し、
十円(千円の一%)を預金準備として用意する
と考えたくなる。
しかし、じつはそうならない。
そうではなく、
銀行はあなたの預金を百回まで貸し出すことができる。
銀行はあなたの新規預金千円をもとに、
十万円貸すことが可能なのだ。(あなたの預金千円は、
この十万円の一%として預金準備にあてられる)。
どうして、そんなことができるのか?
銀行は追加の十万円をどこで手に入れたのか?
どこからも手に入れてはいない。
銀行が無から創り出したのである。
 
20年来の謎が解けて
僕は逆に暗澹たる気持ちになった
毎年日本の国家予算の1/3が
借金返済に消えていく
そして政府の借金の大半は
銀行が無から創り出して貸付けたものだったのだ
これほどの不公平がまたとあろうか
大手町・丸の内界隈には
大手銀行の本社ビルがそそり立っている
打ち出の小槌を振るたびに
ビルは高く高く伸びていったことだろう
まるで天を突くかのように―――
 
各国の中央銀行はさらに
世界の中央銀行と繋がって
闇の国際銀行権力として世界を牛耳っているらしい
通貨発行権という切り口でみると
世界の様相がまるで違って見えてくる
何か気になることがあったら
躊躇わずに調べてみることだ
僕は20年もほったらかしにしてしまったけれど
そこには何か重大なカラクリが
隠されているかもしれない
僕らの無意識のセンサーは
案外優秀なのではないだろうか
 

円の支配者 リチャード・A・ヴェルナー著 草思社
 
2023.7.31

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?