第21回 発掘は段取り力 4
1、導入
五月は学会シーズン。
私も例に漏れず所属する学会で発表をしてきました。
定められた発表時間以上に内容を盛り過ぎて後半駆け足になって反省。まだまだ精進が必要ですね。
懇親会では新たな共同研究の話で盛り上がったりしたので結果オーライです。
2、環境整備と重機掘削
さて本題に入ります。
発掘調査の段取りの話。
まず調査地点の支障となる樹木の伐採や下刈りなど環境整備をします。
掘削で出た土は山にして置きますのでそのスペースも確保する必要があります。
終了後に埋めもどす場合もありますし、調査の進展によって調査区を広げることが予想される場合はその際の邪魔にならないような場所を探します。
実際の掘削ですが、表面の土や近現代に盛り土された部分についてはショベルカーで掘ります。
どこまで機械でやってしまうかは、調査員の判断になります。あまりに手前で止めてしまうと人力で掘る分が増えてしまいます。
ある意味チキンレース。
土の違いでもうすぐ遺構が出ると分かったら、作業員さん達を投入します。
3、遺構とその順序についての判断
遺構かどうか、はやはり土の色の違いが重要です。
一度掘って埋めもどすと周りの土と色や質感が違って見えます。
溝や堀なら細長く色の違った土の層が見えますし、掘立柱建物跡なら楕円形や四角い形に、柱を立てたのなら丸い形が規則的に並んで見えます。
それらがお互いに切り合って(下図参照)
いればどちらが古いかわかります。
判断が難しい場合は半分だけ掘ってみて
断面を観察することで新旧を判断します。
層位学といって上の層ほど新しく
下の層ほど古い年代の地層である、という考え方を基本にします。
後は離れた遺構同士の新旧は出土遺物などから判断することもあります。
このように遺跡が埋まった順序を逆に辿りながら復元していくのが発掘調査です。
その復元の根拠となる図面や写真を記録として作成していくことになります。
出土した遺物は地点と層位(どの地層から出たのか)を記録したカードと一緒にして袋に入れ後から確認できるようにします。
どんなに広い遺跡でも、複雑な変遷の歴史を辿った遺跡でも基本はこれの繰り返しです。
4、常に判断
手順を誤ってしまえば遺跡を正しく理解できなくなってしまいますし、手間が増えて調査にかかる時間も増えてしまいます。
どの遺構をどのように掘っていくのか次々に判断を求められます。
雨が降れば作業を中断しますし、
晴れが続けば地面は乾いて硬くなり、土の違いを見分けずらくなります。
判断の基準となる解釈については結局経験と知識によるしかないのが現状です。
寝てる間も悩んで、現場にいる夢をみる調査員は私だけではないはず。
なんだか夢のない話になったので段取りはこの辺で
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