第1210回 税金がかかってもいいと思われないと
父と娘の対話 第七夜
聞いてくれよ、怜香。
なぁに?
近隣の博物館の人に聞いたんだけど、コロナで緊急事態出てた時に
施設閉館するか迷ってたら住民から「なんでこんな時に開館してるんだ!税金の無駄遣いじゃないか」ってクレーム来たことがあったんだって。
そういう人もいるよね〜
全ての人が満足する行政サービスなんて無理だろうけどね。
一生懸命やってて「無駄だ」って言われちゃうと悲しいよね。
やっぱり博物館ってたくさんお金かかるものでしょ?
そうだね。「ハコモノ行政」っていうように施設を作ってそれを維持管理して運営していくってものすごいお金がかかるからね。
入館料も数百円のところ多いだろうし。元とれないんじゃないの?
採算がとれないからこそ税金を使って行政が運営する、ということにもなるのです。
パパは歴史とか文化財とか好きだからそれでもいいだろうけど、「趣味は博物館にいくことです」っていう人が「いけすかない」って思う人も一定数いるだろうから。
そうなんだよ。遺跡の中でも「史跡」として整備する、という建前で税金を使って土地を買い上げて実際は雑草が生えているだけっていうところもあったりするからね。
やっぱり「ちゃんと活用しています」って納得してもらえるようにしないとだめだよね。
そのためにはさらに税金を投入して綺麗にしておかないとダメだし…
なんかどつぼにハマっていく感じね。
どう頑張ったって全ての人に納得してもらうのは無理だとしても
コアなファンだけではなくて常に門戸を開いて新規顧客を増やす努力はしていく必要はあると思うよ。
他にもこないだこんなニュースを見たんだけど
コロナ禍で心が傷ついた人に「処方箋」として美術館にいくことを勧めるというプロジェクトがベルギーで始まったという話題。
なんかいかにもヨーロッパって感じね。
日本でもやればいいのに!って思うけど、無理だろうなぁ。
博物館に行ったらなんか勉強しないと!って気持ちになって心が休まらない人もいると思うよ。
そこなんだよ。博物館の楽しみ方は千人いたら千通りでいいと思うんだよ。
教養とか知識を得たい人はもちろん、なんとなく綺麗なもの、長い歴史を経て受け継がれてきたもの、製作者の思いが込められているけど受け取り方は自由な作品とか、そういうものをなんとなく眺めているのが好き、っていうだけでもいいと思う。
それはたしかにそうね。
考えても見てよ、水族館だって博物館の一種だけど、
海の生き物の生態をしっかり学ぶんだ!
っていう人よりも
ペンギンかわいー
あの魚うまそー
クラゲみてるとなんか落ち着くー
っていうお客さんの方が多いでしょ。
歴史博物館だってそれでもいいんでない?
そんな発想はなかった。
でしょ?これは幼少期に博物館というものとどう関わったか、という問題に帰結する気がする。
ファーストコンタクトが大事ってことね。
やっぱり子供向けの普及活動って大事なんだなぁ。
気軽に博物館に行くことができる社会の方がなんかいいよね。
税金かかってても地域に博物館があってよかった、って言ってもらえるようにしないと、だね。
今日の対話は前向きな感じで終われそうね。
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