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【詩の森】474 滅私奉公

滅私奉公
 
君子は危うきに近寄らず
という言葉がある
君子でなくても
危ないところを避けるのは
人の本能だろう
 
政治の世界が
何やら物騒な感じがするのは
悪巧みとか権力争いとか
傍目には魑魅魍魎の巣窟のように
見えるからかもしれない
 
それは政治の世界が
オープンではないからだろう
多くの市民にとって
政治家はよく知らない人たちばかり
国政ともなれば尚更だろう
 
素晴らしいと思える人は
むしろ例外で
国会での野次や強行採決の場面を見ると
何事かと思わず
天を仰がすにはいられない
 
そんなわけだから
投票所へもいつしか足が遠のいて
国民の半分がそっぽを向いているのが
この国の政治の現状だろう
しかし誰も危機感を抱かない
 
それはこの国にとって民主制が
いの一番というほどの価値でもないから
ではあるまいか
聖徳太子の昔からこの国は何といっても
和の国・大和なのだ
 
民主制の前提にあるのは
個人であり個人の尊厳である
しかし和の前提は
滅私奉公という言葉通り
個人である前に共同体の一員なのだ
 
奉公先が一族や会社
あるいは国家止まりなら
そりの合わない国とは
一致団結して戦うということにもなりかねない
戦前がまさにそうだったのだろう
 
しかし僕らがもう一皮剥けて
奉公先が人類ということになれば
日本人は世界をリードできるのではあるまいか
これまでの軍事力に代わって
今や資本家が牛耳るこの世界を―――
 
奉公とは公に奉仕することだ
人間の活動が地球環境にも影響を及ぼすほど
巨大化した結果
僕らの思考のなかには地球が
すっぽりと入ってしまった
 
誰もが地球を考える時代
そんな時代がかつてあっただろうか
僕らは否応なく
地球市民になりつつある
公が地球になりつつあるのだ
 
原発NO!と叫ぶ人たちも
核兵器を禁止しようと活動する人たちも
すでに地球市民ではないだろうか
そんな彼らの願いを
国の政治が阻んでいる―――

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