見出し画像

第658回 貴方の好きな1番好きな本は

1、読書記録100

「質問箱」というサービスで題名のような質問をいただきました。

読書好きの諸兄姉様たちなら共感してくれるかと思いますが

1番なんてそうそう選べるものなんかじゃないですよね。

それでもあえて一つ挙げるとしたら私はこちらにします。

ローマ帝国最盛期に生きた作家、プルタルコスがギリシャ・ローマの英雄たちの伝記をまとめた著作です。

2、博覧狂気(ママ)

プルタルコスはギリシャのカイロネイアという街出身で、アテナイに遊学してプラトン学派に学び、教養を身につけたようです。

ローマの上流階級とも交遊し、ときのトラヤヌス帝からも敬意を持って遇されていたとのこと。

著作目録には227編が挙げられ、目録にない現存作品を挙げると260を越える作品を書き残したとされます。

その内容も伝記の他にも哲学や自然科学などと幅広く、

その教養と人格を慕って彼の家には多くの学徒が集っていたと編者は記しています。

本作品はギリシア人とローマ人の互いに似たところのある人物を組み合わせた22組の対比列伝と4編の単独伝記から構成されています。

例えばアレキサンドロスとカエサルが比較されている、という感じです。

散逸して残っていないものとしてはローマ皇帝のネロやギリシャの英雄ヘラクレスなどがあるのは残念ですね。

プルタルコス自身が執筆動機として

歴史をあたかも鏡のように使って自分の生活を整え、偉人たちの徳性に近づけたいと心がけている

と書き残しているのが興味深いです。

かのシェイクスピアも本書を元にローマ史劇を書いたとされ、

我が国にも戦時中から訳書が発刊されるなど

多くの読書人に愛されてきました。

3、思い出補正

なぜこれが一番か、と言いますと

恩師が

無人島に一冊本を持っていけるとしたらこれを持っていく

と言いながら卒業する私に贈ってくれたんです。

彼は私の人生の師とも言うべき人でした。

根っからの歴史好きの方ならあるあるかもしれませんが

中学生までにすでに歴史オタクだった私は

実は大人をナメてたんです。

社会科教師でも私よりも(歴史に関しては)知識がなかったんですから。

頭でっかちの小僧の鼻っ柱を折ってくれたのが

高校で出会ったこの先生で、

どんな本を読んでいって質問しても

すぐにそれを上回る知識で返されてしまう、そんな方でした。

受験が近くなると有志を集めて早朝特別講座を開いてくれて

そこに集まるのは同類ばかりなので

先生が

これは試験に出るぞ、しっかり覚えとけ

と言うところなんて用語集にも小さくしかのっていないような

マニアックな知識だったりするんです。

もうそれが楽しくて。

あの先生の姿が私の理想の大人なのかもしれません。

志望校に合格したことを真っ先に伝えたのも彼だったし、

高校教師なのに大学教授みたいに卒業生有志で最終講義を企画したり

地元で就職して発掘調査に携わった時

初めての現地説明会にも手紙を出してきてもらったことを

昨日のように思い出します。

その後も年賀状だけのやりとりはしていましたが

今年の正月に年賀状の返信が奥様からあり、お亡くなりになったことを知りました。


あの時の先生のように、教え子に

私は無人島に一冊だけ本をもっていけるとしたら、この本だ

と贈れる本にはまだ出会っていません。

いつか出会えることを願って今日も精進していきます。


本日も最後までお付き合いくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?