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こけしづくりと地域づくり

東北の温泉地で、湯治に訪れるお客さんや子どもたちのために作ったのが始まりとされる「こけし」。

「子授けし」というお祝いの意味や、子どもたちの元気な成長を願う気持ちが込められた縁起物です。

宮城県仙台市の鳴子温泉郷は、日本有数のこけしの産地として知られる、「こけしの里」。

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東京からこのまちに移住された木工作家の加賀浩嗣さんは、こけしずくしの喫茶店「準喫茶カガモク」をオープンさせ、自らも木工作家としてこけしグッズを作られています。

鳴子温泉郷という土地でも、地域伝統のこけし業界の中でも「よそ者」。

人気のこけしグッズには、移住者だからこその新しい視点で地域と地域産業の活性化に貢献したいという、加賀さんの願いが込められています。

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奥さんの地元、鳴子に移住。

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大阪出身で、元は京都で理学療法士として働いていた加賀浩嗣さん。

学生の頃に鳴子出身の現在の奥さんと出会う。その後結婚。奥さんの就職を機に東京へ移った。理学療法士として働いていた頃から趣味で木工づくりをしていた加賀さん。東京移住後は木工作家として活動を始めた。

「東京時代は木工雑貨を作り、色々なお店に卸しながら細々と生計を立てていました。妻からは出会った当初よりいずれは鳴子に戻って地域づくりに携わりたいという話をよくされていました。交際中も鳴子によく遊びに来て、魅力的なまちだと思っていました。こけしに対してもじわじわとその魅力にハマっていきました。当時からもし今後鳴子に移り住むなら自分は何ができるかと考えていて、鳴子の伝統工芸であるこけしと自分の木工を組み合わせられたらと東京の頃からこけし雑貨作りを始めていたんです。」

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その後二人の子供に恵まれた加賀さん。しかし次男が未熟児として生まれる。大事にはいたらずその後無事にすくすく育っていったが、それを機に子育ての環境について真剣に考えるようになった。

「二人とも男の子ということもあり、自然の中で育てたいという気持ちが大きかったです。次男の件もあり、これを機に五年前に鳴子に移住をして来ました。」

こけしづくりの職人のことを工人と呼ぶ。ここ鳴子は日本有数のこけし作りの産地であり、日本で一番こけしの工人が多くいる場所である。毎年「全国こけし祭り」も開催され、全国からこけしファンが集まる。しかし最近では工人も高齢化、深刻な後継問題は鳴子も例外ではない。現在四十名ほどいる鳴子の工人の中で実際に活動されているのは十名ほどだと言う。

「私は伝統こけしの様式美も好きですが、一番はこけし本来のフォルムやデザインに強く惹かれました。私は工人という立場ではないですが、伝統こけしを尊重しながらも新しいアプローチをするこけし作家として活動したいと思い、この世界に飛び込みました。本来の置いて楽しむこけしの用途にとらわれず、使いながら楽しめるようなこけしをモチーフにした小物雑貨を主に作っています。」

こけし愛あふれる“準”喫茶のオープン。

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こけしづくり作家として鳴子に移住してきた加賀さん。工人という立場ではないからこそ彼のこけしに対するアイディア、そして活動領域は無限だ。まず特筆すべきは“準”喫茶『カガモク』のオープン。

「これまで商品を店舗に卸すことがほとんどで人と直接接することが少なかったので、こけし好きや地域の人が集まれる場づくりをしたいと鳴子移住当初から奥さんとも話をしていました。」

建物は全て奥さんと手作り。こけし愛と加賀さんのアイディアやユーモアが溢れた空間。入り口のドアノブからはじまり、ちゃぶ台の脚やら壁や装飾と店内の至るところに様々なこけしたちが顔を出す。お店は金曜日から日曜日の営業ということもあり、“準”喫茶にしているそうだ。

「こけしをアイコンに地域づくりを目的にこのお店をオープンしました。ものづくりの延長に地域づくりはあると思っています。ここ鳴子は温泉や紅葉など豊かな環境があり、伝統工芸のこけしもありこんなにもいい場所であるにもかかわらず、人口も減り、観光客も減り、こけし産業も下火になりつつあります。元気がなくなっています。自分はこの土地、そしてこけしづくりの業界としてもよそ者だからこその視点でなんとか貢献したいと思い活動を続けています。」

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こけしづくりと地域づくりは似ている。

準喫茶「カガモク」では月に一回「カレーの会」と題して、地域の話し合いをする会を開いている。
その会には鳴子の地域の人たちはもちろん、近郊の山形県最上地区、遠方だと石巻市からの常連もいるそうだ。

「回を重ねるごとにたくさんの方に来ていただけるようになりました。春の桜の時期や菜の花フェスティバル開催期間中、秋の紅葉の時期は観光客も多く、インバウンドの方も多いです『カガモク』では木工ワークショップも開催し、自分だけのオリジナル豆こけしを製作できます。

ものづくりと地域づくりは似ていると思うんです。木工雑貨づくりももともとの木という素材があり、自分の視点や力、アイディアで作り出します。資源豊かな鳴子も組み合わせ次第で変わってくるはずです。
大阪や東京と大都市に住んでいた頃は自分たちが地域をつくるなんて考えにも至らなかったです。しかしこのまちのように人口のパイが少ない場所だと自分の声は地域に届き、行動次第で何かしら変化する可能性が高いです。
奥さんのようなUターン者や僕のような移住者が少しずつ地域のために活動すれば、ここ鳴子の経済やこけしの産業にも何かしら貢献できると思っています。

こけしの魅力の一つでもありますが、こけしの形やデザインは地域や場所によっても違いますし、また工人それぞれ手作りのため表情も違います。まさにそれぞれ個性を持っているのがこけしの魅力。自分自身も、そしてここ鳴子という地域も、こけしのようにほかにはない個性を持てたらと思っています。」

林業、教育、さらなる移住者への着目

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「工人のみなさんもたまにお店に遊びに来てくれますし、温泉でたまたまお会いしてお話したり、日々仲良くさせていただいてます。
櫻井こけし店の6代目の櫻井尚道さんはUターンで工人を後継し、若手の工人として期待されている方です。こけしはミズキという木材を使うのですが、だんだんその木も少なくなり最近では他県のものを仕入れたりしています。昨年からは櫻井こけし店とNPOしんりんが主催の『こけしの森』という植樹祭が開催され、僕も参加させていただきました。
カガモクの活動としては、NPOしんりんと旅館関係者で『鳴子温泉もりたびの会』を立ち上げました。林業体験をしながら、こけしづくり体験をし、森や木を通して鳴子の魅力を再発見する取り組みです。環境、そして教育も視野に入れて考えています。地域を守るということはそこに住む子供たちを守るということにつながっていると思います。今後は子供向けのプログラムをもっと増やして、地域全体が自然学校のようにしていきたいです。」

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こけしづくり、場づくり、地域づくり。林業や教育にも着目する加賀さんは現在、彼と同じように鳴子に移住してくれる方の“村”づくりを始めているそうだ。

「大きな観光バスで団体さんが温泉宿にやって来て、地域に足を踏み入れることなく帰っていく。これまでの鳴子の観光スタイルです。
しかし温泉や旅館の廃業も増え、このこけし産業も高齢化と少しずつガタが来ている状況です。それには地域の暮らしと観光というものが別の話になってしまっているのが問題だと思います。量より質への転換が求めらている中で、この地域の活動に共感してくれる人たちを増やし、そのよそものたちの環境づくりが必要だと考えました。
現在移住者向けの賃貸アパート『サスティナヴィレッジ鳴子』を建設にも携わっています。現在2棟が完成し、全部で4棟が出来上がる予定です。さらにコテージも隣接させ、体験宿泊型のプログラムのスペースも作る予定です。かなり壮大な構想が鳴子で今まさにスタートしています。」

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▼準喫茶カガモクさんの商品はこちら!(TURNS商店)


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