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連載「マラソンに手を挙げたら」サブ3.5への挑戦


第1回:高木コーチ来る。2020年7月7日

正直なところ、なぜマラソンを始めたのか、分からない。

マラソンの選手や箱根駅伝を走る大学や選手を取材して刺激を受けたとか、東海大の両角速監督が50歳を超えても腰高の美しいフォームで走る姿に憧れてとか、いろいろあるが、どれも後付のような気がする。

昨年、湘南国際マラソンにエントリーした。
それまで長距離を含めマラソンは見てるだけで、走りたいとかまったく思わなかった。神野大地選手がトレーニングで喘ぐ姿や駅伝を走る学生のハードな練習を見るにつけ、「無理だ」「えぐいな」と思っていた。
そう思っていたはずなのに、いきなりのマラソンエントリー。
どこかのネジが外れたのか、あるいは意識の深淵に走ることへの欲求が元々あったのかもしれないが、人間も動物だ。さして深く考えることもなく、本能的に「走りたい」と思って手を挙げることもあるのではないか。

問題は、手を挙げた後、どうするのか。
何の練習もせずに走れば、歩くのに毛が生えた程度のタイムになる。
それって、手を挙げた意味があるのか。

もともとドロドロの汗をかき、追い詰められるのが好きな昭和のドM男。
目標がないと戦えないので、設定はサブ4にした。
最初の単独登頂にはちょっとキツいけど、そのくらいじゃないと本気にならないし、「サブ4は上位20%が達成するランナーの証」と記事にあったので、やるなら証を目指そうと思ったのだ。
結果的に3時間54分で走り切ったが、この達成感は半端なかった。
このプロセスは、今後、書いていきます。

元青学大陸上部主務、現チーム神野

さて、今回のサブ3.5挑戦である。
昨年12月1日、湘南国際マラソンのタイムが3時間54分。
30分もタイムを上げるのは、おっさんには簡単なことではない。
サブ4の時は、「こんな感じかなぁ」とマラソンのトレーニングの動画や記事を見つつ、自分でメニューを組み立てた。
それがけっこう楽しかったので、”ぼっち練”も苦にならなかった。
だが、もう一段階、レベルを上げるとなると今までと同じメニューでは先に進めない。もちろん設定タイムを上げるなど工夫はできるけど、練習の質の上げるのはひとりでは限界があるかなと感じていた。そう思えるようになっただけでも「成長したじゃん」と思えるが、さて、どうするか。

そこで、高木聖也くんの登場である。
彼は、元青学大陸上部主務で現在は神野選手のコーチとマネージャーをしている。サブエガ狙いのマラソンランナーでもある。
神野選手の取材のやりとりをいろいろする中で「今度、一緒に走ろう」となり、走る機会を得た。
で、今回の練習の終わりに「サブ3.5クリアを一緒に!!」と月数回の練習のお願いをした。高木くんは、優しいので笑顔で引き受けてくれた。
七夕に僕の走りを救ってくれる彦星様が現われたのだ。

初トラックは快適で、楽しい

7日の夜は蒸し暑かった。
織田フィールドは、なかなかの人の数。個人やチームが集まって練習し、トラック上の熱がすごい。
トラック2周のアップを終えて、練習スタート。
これがこの日のメニューである。

1000+400+200 3set

これまでインターバル走っぽいことは個人でもしていたけど、ガチでやったことはなかった。もちろんトラックの経験もなし。
トラック、どんな感じ?
どのくらいの設定でやるんだろう。
ちょっとワクワクドキドキしていた。初は、なんでも楽しいものだ。

1本目、1000m、様子見でということだけで、タイムは告知されず、ただ高木くんの後を追う。感覚的は、いつもの自分のペースよりも早いのだけはわかる。ただ、息はそれほど上がらず、ついていけた。
さっそく汗が噴き出し、顔中がしっとり濡れる。
200mのジョグでつないで、400mスタート。
これもいい感じ。高木くんの背中についていけるけど、まぁ1本目で離れていたら正直、終わっている。
200mのジョグでつないで、次は200m、44秒9。これで、キロ3分45秒レベル。スピードを体に覚えさせる感じだろうか。

5分レストで給水し、2本目スタート。
1000m、ペースが上がるもついていける。肺も足もまだ余裕がある。
トラックは、ロードと違ってめちゃくちゃ走りやすい。うちの近所の海岸沿いのロードのように砂も枝もゴミもない。もちろん信号もない。余計なことを考えず、ただ前を追って走るという作業に専念、集中できる。景色は、変わらないけど、周囲には多くのランナーが走り、レースとは違ったアドレナリンが出る。慣れたら、こんなにテンションが上がることはないのかもしれないけど、最初のトラックは刺激的だ。

400m、200mも少し余裕を持って走れた。
「あれ、イケてるじゃん」
自分の潜在能力に気が付いていないサイヤ人のようだ。しかし、そんな激しい思い込みは、3本目にあっさり覆されることになる。

3本目、僕は犬になった

3本目、1000m、スタートするとすぐに足にダルさを感じた。
太ももからふくらはぎに向けてジワジワ重たいもんが下りてくる。
「なんだ、これ!!」
いきなりやってきた鈍重感に笑えた。
400mほど走って、ようやく動きが戻るがダルさは変わらない。ペースが上がり、前2本ほどの余裕もない。高木くんが僕が付いて来ているか、チラチラうしろを見て、確認してくれる。
「ここでタレたら終わる」
足は重いが表情には出さず、なんとかクリアした。

個人的には、次の400mがこの日のクライマックスだった。
息が荒くなり、走りながら頭に思い浮かべたのは、ふたつ。

タレない。フォームを崩さない。

いつも以上のペースで走ると、どちらかが疎かになる。
ついていくために、フォームを崩してでも必死に走るか。多少、遅れてもフォームを崩さないでいくのか。
どっちもイヤだ。
両方、途中崩壊しないように我慢した。
直線に入ると、もうついていくのだけで必死。息を吐いて呼吸を整えるけど、ハーハーが止まらない。でも、この感じ嫌いじゃない。必死に腕を振って、なんとかついていけた。
ラスト200mは、もう何も考えず、遠くにご主人様を見つけて喜び勇んで走る犬のごとく、ダッシュ。高木君は余裕だけど、僕レベルではほぼ全力疾走。「3分7秒レベル」と高木くんは教えてくれたけど、これで42.195キロを走るなんて、改めてマラソン選手の凄さを感じた。
でも、感覚的にラストの400mよりはちょっと余裕あった。

これが、この日の練習データ。

1000+400+200
p:4’20/1’36(4’00/pkm)/44(3’40/pkm)
r:200/200/
set:5min

①4’20”5-1’36”9-44”9
②4’14”3-1’36”7-43”5
③3’57”8-1’26”5-37”7

初練習後のメッセージ

終って、しばらくして高木くんからラインがきた。
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今日は現状把握も兼ねての練習でしたが、結論から言うとサブ3.5はかなり現実的な目標だと思います。
夏は暑いですし、今は大会も定まらない状況なので、7-9月は質を意識した練習中心に行って、マラソンペースに対するスピードの余裕度をあげていきましょう。

マラソン練習の理論は多々ありますが、僕もが理論的にもしっかりしてと感じて参考にしていたのは「ダニエルズのランニングフォーミラ」です。
その中で、フルマラソンのタイムに応じた各距離の目標タイムがあります。
目標を3:30とするなら、

1500m 5’59
3000m 12’46
5000m 21’59
10000m 45’36
ハーフ 1:41:06

ランナーとしてのタイプ(スピード or 持久系)にもよるので、個体差はもちろんあるのですがかなり参考にはなります。
俊さんは今日の練習見る限りスピードあるタイプだと思うので、もう少し上の水準の、

1500m 5’45
3000m 12’30
5000m 21’30

くらいのスピード、スピード持久力を身につけられるような組み立てていきましょう。
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現実的な目標……。
ちょっと嬉しかったなぁ。
あと5キロぐらいジョグができそうだなと思ったけど、やめといてよかった。あんまりやり過ぎると、あちこち痛くなるので、自制が大事。
練習での出力が高かったのだろう、足に心地よい疲労感。
とりあえず初回の練習はクリアできた。
高木コーチのサポートが心強い。
あとは、自分次第だが、やる気はたぎっている。

これから練習メニュー等含めて、そのプロセスを書いていきます。
それが同レベルのランナーの参考に少しでもなればと思う。

つづく

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