自分は絶対大丈夫、なんてことはないのだ
あぁ、ついに踏切の遮断機が降りる。
先日3年ぶりに運転をした。
主人と共に単身赴任先から乗用車も戻ってきたからだ。
本当はいない間、自家用車がない間も時間貸しの車があった。
だが運転が得意でも好きでもない。
その上自宅の車と車種も違えば、時間延長の手続きも面倒たからほとんど活用しなかった。
実家へのルートだけは子供の幼い頃便利だったので運転していたから主人の単身赴任前は実家までの運転だけは自信があった。
だから3年ぶりに運転してみたのだ。
17才の次男を横に乗せ、不安そうな彼が
ほんとうに大丈夫なの?
と言うのに
大丈夫。雀百まで踊り忘れずって言うじゃない。自転車に乗るようなもんだよ。
と言い、帰りにこの狭い立体駐車場に入る自信はないんだけど、と思いながらエンジンをかける。
隣駅の踏切に差し掛かると遮断機が降りるので停車し、その時にニュートラルに入れサイドブレーキも引いたのだと思う。
遮断機が開きいざ、となったとき、ギアがきちんと入らなかったのだろうか。
踏切の真ん中で車が止まってしまった。
えー!私も焦るが息子も焦っている。
そして遮断機が降りる。
まずいと焦れば焦るほど頭は真っ白になり分からなくなる。
こうして「踏切内に乗用車が侵入、立ち往生」という状態が出来上がる。
私は一生そんなこととを無縁だと思っていた。
というか、ほとんどの人がそう思っていることだろう。
いつも電車遅延で文句を言っていたが自分が原因になるとは思わなかった。
息子はカンカンと鳴り出すと
じゃ、オレ降りるから
と助手席から出ていく。
えー!お母さんを見捨てるの?
たまらず後ろの遮断機前で止まっているトラックの運転手に声をかける。
運転手は親切に
オレが後ろから押してやるから
と言ってくる。
というか私は今の状態が自分で把握できていないのです。どうなってしまったのか?説明をして欲しい。
そう思いつつ、焦って言葉に出来ないのだから、相手には通じない。エンストを起こしたと思ったらしい。
なので、なんだか分からない。どうして止まったのか?
といってみる。
運転手はエンジンをふかす。エンジン音がびびき
ニュートラルにきちんと入れたらいい
という。
ニュートラル?ニュートラルってなんだっけ?
NとかDとかいってくれないと大パニック状態の3年ぶりの運転の私には理解できない。
そんなことトラックの運転手が知るよしもないが。
なので仕方なく非常停止ボタンを押す。
けたたましいベルの音の中、トラックの運転手とその後ろの宅急便屋の制服を着た男性が車を踏切内から押し出してくれた。
ほっとし、お礼をいい、その足で駅職員に状況を説明しに向かう。
普段ならのんびりした構内を白髪頭の駅職員がふたり走り回っている。
すみません。私が止めてしまいました。
踏切でもベルが鳴ってます。止めてください。
私の話のどこまでが伝わったのかわからないが、踏切も鳴ってるの?
と言う。
どうやら構内でもベルが鳴らされたらしい。
こんなことはそんなに起きることではないからか、駅員も止め方分からないのか携帯電話でどこかに電話している。
どうやら構内で鳴らされたものは構内で止めるが踏切内は入り口の精算の時に駅員がいる場所まで行かないとならないらしい。
彼らに続いて一緒に走るも相手は
あぁ、疲れた
と言っている。無理もない、定年再雇用の年代だろう。疲れされてほんとうに申し訳ない。
ベルが鳴り終わり遮断機が開くまで10分ほど。
その後運転再開まで少し間があって、電車は15分ほど遅れたようだった。
閉じていた入り口のシャッターが上がり
事情を説明する為に待っていた私に、
えーっと、非常停止ボタンを押したんですよね?
と聞く。
それだけでなく止めた張本人なのだと言うことを告げると、
ちょっと待ってて。
と再びどこかに携帯電話をかけている。
まず状況見聞なんだけど
とことのいきさつを聞かれ、名前と住所と電話番号を記入し、再び謝って息子のもとに戻る。
踏切の横で待つ息子に
ごめん、怖い思いさせて
というと、
オレのいたたまらなさ。
トラックと宅急便屋はこの踏切より◯◯街道抜けた方が早いよなとかいってるし、ずっと謝り続けだし。
そんなこといって早々に私を見捨てて出てったじゃない。お母さんちょっとショックだったし
と言うと、
いやこのままここで死んじゃうのは嫌でしょう。
オレが非常停止ボタン押さないと。
周りの奴ら押さないで出てったオレに押せ押せいうんだよ。
踏切開いたらトラックや宅急便屋の運転手はとっくに行っちゃったよ。
あー、この人「雀百まで」とかいって3年で忘れてるじゃんって思ったし。
と言う。いや何も言い返せない。
とにかくこうして無事でいるから笑い事ですんだけど。
帰宅して長男いわく、
Twitterでは影響で到着が1時間遅れたってボヤいている人いたみたいだよ。
と教えてくれる。なんでもすぐ呟かれて簡単に知らない人の日常も文句も見られるのは便利ながら要らぬ謝罪も起こさせる。
しかしほんとうに申し訳ないことをしてしまった。
自分は絶対起こさないなんてことはないのだなと肝に命じたできことだった。
まだまだたくさんの記事を書いていきたいと思っています。私のやる気スイッチを押してくださーい!