<第2回>社員のキャリアに関するモヤモヤの正体とは?      ~ 社員と会社の良い関係を構築するために


前回述べたように、自分のキャリアデザインに関して「モヤモヤ」している社員が増えています。
 僕が若かった1980年代、90年代までは、モヤモヤなんて概念はありませんでした。高度成長期から安定成長期、そしてバブルの時代まで、日本経済はそれなりに成長し、そして社員はその分け前を享受していました。しかし、バブルが崩壊した1990年以降は豊かになるといった実感のないまま、会社の中での自己実現の方法に関して、一人ひとりの社員に委ねられることになりました。
 
 社員は懸命に自己実現の方法を模索し、そして、一部の有能な社員を除いては、そうした行為のシンドさに疲れた大半の社員は結局、「ぶら下がり社員」として、会社と自分の距離について再定義を行うこととなりました。これで定年、そしてそのあとの余生も上手く逃げおおせれば、社員も、そして会社もハッピーだったのかもしれないのですが、そんなわけには行きません。今や先進国の中で一番社員の「やる気」が低く、「勉強意欲」も低い、そして仕事の後の呑み会ではあんなに会社のことを話しているはずなのに会社へのロイヤリティが極めて低い、といった調査結果が続々発表されている日本の「サラリーマン」と、そしてグローバルな競争の中では、米国や中国に劣後してしまった日本の企業という図式が顕著になってしまっています。中には業績低迷の理由を社員の質の低下に求めるようなダメな会社、会社経営者まで増えているのではないでしょうか。企業としてはそこまでではないとしても、経営者が「なかなか社員が育たない」と嘆いている会社は多いのではないでしょうか。

 加えて「人生100年時代」「転職奨励、副業奨励」といったこれまでにない社員のキャリアに関する世に中の変化が、社員のモヤモヤを増加させているように思います。
 つまり、自分自身を取り巻く環境の変化を感知しながら、どう対処にていいのかわからないことが社員のモヤモヤの根源にあるのではないかと思うのです。メディア等で報じられている姿と己と自社の現実の大きなギャップがモヤモヤの原因の一つでもあります。

 しかし、このモヤモヤに関して社員自身も会社も、決してネガティブになる必要はありません。モヤモヤを感じだしたということは、「自分も変わらなければならないのではないか」という小さな意識の変化が育ってきているということだからです。

 では、どうしたら、このモヤモヤを解消することが出来るのでしょうか?
 前回は、社員一人ひとりが自分のキャリアに向き合うこと、そしてそれを促す「仕組み」を会社が用意し、社員と会社が社員の人財育成に取組むこと、と書きました。

 まずは社員一人ひとりが自分のキャリアデザインに対して、真面目に取組もうという意識を持つこと、が必要なのですが、そのためには、自分の過去から今に至る自分の経験や自分の良さ、可能性、志向などについて、イメージを膨らませてワクワク(ポジティブ)に見つめ直すこと、つまり自分自身を理解すること⇨自分のキャリア形成について、再構築することが重要なのです。

 社員が自分のキャリアデザインに真面目に取組み、意識を高めていくことは、会社にとっても大きな力になるのですから、上記の取組みに対して会社が適切な「仕組み」を設けることが必要です。
 その際重要なことは、「会社の論理」だけで、社員のキャリア開発を考えない、すなわち社員一人ひとりの人生という社員目線での仕組みを作ることだと思います。主語が会社、ということでは、これからの時代、社員の幸せには繋がりません。
 社外のキャリアコンサルタントなどを有効に活用し、客観的で、社会に通用するキャリアデザインの仕組みを構築することが、社員自身のモヤモヤ解消に役立つのだと思うのです。

 もちろん、キャリア開発にあたっては、一義的には今いる会社という枠組みで考えることは当然です。特に、社内のローテーションによって、今の仕事とは違う職種を報酬ダウンなしに経験できるのは社員にとって大きなメリットです(ただ逆に、社員の志向と会社の行き方にあまりにも大きい場合は、会社としても自社に縛り付けておくのは両者にとって不幸になります)。「会社」という器を有効に活用して、そこにいる社員が的確なキャリア開発を実現し、その過程の中で会社も成長していく、そんな「脱社畜生産」の好循環を作っていくことが重要なのです。
 そもそも、帰属意識を強調するあまり、忖度ばかりの社畜社員を量産しておきながら、「ウチの社員は覇気がない」とか、「横紙破りのアイデアが出てこない」と言う会社幹部は今の時代では、「そんな社員にしたのはアナタだろう」とブーメランを投げつけられることになるのでしょう。

 今後の社員と会社の関係は、自律した社員と、社員自身の幸せを考える会社というパートナーとしての「大人の関係」になっていくのだと思います。

 それでは、社員が自分自身のキャリアに向合って、キャリア形成を再構築するというのはどういうことなのか?

 次回具体的に述べていきたいと思っています。

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